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□加
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お友達のハルを家に招いてボンヤリとテレビを見ていると、ラブロマンス映画がやっていた。
『僕、思うんだ。僕は君に出逢って、君を愛するために生まれてきたんだって』
少し古いその映画の、主人公がヒロインを口説くシーン。
恥ずかしいセリフだけど、こんなカッコいいこと言ってみたいなぁなんて、隣に居る好きな人に言っている自分を想像してしまった。
『嬉しいわ、マシュー。私もそう思っているわ』
そう言ってくれて、ロマンティックなキスをしてみたい。
そんな風に考えていたら、顔が真っ赤になってしまった。
隣のハルの反応が気になって、ちらりと横目で様子を窺う。
「うっわー、あたしこういう男無理だわ」
「え、」
「『君のために生まれてきた』だなんて、真っ赤な嘘じゃない。生まれてきたから出逢ったのに!こじつけよ、こじつけ」
嫌そうに眉をしかめる彼女に、呆然とするしかない。
「その前に付き合ってた子とか、今後の子に失礼じゃない?まだまだ先の人生があるんだから、今の時点でそんなことわからないわ」
「………」
「この子といつか別れたら、生きてる意味がなくなってしまうわよね」
「………」
「一生連れ添って、死ぬときにこう言われるなら、まだ説得力あるけど。ねぇ、マシュー?」
「……そ、そうだね……」
彼女の弾丸のような言葉たちに押され、僕は何も言えなかった。
そうだった。彼女は、超がつくほどの現実主義だった。
ロマンティックな演出は彼女には一切無縁で無意味だ。
歯の浮くような甘い甘い囁きよりも、理詰めで単刀直入に彼女に想いを伝えるほうが、よっぽど早くて確実なんだろうな。
だけどそんなことは恥ずかしくて、僕には言えそうにないや。
「そんな一方的な愛じゃない方がいいわよね」
「え?どういうことだい?」
「僕が君を幸せにするよ、だなんて胡散臭いセリフより、一緒に幸せになりたいよって言われるほうがよっぽど素敵でしょ!二人で愛しあわなくちゃ、お互いが幸せになれないわよ」
ね?と、また同意を求められる。
僕は感動してしまい、ぼーっとハルの顔を見つめていた。
「そう思わない?マシュー」
「あっ、ああ!そうだね、僕もそう思うよ」
超現実主義のハルにも、やっぱりロマンティックな部分があったんだ!
そうだよね、ハルだって女の子なんだから夢くらい見るさ。
やっぱり僕は、ハルが大好きだ。
「僕はハルと一緒に居ると、幸せだなって思うからね」
今はまだ友達だけど、いつか君と幸せになって、死ぬ時まで一緒に居て、最期に「君と一緒に居て幸せだった。君を愛するために僕は生まれてきたんだよ」って言ってあげたいな。
だってほら、僕は超がつくほどのロマンティストだからさ。
(な、何!?そんなこと言われたら……恥ずかしいじゃない!!)
(ありきたりな言葉より、温めていた想いを、君に)
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アンケートで、マシューさんをリクエストで頂いたので、書いてみました!
でも偽マシューですみません!
もっと天然タラシだと思うんですけど、天然さがあんまり出せませんでした……。
ちょっとひねくれ者な主人公ですが、気に入っていただけたら嬉しいです!
マシューはまたチャレンジしたい!