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朝練のない朝、たまたま千晴と会ったから一緒に登校した。
他愛ない会話に花を咲かせていたら、後ろから面倒くさい声。

「おーう、準太」
「おはようございます」
慎吾さんはいい先輩だけど、変に絡んでくるから面倒くさい。
「お前さぁ、彼女のひとりやふたり作って朝から青春とかないわけ?」
「今んとこ興味ないんで」
「おもしれー奴」
ぺしぺしと頭を叩く手をよけると、慎吾さんの興味は千晴にいったみたいだ。
「お友達クンも彼女いねぇの?」
「えっ、あっ?あのっ……」
「あっはっは!んなビビんなくたって取って食やぁしねぇって」
どもる千晴に慎吾さんはひとしきり大笑いした。

「そんじゃまたな」
ひらひらと手を振りながら大きな歩幅ですいすいと歩いていってしまった。
嵐が去ったってこーゆーんだろうな……。

「っはぁー!緊張したぁっ!」
「何でだよ」
「だってあの島崎先輩だよ!?緊張するに決まってる!」
わー、すげーなんて目をキラキラさせている千晴はこころなしか顔も赤い。
「別に怖い人じゃないだろ。面倒くさいだけで」
「準太は知らないかもしれないけどさ、島崎先輩って女子とかの間で人気なんだよ」
「だからって何でお前が緊張すんだよ」
女子なら好きなんだろうかとかわかるけどな。
自分で言った後にまさかと千晴を見た。

「まさか……慎吾さん好きなのか?」
「……ダメかよっ」
「いや別に……でもあの人セクハラ魔だし」
後輩の着替え中に変なことしてくるぞと言えば、悲しそうに眉をひそめた。
「島崎先輩は準太のことが好きなのかな……」
「それはない」
あっても困ると断固否定して、俺以外も被害に遭ってることを話した。
「まさしくスキンシップってやつじゃん」
ずるーい、と軽くにらまれた。

「あーあ、俺なんて挨拶したらビビられた準太の友達としか認識されないんだろうな……」
もう忘れ去られたかも、なんて遠い目をするから仕方なくフォローしてやった。
「慎吾さんお前みたいなやつ好きなタイプだと思う」
「えっ、ほんと!?」
「犬みたいなヤツ好きだし」
利央をいつもからかってるというのは伏せておいて。

「あとは??」
キッラキラした目で俺から慎吾さんの情報をリークされるのを待つその姿とか、慎吾さん好きそうだと思う。
慎吾さんは女たらしだということも知っている俺は、親友を思うがゆえに恋路に協力すべきかせざるべきかを全力で考えていた。
だからこの騒動に巻き込まれていくとは、この時点では全く気付いていなかった。

(後日聞いたら、初めて会ったこの日から目を付けていたと聞いて俺は嘆息したのだった)
(最終的には取って食おうとしてたわけだ)
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