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僕の恋人の千晴は、これ以上無いくらい甘ったれだ。
お金持ちで3人兄弟の末っ子で、次男と10歳も年が離れているときたら、そりゃ家族も千晴を甘やかしてしまうだろう。
しかも元モデルだった母親とそっくりな顔つきをしてる。
父親は余計に千晴を可愛がっていて、芸能界入りさせようと考えているらしい。
でも本人は乗り気じゃないから、きっとこの計画もおじゃんだろうけどネ。
「かお〜」
「どうしたの、千晴」
「んー、呼んだだけ」
ぐずぐずに甘やかされて育った千晴は、相手の意識が自分に向いてないと不安みたいだ。
僕が光と笑ってるだけで、悲しそうにするんだからさ。
せっかくの休日、殿からホスト部でハルヒん家に押し掛けると連絡が来たけど、僕は辞退した。
前から千晴と遊ぶ約束してたしね。
光はつまんなさそうに(でもハルヒに会えるからそんなにしぶらず)ハルヒの家に行った。
光が帰って来たら、今日の話を最初っから最後までされるんだろうなー。
なんか、弟が二人できた気分?(光は弟じゃないけど)
「かお、馨ってばっ!」
「あ、ごめん」
「もー!聞いてなかったろ!」
拗ねたみたいに口を尖らせる癖はもうきっと治らないだろうな。
こんな顔も可愛いって思っちゃうあたり、僕ってほんっと千晴が好きだよね。
「ごめんごめん。光は今何してんのかなって思って」
僕がそう言うと、千晴はちょっと眉をひそめた。
「……つまんない?」
悲しそうな瞳についほだされて、僕は首を振って千晴の頬にキスを落とした。
「……僕は馨と一緒に居るだけでいい。こうやって二人きりで居たい」
変?嫌?とどこか切羽詰まった声で言われるとどうも弱い。
「千晴……」
「馨を独占してるって時間が欲しい」
もうわかったから、と笑って抱き寄せる。
最近はあんまり二人きりで居る時間が無かったから、千晴が足りなかったみたい。
千晴も僕にそれを感じてるんだろう。
僕が千晴を抱き締めると、千晴はほっと肩の力を抜いた。
少しの間そうしていたら、千晴が僕の瞳を見つめてきた。
「ん?」
促すように首を傾げると、千晴はちょっと頬を紅くして、
「あの、ね……お願いがあるんだけど」
「なーに」
こんな甘い声、千晴にしか使わないよ?
千晴のお願いならなんだって聞いてあげるから。
「……抱っこ、して?」
稚拙な言い方で僕に抱擁を求める千晴に、本気でくらくらした。
「抱っこって……こう?」
ふわっと軽い千晴を抱き上げて、向き合うように膝の上に座らせた。
「ん………」
二人の距離がなくなって、満足そうに息を吐きだした千晴。
千晴のしなやかな髪に指を差し入れて、その指通りを味わう。
「甘えん坊だね、千晴は」
「だって馨が遠くに居る気がしちゃったから……」
くっついていれば、遠くに行かないよね?
そんな可愛いことを言うから、僕はたまらずに千晴の唇を奪った。
貪るような口付けにも、千晴は悦ぶような反応を見せる。
「んっ、ふ……ぅ、ん……かお、」
「……ゴチソーサマ」
ぺろっと最後に千晴の唇を舐めると、ぴくりと身体を震わせた。
「かおるぅ……」
千晴のスイッチが入っちゃったみたいで、千晴は甘く僕の名前を呼んで顔中にキスをしてくる。
ついばむような可愛いキスはくすぐったい感覚のが勝ってしまい、くすくすと笑ってしまった。
そんな僕を咎めるように、唇を強く噛まれる。
恨めしそうな顔もくすぐったかったけど、今度は笑わなかった。
「千晴、僕に噛み付くんだ?」
「馨が笑うから……!」
「ふぅん?恋人にそんなことして……お仕置きしなくちゃね」
長いソファーベッドに千晴を組み敷いて、千晴にされたように唇に噛み付いた。
どうやら僕のスイッチも入っちゃったみたいだと胸のうちで苦笑して、千晴に甘い甘い口付けを施した。