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□真澄
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・present for youと同主人公。
・寮の間取りについて捏造箇所あり
・致していませんがちょっと触っています。


「千晴さん……」
くんくんと首筋の匂いを嗅がれるも、千晴は照れもせずに真澄の頭を撫でる。
もちろんここは千晴の自室だ。
真澄の想いを受け取った次の日に、真澄の蕩けるような態度で団員みんなに二人が恋仲になったことがバレてしまった。
しかし節操なくどこでもイチャつくのは千晴の性分ではないし、団員に示しがつかないので過度な接触は控えるようにと真澄を説得した日が懐かしい。
そもそも恋仲になる前から真澄のボディータッチは多かったので、団員たちも「またやってるよ」と苦笑するだけに留めてくれている。

恋人同士のスキンシップは千晴の部屋だけにすることを約束してからは、むしろ住んでいるんじゃないかという頻度で千晴の部屋に来るようになってしまったので、これもストップを掛けた。
本当に用事がある団員が千晴の部屋に来るのを躊躇うようになるのは非常に由々しき問題であるからだ。
恋人として触れあいたい場合、千晴の部屋にくるのは週2日だけと取り決めた。
最初は否を示していた真澄も、劇団を天秤に掛けられれば渋々とだが従ってくれた。
その代わり思いっきり甘やかしてもらうからと反撃を喰らったものの、ちゃんと千晴を見ている真澄は千晴が疲れていればマッサージをしてくれるし、添い寝だけで終わらせてくれることもあった。
理解のある恋人が持てて幸せだと常日頃伝えているのも効果があるのかもしれない。


そんなこんなで順調な恋人生活を送っていた。
最初は監督だからと頑張りすぎていたけれど、真澄に甘えることも増えてきた。
ポスンと真澄の胸に頭を預けると、嬉しそうに頭を撫でてくれたり、千晴の手をいじくって楽しそうにしている。
沈黙があっても心地よくリラックスした時間を過ごせるからだろうか、真澄の独占欲剥き出しの行動は少しずつだが影を潜ませるようにもなってきた。
『カントクと恋人になってから、真澄くんもっと大人っぽくて優しくなりましたよね!』
そう元気に報告してくれたのは咲也だ。
自分が真澄に良い影響を与えられていると実感できて、その言葉はこそばゆかった。



そんな折、真澄に突然プレゼントを渡された。
箱を開けてみればそれは香水で、千晴でもブランド名を知っているほどの高級店だった。
誕生日でも記念日でもないのに何故かと問えば、千晴に似合う匂いだと思ったからだとあっけらかんと言われた。
試しにワンプッシュして匂いを嗅いでみれば、確かにきつすぎず自然な香りで嫌悪感はなかった。
真澄に促されるまま付けたら匂いに興奮した真澄に襲われ、いつもより激しい夜を過ごしたのもまた思い出である。

それからは事あるごとに匂いに敏感な真澄に襲われ続けたことで、とうとう外出の予定がない時につけるようになった。
しかしそれすらも察するのが碓氷真澄という男である。
真澄が「香水をつけている=夜のお誘い」と勘違いしてからは、真澄の考え通りの用途で使われることが多くなった。
千晴としてはあからさまに誘うのは気まずいので、「今日は夜も急ぎの用事がなく明日も朝から忙しくはないから、部屋に来てもいいよ」という心持ちでのお知らせであった。
実際に千晴が仕事に忙殺されてヘロヘロになった時、真澄に甘えたいだけでえっちする体力は無いけれど部屋に来て欲しいなと思って香水を付けたことがある。
その時、監督マイスターの真澄は空気を察してただひたすらに甘やかしてくれて、真澄は自分にとって最高の恋人だと再確認したのだ。






そして、今日も今日とて真澄は千晴にくっついている。
冒頭の通り、千晴の首筋に鼻を埋めて香りを堪能している。
「汗かいて香水の匂い消えちゃってるんじゃないかな」
「汗と混ざっても、俺には良い匂いだから」
こんな和やかな会話をしているけれど、実はピロートークというやつである。
お互い裸のままで体温を分かち合いながら後戯をして、ゆったりとした時間に浸っている。
「千晴さんの匂い、好き」
はぁと瞳を潤ませた真澄の吐息が鎖骨に当たって冷える。
そろそろ本格的に寒い季節になってきた。
だからだろうか、お互いの体温をこうして直に感じるのがいつもより心地良い。
睦み合いの残滓は拭き取ったし、このまま寝られそうだ。
見える場所へのキスマークは厳しく禁止していため、真澄はただ肌に唇を落としたり舐めたりしかしてこない。
逆に背中や腹部から脚の付け根には夥しい数のキスマークがある。
やりすぎだとは千晴も思っているのだが、見える場所にはつけない配慮をしてくれるから、これくらいならば許容してやるべきだと思い、苦言を呈したことはない。
脇腹のキスマークを見つけた時は、コアな趣味をしているなぁと笑ってしまったほどだ。


真澄のキスは優しくて、温かい。
「千晴さん、眠い?」
「んー……あったかくて、気持ちいい……」
「肩、少し冷えてる」
真澄が首筋に悪戯をしていたから、布団からはみ出た肩が部屋の空気で冷えてしまっていた。
さっと自分と千晴の位置をチェンジした真澄は、すっぽりと千晴を抱き締めた。
今度は千晴が真澄の首筋に顔を埋める。
先程まで冷えていた肩は、今は真澄の熱い手に覆われてじんわりと暖かい。
「おやすみ」
額に口付けられ、千晴は素直に意識を飛ばした。
この後、千晴の寝顔に欲情した真澄にオカズにされていたことなど千晴は露知らず、すやすやと夢の中に浸っていたのだった。



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