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文貴は意地悪だと思う。
みんなは馬鹿っぽいとかいつも言ってるけど、いじめっ子気質な面がある。
それは僕がいじめられっ子タイプだからだろうか?
僕と二人きりになると、いつも恥ずかしいことをしてくる。
今だってそうだ。

僕が苦手なのを知ってるのに、自分が見たいからって、怖いDVDを借りてきた。
強制的に上映会が始まって、僕はぎゅっと文貴にしがみつきながら見せられる。

理不尽だけれど、目をつぶっていたらお仕置きね、なんて言われている。
だから僕はどんなに怖くて気持ち悪くても、目を閉じれないんだ。

「大丈夫、あんま怖くないの借りてきたから!」
「ほんと?」
「うん、R-15くらい?」
R指定されてるもの自体僕は嫌いなのに……。

「文貴、こわいよっ」
「まだ始まって10分もしてないじゃん!」
「これからどうなるのかと思うと……」
「ワクワクして胸が張り裂けそう?」
「恐怖と緊張で胸が張り裂けそう!」

くすくす笑いながら、しがみついてていいからと慰められた。

「だいたいさ、好きならひとりで見ればいいじゃん!なんで僕まで道連れなの」
「千晴の恐がってる顔が可愛くて……」
頬を赤らめて照れながら言われてもも全然嬉しくない!
「泪ぽろぽろ零しながら名前呼ばれると、かなりやばい」

それってもう映画目当てじゃなくて僕目当てなわけ!?


「ほらほら、ちゃんと見よ!」
「うぅ〜〜〜」



地獄のような2時間が終わり、文貴は満足そうに晴れやかな笑顔を僕に向けた。
僕はといえば、もちろん怖い怖いと叫んで文貴に泣き付いた。

文貴の思い通りになってしまっているのが癪で、でも文貴以外に頼れるものもなくて……。


途中で文貴が、僕の泣き顔にムラムラしたとか言ってキスをしてきた。
敏感なところを撫でさすられて、文貴のせいで快感に素直になった身体はとろけそうになっていた。

「わっ、そんなとこ触ったら……」
だめだよ、という声は文貴のシャツに吸い込まれた。
「そんなとこってどこ?」
無意識にかはわからないけれど、わかってるくせに聞いてくるのが悔しくて。

「文貴が触ってるトコ……!」
これでも自分のなかでは恥ずかしい答えなのに、文貴はこんな時ばっかり「わかった」とすんなり手を引いてしまった。
その時だけは画面を見ずに済んだけれど、また座り直して見せられてしまった。

「今日も楽しかったね、千晴?」
「ばかっ、楽しいわけない……!」
また今日も夢でうなされるのかと思えば、夜を迎えるのがつらい。

文貴が一緒に寝てくれれば、怖い夢なんか見ないで済むけど、明日文貴は部活があるからそれも叶わないだろう。

はぁと大きなため息を吐くと、文貴にふわりと抱き締められた。
「ごめんね?千晴が可愛いからついいじめちゃう」

いじめてる自覚があるぶん質が悪いけど、その理由はいかにも文貴らしい。
「千晴がおれにくっついてると、千晴に頼られてるんだなーって嬉しくなるんだよね」
「だからってこんな……」
「ん、ごめん。今度千晴の大好きなハッピーエンドの映画見よ?そんで今日はうちに泊まって一緒に寝よ」
ふわんとした笑顔で甘く囁かれたら、僕はすぐ陥落してしまう。
こくりと頷くと、文貴は僕の頬に優しいキスをしてくれる。


ああ、こうして僕は毎回文貴に言いくるめられているんです!

そして毎月恒例のホラー映画上映会は、どうにか幕を閉じたのでした。


(いじわるだけどやさしいきみに、ぼくはもうめろめろなんです)

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三萬打御礼小説がこんなエセ文貴でいいのでしょうか……?
ドSな文貴というリクエストにかなりの難産でしたが、王道なかんじで(笑)

文貴は私のなかではおばかでやられキャラなので、ドSは想像もつきませんでした……!私のドSはこれが限界です(汗)

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