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「暇だね〜」
淡々と続く道に、一言漏らす。
すると、またまた淡々とした声で隣を歩いてる日高。

「まあ帰ってるだけだし」

日高はいつでも飄々としてて、掴みどころがない。
今日もたまたま帰る時間が重なっただけの、クラスメイト。

クラスメイトっていっても、俺は絶賛片思い中なんだけど。
(因みに、日高にはとっくにバレてるんだけど!)


「…日高が話振ってくれれば楽しいって!絶対!」
「無理、ヤダ」

おれをあしらう日高に口を尖らせても、全然興味なさそうにしてる。
だから、俺はちょっとドキドキしながらも口を尖らせて見せるんだ。
「日高ってば、つまんなーい」
「ただ帰ってるだけだしな」

むーん、と俺は眉間をぐりぐり押しながら考える。

「あ、じゃあ究極の暇つぶし『しりとり』やんない!?」
「ヤダ」
名案!と言わんばかりに提案したのに一瞬で却下されてしまった。
そんなことばっか言ってると友達減るぞ〜。…なんて怖くて言えないけど。


まいっか、暇だし俺から始めちゃおう。
「んじゃね、野球!」
「は?」
「だからしりとりだってば〜。やきゅうの『う』だよ」
怪訝そうな顔でおれを見る日高。
促しても無視されて、でもずっと、「う〜」って言ってたら折れてくれた。

「うみんちゅ」
「…?うみんちゅって何?」

生き物?と聞くと、沖縄県の人のことだと教えられた。
「へぇ〜!!日高って物知りなんだ」
きらきらと目を輝かせてしまって、恥ずかしいかなっと顔を背けた。


その恥ずかしさを霧散させるように「ゆ、雪!」としりとりを続けた。
「キス」
一拍も置かずにすぐに返ってきた単語に驚く。

…おれが日高を好きだって知ってるくせに。
おれ、試されてんのかなぁ…?


「す、すー…すっ、すす、好きっ!」
顔を真っ赤にしながら、そう叫んだ。

そしたら日高はすぐに「嫌い」と返してきた。

「…それっておれに対するいじめじゃないよね」
恨めしげなおれに日高はニヤリと笑った。
「しりとりなんだろ」

言質を取られて黙ると、水谷の番だと促された。
「イカ」
「カード」

「…ど?うーん?」

土管?どかんは、「ん」だしなぁ…。
「…あ!土器!」
埴輪って可愛いよね〜なんて言ってるうちにおれの家の前に着いてしまった。

「…水谷ってさぁ、度胸あるよな」
「へ?」



「また「き」から始まる言葉聞きたいんだ?」

日高の意地悪そうな目つきにドキッとする。もしかしなくても墓穴ほった!?

「…お前んち着いたし、じゃあこれで最後な」
さっきの言葉を耐える為に手を強く握る。

「嫌い……じゃない」
「…へ?」

聞き違いじゃないかと日高の顔を覗き込む。

じゃ、と手短にさよならを告げた日高にもっと頭が混乱した。
「あ、日高!…もっかいちゃんと言って!」


期待をして強く叫ぶと、日高は「もうしりとりは終わったよ」とすたすたと歩いていってしまった。


嬉しくて恥ずかしくて、おれはしばらく家の前で固まってしまっていた。


(日高が…キライじゃないって!!)
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