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□真澄
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とさり、幾分かぎこちない手つきで真澄は千晴をベッドに押し倒した。
何度も交わした熱いキスの勢いが強く、それに押されて動いた千晴の視界は真澄と天井でいっぱいになる。

まだ慣れない深いキスに息が上がる。
はぁ、とお互いの呼気が唇にぶつかった。
「千晴……良いだろ」
「ん……」
真澄のぎらついた瞳が千晴を射抜く。
千晴はこくりと喉を鳴らして頷いた。
そろり、真澄の遠慮がちな指が千晴の首筋に這う。
「んっ、」
期待して過敏になっている肌がさざめく。
つう、と爪だけで鎖骨をくすぐられて首を竦めると、真澄はふと吐息で笑んだ。
思わせぶりな指先がカッターシャツのボタンをプチプチと外していく。
ドッドッドッ、鼓動が速くなるのをどうか気づかれませんようにと千晴は息を詰めた。
肌着越しに胸の飾りを指先の腹で撫でられた。
「あ、」
潜んだ声になったのは、自分の甘い声を聞きたくないからだ。

何しろ、千晴と真澄が身体を繋げてから日が浅い。
お互いが初めての相手だったから、礼儀作法も分からずにネットで知識を付けて初めて繋がった時は、もう一生したくないと千晴は泣いたものだった。
それを真澄のよく回る舌で懐柔され、完璧に予習復習をした真澄にとろとろにされて、ようやく千晴も最近気持ちが良いと思うことが増えてきたところだ。
だからまだお互い手探りで、その行為に照れが先行してしまう。

「千晴、声聞きたい。聞かせて」
まだ愛撫も始まったばかりなのに真澄はどろりと瞳の奥を溶けさせて、千晴を見つめる。
「や、でも恥ずかしい……」
「恥ずかしくない。俺しか聞いてないから」
「真澄に聞かれるのが恥ずかしいんだ……」
好きな人にこんな声を聞かせてしまうのはまだ抵抗がある。
いっそ酒に酔ってしまえば、その手の女優みたいに可愛らしく喘げるのかもしれないが、生憎二人とも未成年である。
自我を放棄できないのがここまで辛いとは思わなかった。

「千晴が声を出してくれると、千晴の事を気持ち良く出来てるんだって安心する。だから、気持ちよかったらちゃんと声出して」
「……ど、努力する」
千晴が目を泳がせながら言うと、真澄は千晴を安心させるように笑みを見せた。
肌着をたくし上げて、真澄が千晴の乳首をぺろりと舐めた。
「っ、」
千晴が大げさに身体を跳ねさせた。
真澄はその反応に勇気を貰って、もう一度、もう一度と舐めさする。
「あ、は……っ」
まだそこだけでは上手に快感を拾えず、しかし真澄が触れる度にぞわぞわと感覚だけが募った。
何とも言えない心地を噛みしめていると、真澄は乳首を舐めるのはそのままに、潤滑油を滴らせた手を千晴の下着にそっと忍ばせた。
「んっ!」
緊張でまだ反応していないそこを、掌全体で揉みしだく。
乳首の周りを舌先でなぞるようにしたり、胸筋にちゅぱちゅぱと音を立てて吸い付いたりした。
その間も屹立を愛撫する手は止めない。
裏筋を指先でなぞれば、ぴくぴくと小刻みに動く肢体がエロティックで真澄は興奮する。

「千晴、かわいい……」
伸びをして千晴の唇を食んだ。
「んん……」
舌を差し込むと千晴のそれは嬉しそうに絡みついてくる。
千晴はキスが好きだ。一番手っ取り早く気持ち良くなれる。
それに直接的な愛撫を加えれば、千晴は次第に腰をくねらせて真澄の手を受け止めた。
少しずつ滴ってきた愛液と潤滑油を混ぜるように複雑に揉み込む。
下の膨らみも優しく指先でこりこりと弄れば、可愛い声で喘いだ。
「ふぁぁっ!……あ、ン」

じんわりと熱くなってきた千晴の身体に満足して、真澄はまた千晴の乳首に向き合った。
はぁ、と温めるように吐息を吹きかける。
舌先でぺろりと舐め上げるとの一緒に、少し立ち上がったそれの先端をキュッとこすってやる。
「ひっ、ァ」
爪の先で引っかけるように上下に掻けば、びくびくと上半身がのたうった。
「胸ばっかり、なんでっ」
恥ずかしさに手で顔を押さえながら千晴が問う。
「千晴に乳首も気持ちよくなって欲しいから。こうすると少しずつ気持ち良くなれるってサイトに書いてあった」
「変なこと検索するな……っ」
「変じゃない。俺は、千晴が俺とのセックスに溺れて欲しい。だから、できることは全部する」
しなくていい、と反駁してやろうかと思ったのに、真澄が胸への愛撫を再開するものだから文句は甘い声になって千晴からこぼれて落ちてしまった。

「も、そこ……いい、から」
感覚が分散して、いまいち集中できない。
「わかった。また今度」
とりあえず今回は見逃してもらえたようだ、とホッと息を吐いて、千晴は屹立へ施される愛撫にのめり込んでいった。
「おれも、手でする……」
千晴の痴態を見て反応している真澄のそれを、下着から取り出して撫でさすった。
「ん、気持ちいい」
お互い手を伸ばして愛撫するのも難しく、真澄は千晴の身体を引き寄せて向かい合わせになって密着した。
いわゆる兜合わせの格好になり、相手の熱い欲望をこれでもかと刺激する。
「ぁ、ん……ふ」
「千晴、気持ちい……」
耳元で囁かれ、熱い吐息が耳朶を掠める。低めの声がじわじわと千晴の鼓膜を侵してゆく。
「ますみ、キス……っ、んむ」
背筋がぞわぞわして思わずキスをねだると、真澄はすぐに願いを叶えてくれた。
弾力のある舌が熱い千晴の舌に絡んで、啜って、ねぶってくる。
「んふ、ン……ァ」
はふはふと息を切らしながらぐにぐにと舌をぶつけ合う。
負けじと手を動かすけれど、真澄の巧みな愛撫で覚えずに千晴の腰が揺れた。

「ふぁっ、んんんー!」
ちょうど真澄の指が千晴の気持ちいいところを引っ掻いたのを切欠に、千晴は熱を放埒した。
キスしたまま果てて、千晴はびくびくと腰を揺らめかせる。
「ふ、はぁ……」
こてんと真澄の肩口に額を乗せて甘える。
全力疾走した後みたいな倦怠感が一気に千晴を包んで、ぼんやりと吐精の感覚に浸る。
「千晴、気持ち良かった?」
また耳元で囁かれて、腰の奥にズクリと熱が灯る。
コクリと首だけを動かして肯定を示すと、真澄は千晴の耳に口づけてきた。
「嬉しい……。イッてる千晴の顔見て、俺もイキそうだった」
「あ、真澄も……」
千晴がふと我に返って二人の腹を見ると、千晴の精液だけが放たれていて、真澄の欲はまだ発散されていなかった。
「そのまま、こすって……」
真澄は愛液を纏った手に更に潤滑油を足して、千晴の後ろに指を這わせた。
「俺はここ解すから」
「う……うん」
まだ後ろを弄られるのは羞恥心を覚えるが、そんなことを言っては始まらないと腹を括って、千晴は真澄の熱を保ったままのそこに再び手を伸ばした。
真澄は色っぽい声を出しながらも、確実に解す指を増やしていく。
「あ、千晴……そこやばい……」
「ここ、いい?」
「あ、くっ……」
真澄の切なげに潜められた表情は筆舌に尽くしがたい。
千晴にとっては後ろをきゅんと締め付けてしまうほどにセクシーだった。
真澄が千晴に気持ちいいと言って欲しい理由がなんとなく分かった。
好きな人の普段見られない表情を自分が作っているんだという優越感は、もしかしたら身体を重ねることでしか体感できないのかもしれない。

そんな風にお互いを高め合って、何度も何度も潤滑油を足しながら解してくれたそこは、ようやく準備が整った。


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