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□other
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自販機で買ったビールを煽るばかりじゃつまらないだろうと堂上を誘って居酒屋に来た。
堂上は勧められるままに酒を呷り、俺もそのペースに付き合っていたら二人とも酔いが回ってきた。

「で、どうよ?お前んとこのオンナノコ」
「どうもこうもない。相変わらず面倒事に向かって一直線だ」
「王子様のくせして手厳しいですなぁ」
「その話題はもういい!小牧にもそのネタで何度からかわれたことか……」
「憧れの王子様の本性がわかってもついてきてんだから、根性あるじゃないか」
「……まあな、そこだけは認める」
「わお、ツンデレくんがデレた〜」
「おい日高……」
険しい顔つきになった堂上をどうどうと宥めて、残りの酒を呷る。

「でもちょっとなぁ〜。妬けちゃうなぁ」
「は?」
「だってさ、……って、おやおや?噂をすれば何とやら!おーい、笠原ちゃーん!柴崎さんも!」
笠原とその同室の柴崎がガラリと居酒屋の扉を開けて入ってきた。
「お疲れ様ですっ!」
「奇遇だな〜。よくここ来るの?」
「あ、2回目なんですけど、この間来た時に気に入っちゃったんです」
「そうか。俺もここお気に入りなんだよ。まあじゃあ一緒に飲もうじゃないか!」
たまたま4人用の畳の席に座っていたので、手招いて半ば強引に相席を勧める。
「二人ともお酒強いの?」
「まあそこそこですね」
「私は全然……」
「カクテル1杯で潰れる下戸ですよ、この子」
「まあ俺は無理に飲ませたりしないタイプだから心配しないでくれ。あ、お酒ついでくれた?ありがとうね、でも気にしなくていいよ。堅っ苦しいの嫌いだからさ、俺」
ふにゃふにゃとした笑顔を見せると、目の前の美人二人も笑い返してくれた。
「いいねぇいいねぇ堂上クンよ。俺もこんな可愛い後輩ちゃんが欲しい」
「可愛くない」
「あらら、バッサリ」
「どうせ私可愛くないですから!」
怒って枝豆をを一気食いする笠原に、なんだか男と飲んでるみたいだなぁと心のうちで苦笑する。
「お前、明日休みか」
「はい、そうですけど」
「だからってカクテル1杯で二日酔いになって寮生に迷惑かけるなよ」
「しませんそんなことっっ!」


ぎゃいぎゃい喚く二人を見守っていたけれど、その親密そうな空気に俺の心の中のアクマがにょきっと顔を出した。
「笠原ちゃんさぁ、王子様に憧れて図書隊に入ったんだろ?」
「えっ!?日高さんも知ってるんですか!?」
「そりゃあ有名な話だからな」
「日高!だからその話はもうよせと、」
「んで、笠原ちゃんの王子様はコイツでしょ?」
コイツ、と言いながら堂上の肩を包んでこちらにグイと引き寄せる。
「た、確かにそうですけど、でもっ!」
アワアワとふためく笠原は、酒も手伝ってか顔を真っ赤に染め上げている。
「でもごめんな、堂上の王子様は俺だからさ」
語尾にハートマークをつけてニッコリと言い切ると、隣で無関心を装っていた柴崎まで驚いておつまみを食べる手を止めた。
美人は驚いても美人だねと頭の片隅でおざなりに考える。

「へ?」
「あれ、わかんない?つまり……」
肩に手を回していないほうの手で堂上の頬をこちらに向かせた。酒のせいで血色の良くなった赤い唇にしっとりと自分の唇を重ねる。
呆気に取られていた堂上は唇を薄く開けたままだった。これ幸いと舌をするりと忍び込ませて、ビールで苦くなった舌を吸う。
「んぅ!?……ん」
酒のせいで思考回路が遅くなったのか驚きのせいで身体が固まったのかは知らないけれど、堂上は目を瞠ってされるがままだ。
チラリと女子二人を盗み見てしっかり注目されていることを確認して、唇を離した。
「つまり、篤クンは俺のお姫様ってこと♪」
だから、ごめんね?そう軽く笑って告げる。肩に置いていた俺の手を堂上がギュッと掴んだと思ったら、いきなり視界が反転して身体に強い衝撃が走った。
「アホか貴様!」
バーンっという音と共に受身に失敗して強かに頭を打ち付けてしまい、目の前がくわんくわんと回っている。
「さ、さすがタスクフォース……強いな」
「自分が今何をしたのかわかっているのか!」
酒のせいじゃなく顔を真っ赤に染めて怒る堂上も可愛いとか思ってしまった。
「だって堂上は笠原ばっかり気にしてるじゃないか。こんなの可愛いヤキモチだろ」
「気にしてなどない!」
更に激昂した堂上は、俺に馬乗りになって襟を掴んで思いっきり揺さぶる。……うぅ、ちょっとグロッキー。
「だいたいヤキモチなんて、」
堂上が何かを言う前に、俺も堂上の襟首を掴んで唇を封じた。
「おおおおおおお前!」
そろそろマジギレされそうだったから、ひょいっと堂上を押し倒す。
「何をする日高!」
「俺の方がお前よりタッパあるんだから、こんぐらい余裕」
ニッと唇の端を上げると、堂上は不機嫌な顔で黙り込んだ。
「ということで笠原ちゃん、若い芽を摘むのはたいへん心苦しいんだけど、そういうことだから」
ニコッと笑って見せれば、よく理解していない顔で頷かれた。ま、頭脳明晰な柴崎もいることだしフォローはしてくれるだろう。

「変なモン見せちゃって悪いな。上司のメンツを保つためだと思って、今夜のことは内密に頼むよ。その代わりに今日は奢るからさ」
今まで自分たちが飲み食いした分に余分に上乗せしたお金を渡して、両手を顔の前に掲げた。
「そんじゃ、俺たちは帰るから。お疲れ!」
「おいっ、日高!貴様、聞いているのか!」
「はいはい、帰るぞ。じゃあな」
「お、お疲れ様でしたっ!!」
「お疲れ様でした」
柴崎は変わらず優雅に、笠原も元気いっぱいに敬礼をして見送られた。


居酒屋から出ると、夜の風が心地よい。深呼吸をして肺の空気を入れ替える。
「明日になって噂が立ったらどうするんだ!」
「大丈夫だ」
「何を根拠に……」
「つかそれより、今日は覚悟しとけ」
ニヤッと人の悪い笑みを浮かべて、誰も周りには居ないけれど堂上の耳元で吐息たっぷりに囁く。
「朝まで寝かせないからな」
ついでとばかりに耳殻をカプリと噛んで、堂上の腕を引っ張って寮に帰った。


次の日、げっそりとした堂上とツヤツヤな俺を柴崎は目撃したと言う。


>>>
郁ちゃんに嫉妬して見せ付ける主。
映画の堂上教官がかっこよすぎてもう最初のシーンで惚れました!
ちなみに、覚悟しろよとか言っていますが主人公は受けです。朝まで(乗られて)離してもらえなかったので堂上教官はげっそりしています。
堂上教官は普段は押され気味なのに大事なところではきちんと締めてくれる攻めだといいな。
この萌えをどうにも昇華できない……!!同志いませんか!(笑)

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