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□くに
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※オタクな菊さん注意!






1年に2回、お兄さまは変な行動に出る。
部屋に引きこもって叫び声をあげたり、たまに顔を見るとげっそりとやせ細っている。
それはお盆と年末の時期にやってきて、私はいつも怖い思いをするのです。
一週間ほどそんな日々が続いて、朝早くからどこかに出かけると、夕方にはいつものお兄さまに戻られている。
私は何をしていらっしゃるのかが気になって、けれど知ってはいけない気がしてお兄さまには尋ねずにいた。
年の暮れが迫る今日、ついにその悪魔の日がやってきてしまった。



寒さに震えながらお兄さまの部屋の前を通ると、いきなり叫び声が聞こえた。
「絶望した!このペンの無能さに絶望したぁぁ!!」
「ひっ」
「くぁwせdrftgyふじこlp」
「ひぃぃっ」

ぶつぶつと呪詛のような言葉の羅列に私は耐えられずに、部屋に駆け込んで、お兄さまが買って下さった携帯の短縮1を押して彼の番号を呼び出す。
『もしもし』
「香くん!私です、ハルです!助けてくださいっ!」
『菊さんの、アレ?』
「そうです、もうなんだか呪われてしまいそうで、恐ろしくて恐ろしくて……」
『ん。先生に幸せになるパンダもらってからすぐ行く。楽しいテレビでもイヤフォンして見てて』
「はいぃ……」


ぷつりと通話が途切れ、私は手近にあったプレイヤーを再生した。
イヤフォンを耳に押し込んで、おこたに身体を入れてぎゅっと目をつむった。
しばらくそのまま固まっていると、いつのまにか音楽が2周目に入っていた。



「香くん……早く来て下さい」
「ちーっす」
「きゃあああっ」
イヤフォンを取られ、すぐに声が聞こえたのでびっくりした。

「香くん!ようこそお出で下さいました!ありがとうございます!」
「また変な音しなかった?」
「あなたのアドバイス通りにイヤフォンでどうにか凌ぎました……」
「はい、オミヤゲ」
「わぁ、ありがとうございます。可愛いですね」
パンダのぬいぐるみを持って来て下さったらしい。白くてやわらかいその頭を撫でる。

「あら、お茶も出さずにすみません。今……」
「外出たら怖いんじゃない的な」
「そうですね、どうしましょう」
「飲茶、水筒に入れて持ってきた。一緒に飲もう」
「ありがとうございます」
おこたを勧めると、なぜか同じ口からおこたに入られた。

「わっ、服が冷たいですよ!すみません、こんな寒い中に来させてしまって」
「大丈夫だから」
ぎゅっと長い袖口の上から彼の手が私の肩を掴み、香さんは横になってしまった。
肩を掴まれている私も力にしたがって横になると、香さんと距離が近く感じられた。

「こうしてたら平気」
その冷たい服が私の耳に当てられて、一瞬びくりとした。
「聞こえる?」
少しだけ遮られている声に、こくりと頷く。
「少しだけ」
だんだんと香くんの手が温かくなるのがわかる。

「温まりました?」
「つーか、眠い」
「おこたで寝ると風邪を引きますよ」
「平気」
「あらあら困った方」

静かな部屋でおしゃべりをして、身体も心もぽかぽかになったら私もうとうとしてしまった。
「香くん、今日は来て下さってありがとうございました」
「今度から、この時期はうちに来ればいいんじゃない的な」
「よろしいのですか?」
「ハルならオッケー」
「お兄さまのお許しが出たなら、ぜひ」
「出るっしょ」
そうですねと相槌を打って、目を瞑った。


ふと耳から熱が引いて、ぽそりと
「おやすみ」
「おやすみなさい……」
私は眠りに引き込まれていった。


「はぁ……つーか、無防備すぎだし」
すやすや眠るハルに悔しくなって、俺は小さな額にキスをした。
「もう、手加減しないっすよ」
少しだけ空いていた隙間を抱き寄せて埋めると、寝ぼけているのか背中に手が回された。


……別に嬉しくないし。



胸がほっこりして、俺も眠りに落ちた。
そんな俺たちを変態髭野郎(アーサー曰く、だ)に見られたとは知らず、幸せな夢を見た。


(あーれま、青春だねぇ)

(来年からこの時期はハルをうちにつれてくから。いいっすよね)
(しかたありませんね、お願いします)
(シスコンも行き過ぎると嫌われるっすよ、アーサーみたいに)
(っ……善処します)


>>>
菊さんオタクですみません
香くんの性格も口調もわからん!にせ香くんですみません!
つんでれなんですか?くーでれ?
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