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「なぁなぁ、禁断の実だっけ?…それってうまいのかな」
世界史の授業を終えた直後、日高はそう聞いてきた。
「は?…まぁうまいんじゃねえ?だからアダムとイヴも食ったんだろ」
そんな適当な答えにも日高は気にせずに、ぼけーっとしたままだ。
「食ってみたい」
「……食えば。食ったら楽園から追放されるけど」
っていっても、日高は別に楽園で暮らしてるわけでもないんだけどな。
「そっか。追放か…」
「…おう」
ぼんやりとした日高は何を思ったのか、突拍子も無いことを言ってきた。
「じゃあ泉も一緒に食お」
「何言ってんだよ、食わねぇよ俺は」
「だってその実を食ったアダムとイヴは楽園から追放されて地球で二人だけで暮らしたんだろ」
日高も田島みたいなやつだなぁと失礼ながら思った。
「俺、イヴでいいからさ。泉が俺のアダムになってよ」
そして堕ちるんだ。
二人だけの世界に。
倒錯的な世界だと感じながら、一瞬だけそれでもいいかと思った。
「…野球ないだろ」
「ミットとバットとボールを持っていけばいい」
「お前、野球下手だし」
つらつらと断りの理由を連ねて、10分間の休み時間を無駄にした。
けど、本当に俺がアダムとして楽園にいるのなら考えてやらないこともないと伝えると日高はつけあがるから、言うのはやめておこう。
(ん?つーか何でこんな話になったんだ?)
(あー、マジ腹減った。でも泉が可愛かったから、もちょっと我慢しよう)