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□真澄
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「千晴、」
声と共にぐうっと質量のあるそれが千晴の襞を掻き分けて入り込んでくる。
息を詰める千晴の気を散らすように前を弄ってやると、素直に強ばった身体から力が抜けた。
「あ、あ……」
入ってきたと実感するような、茫洋とさえ取れる声。
違和感であるそれを馴染ませるように、真澄は目の前にある千晴の背中に口づけた。
「千晴の中、温かくて気持ちいい……ずっとこうしていたい」
「ずっとなんて、無理だ……」
照れ隠しにつれないことを言う恋人に意趣返しをすべく、濡れたままの手で芯の残った乳首を指の腹で捻るように撫でた。
油断していた最中での突然の刺激に、うあっと色気のない声が漏れる。
「い、いきなりするなって」
「痛かった?」
逆だ。痛くなかったから問題なのだ。
ぞくりと電撃が走ったような快感に、自分が少しずつ塗り替えられてしまっているのだとハッキリと自覚した。
胸だけでなく、腕や腰や下腹部など、いやらしい指がさわさわと愛撫する。
千晴の肌を何度も往復するせいで、全部が真澄に征服されたような錯覚を覚える。
その思考が過ぎっただけで、千晴はふるりと肢体を震わせた。

真澄が背中からぎゅうと抱きつくと、真澄の乳首が千晴の背中に当たって、その存在を嫌でも意識してしまう。
背中まで性感帯になってしまったみたいで、身の置き所がない。
そんな千晴の羞恥など露知らず、真澄はまた千晴の乳首やら屹立やらを撫でている。
真澄の剛直が千晴に馴染んだ頃、真澄がゆっくりと動き始めた。

「あ、やっ……」
腰つきが緩やかであるが故に、中の動きが手に取るように分かってしまう。
もっと滅茶苦茶に突いてくれれば、快感の坩堝に突き落としてくれれば身も世もなく悶えて理性を手放せるのに。
そう願ういやらしい心など知る由もない真澄は、千晴を傷つけないようにと慎重に反応を見ながら注挿を繰り返している。
千晴が痛がっていないことを察して次第に大胆に動き始めると、千晴もじわじわと快感を受け取れるようになった。

「あ、ン、っ」
少しずつ気持ちよさに引っ張られて、肌がピリピリとしてきた。
きゅんきゅんと不定期に締まるそこに、真澄は辛抱堪らずにグッと腰を突き上げてしまう。
「あぁっ!?あ、だめっ、それぇ」
それがちょうど千晴の前立腺を刺激してしまい、千晴は喘ぐ自分を抑えられずに大きな声を出してしまった。
目の前がホワイトアウトするかと思ったくらいに直截な快感に、じんじんと皮膚が痺れる。
思わず自分の身体を抱き締めた。ここまで強く刺激されることが無かったから、未知の感覚に怯えと興奮が一緒くたになって千晴に押し寄せてきた。
怖いのにもう一度して欲しくて、喉が干上がる思いだ。

来るべき次の快感に備えて身を硬くしているが、次の衝撃はやってこない。
千晴が震えながら真澄を窺い見ると、真澄は唇を真一文字に結んでいた。

「ま、真澄?」
「ごめん、痛かった?」
大きい声が出たからそう思ったのだろうか。
「あ、だ、大丈夫だから、」
快感の波が去らないうちにもっと覆い尽くして欲しい、そんな事を思っても言えずに、千晴は物欲しげな瞳を真澄に向けた。
無言の要求を本能レベルで察知した真澄は、またそろりと腰を動かした。
千晴を怖がらせないように、また慎重になってしまった愛撫は気持ちがいいのにどこかもどかしい。
たらりとだらしなく漏れる先走りを掬った真澄が、忘れていないぞと言うように千晴の全容を大きな手でくしゅくしゅと弄ってくれた。
「ふ、ぁ……」
馴染みのある快感に身体を弛緩させる。
「真澄……もっと、突いていい、よ」
このままじゃ真澄が快感を得られないだろうと千晴が慮って促すと、真澄は大きく腰を突き動かした。
剛直が前立腺を何度か掠めていき、千晴にはちょうどいい刺激だった。
「あ、気持ちい……」
無意識で出た言葉を真澄は聞き漏らさず、爛々と目を輝かせた。
「千晴、これは?」
ぐっと突き立てるように押しつけられ、声にならない快感に身悶える。
「っ〜〜……!っあ、は、あぅ」
「気持ちよさそう……」
興奮のまま真澄がピストンを速める。
前もぐちゃぐちゃにされ、前立腺をぐりっと押された瞬間に前も好い所に当たった。
そのダブルパンチで、千晴はビクッと腰を跳ねさせた。
「あっ、やだぁっ」
そんな一緒にされたら訳が分からなくなる。
射精するかと思った、と胸を喘がせていると、また真澄の動きが止まっていた。
しばらくお互いの荒い息だけが聞こえ、動きはない。

「……えっと、真澄?おれ、何かした?」
まさか変なことを口走ったかと手で口を塞いだが、もう意味は無いだろう。
「千晴、やっぱり気持ち良くない?俺、下手……?」
ずうんと落ち込んだ真澄が、ずるずると己を抜こうとする。
「ちょっ、待って」
後ろ手で真澄の腰を掴んで止めさせようとしたけれど、あっけなく真澄は身体を離してしまった。
「ど、どうして下手とか……」
そんなこと言っていないだろうと焦りながら、身をよじって真澄の手を掴む千晴に、真澄は俯きながら口を開いた。

「俺が無理矢理腰を動かしたから、嫌だって、駄目だって言ったんだろ」
無理矢理なんてされていない。むしろ真澄は千晴を気遣いすぎている程だというのに。
「嫌とか駄目とか言ってた?」
「言った。……俺、まだ千晴の身体を知り尽くしてない。それに千晴は遠慮して声出してくれないし……。千晴には、俺とのセックスは気持ちよさだけ感じて欲しい。痛いとか、嫌だとか思って欲しくない」
素直に千晴の言葉を額面通りに受け取る真澄に、千晴は顔を一気に赤らめる。
自分の発言を反芻してみたが、駄目、は確かに言った気がする。
だけど、それは。
「本当に駄目なんじゃなくて、その……気持ちよくて変になりそうで、それが怖くて……。だから駄目って言っちゃったんだと……」
千晴の言葉を聞いて一気に回復した真澄は、バッと千晴の顔を見つめた。
「本当?嫌じゃない?」
千晴がこくりと頷くと、真澄は子供のように喜色を満面に湛えた。
「気遣ってくれるのは、嬉しい。でも、真澄がちゃんとおれが気持ちいいか心配してくれてるのわかってる……から。思わず駄目とか嫌とか言っちゃうかもしれないけど、嫌じゃないから、だから……」
もっとして欲しい、という言葉は終ぞ千晴の口からこぼれることはなかった。
その前に、言葉を察した真澄が歓喜に舞い上がって千晴の唇を求めたからだ。
「千晴、千晴……大好き、愛してる。これ以上めろめろにさせて、どうするつもり?」
キスの合間にそう口説かれ、声でも身体でも愛情を示されれば千晴の身体も心も蕩けてしまう。

「またおれが嫌とか駄目とか言っても、真澄の思うとおりに、して……」

夢見心地のまま出た言葉はやはり真澄を喜ばせて、真澄はもう一度軽く前戯をしてから千晴に再び入り込んだ。



「ひゃっ、」
目がハートマークになってしまっている真澄は、最初からハイペースで注挿を繰り返す。
「あっ、ひ、んっ、んぁ……っ」
リズミカルな嬌声が千晴から漏れ出た。
高揚した衝動を散らすかのように千晴のうなじにキスをして、甘く噛んで、吸い付いた。
赤い鬱血がいくつも散らばって、真澄は悦に浸る。
「あぅっ!あ、そこ、だめっ」
ぐりぐりと押しつけるように突かれ、千晴は仰け反った。
「だめ?千晴、本当に駄目……?」
真澄が囁くようにそう問うてくる。
違う、と何度も首を横に振ると、ちゃんと気持ちが伝わったようだった。
「言葉じゃ駄目って言ってるのに、声は『気持ちいい、もっとして』って言ってる」
千晴の機微に鋭い真澄はすぐに千晴のことを見透かしてしまう。
「そうだろ?……ねえ、千晴。気持ちいいって、もっと言って」
「あぁ、ン……、良い、いいっ」
ずんずんと容赦なく突き立てられ、思い出したように胸の尖りを抓られれば、千晴の口からは嬌声が止まらない。
「良かった、ちゃんと胸も感じてる」
「だめっ、それ、後ろと一緒にしたら……っ」
乳首をこねくり回しながら、同じように腰を回されたらひとたまりもない。
疼痛が後ろの快感と結びついて、明らかに乳首で感じた。
「乳首いじると、ぴくぴくするの可愛い……ねえ、もっと気持ち良くなって」
脳みそが煮えたぎっているから、自分でも身体を制御できない。
真澄の愛撫で面白いように跳ねる身体は、自分のものではないみたいだ。

「真澄、やだぁ……怖いっ」
こんな快感は知らないと髪を振り乱す千晴。
でも、嫌も駄目も本心じゃないから止めるなと言ったのは千晴本人だ。
その言葉を信じて、真澄はどろどろに濃い愛撫を続けた。

「千晴、可愛い、好き……」
千晴の顔を後ろに向かせて口づけた。苦しい姿勢のそれは千晴の理性を更に奪っていく。
何事も器用にこなす真澄は、注挿を続けながらも恋人の胸や屹立を愛するのをやめない。
たくさんの刺激を一度に受けて、酸素の回らない脳は羞恥も何も忘れて必死に喘ぎをこぼした。
気持ちいい、とキスをしながら真澄に直接唇を震わせて伝える。
するとますます元気になった真澄の熱は、食い破ろうとするかのように千晴を責め立てた。

「あっ、ふァぁっ!……あ、も、むり、わけわかんなっ」
全部が性感帯になったような気がして、これ以上はキャパシティオーバーだと千晴が涙声で訴える。
「もうイキたい?」
「んっ、も、だめ、イくっ」
ぎゅうと胸に回されている真澄の腕を抱き込みながら千晴が頷くと、真澄はラストスパートとばかりに強く腰を打ち付けた。
「ァっ、やっ、ああっ……気持ちいいっ、そこぉ、」
ばちゅばちゅといやらしい水音が響いて、それすら快感の要素にして、千晴は情けない声と共に果てた。
「っ、はっ……あぁ」
絞り上げるように真澄の屹立を苛む千晴に、真澄もくっと息を詰まらせる。
「俺ももうちょっとだから……お願い」
「ん、」
こくこくと首肯が返され、真澄は千晴の両腕を取ってぐいと自分の方に引っ張った。
身体が浮き上がったことで結合部が更に密着し、千晴がきゅっと腹を絞る。
「っく、それ反則……」
恍惚とした声でそう甘く詰られ、真澄は自身を高めるように容赦なく奥を穿った。
「ん、千晴、気持ちいいっ……あ、きゅって締まった……」
「ひ、ぁ、前立腺、ごりごりしたら、また出ちゃ……!」
千晴の甘い声と凄まじい蠕動でもって、真澄はようやく放埒を迎えた。




ドサリとベッドに身を投げた二人は、獣のように荒い息を繰り返す。
「今日が一番気持ち良かった……ねえ、千晴は?」
熱い吐息をうなじに掛けながら、真澄が問う。
「ん、おれも……一番、良かった」
「はぁ、可愛すぎ。もう離してあげない。千晴の『気持ちいい』を毎回更新するから、覚悟してて」
散々痕を付けたというのに、真澄はまだ足りないとでも言いたげに肩口にまで愛咬を続ける。
全ての指を絡めるようにして手を繋げば、身体だけでなく心までもひとつになった気持ちになれた。
心身共にリラックスしていた千晴が、真澄の頬に手を当てて自分に向かせると、ちゅっと頬に口づけた。
「真澄、好き……」
恋人にそんな可愛らしいことをされて、ただでさえ盲目的な真澄がそれで収まるはずもなく。
「それって誘ってる?」
「うん?」
「千晴からおねだりしてくれるなんて、最高……。もう死んでもいい……」
悦に浸って夢見心地な真澄は、千晴の発言を好き勝手に解釈している。
いつ自分は真澄に『おねだり』したというのだろう。
疲れてうまく働かない脳みそで一生懸命考えてみたけれど、その前に真澄の甘い口づけを施されてしまった。

そうしながらも不埒な手がまた千晴の気持ちいい場所をごそごそと探る。
続けてどころか、第二ラウンドに突入するのはこれが初めてだ。
続けての行為という発想がなかった千晴は、焦って真澄の手の上に自分の手を添えて止めさせる。

「ちょ、真澄?」
「可愛い、千晴……。また気持ち良くなろう」
千晴の制止もなんのその、真澄が萎れた千晴のそれを再び元気にさせようといじり始めた。
「駄目だって、続けてとか無理……」
「ん、わかった」
わかったと良いながらも、まだ繋がっている場所をぐりぐりされる。
一体何を了承したんだと目を白黒させる千晴に、真澄は蕩けるような笑みでもって言い放った。

「『駄目って言っても嫌って言っても、真澄の思うとおりにして』って言ってくれたの、忘れてないから大丈夫」
きらきらと眩しい程のひたむきな瞳で言い切られ、千晴の反論はまたしても真澄の唇に吸い取られてしまったのだった。



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書き尽くされたネタだと知りつつ、真澄はどういう行動をするのか書いてみたくて、書きました!
主人公の言うことを素直に聞きすぎる真澄と、墓穴を掘る主人公が書けて大満足です!
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