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□米
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※学パロで、切?→甘




「あのー、ちょっといいですか」
「どうしたんだい?」
「いや、それは私のセリフというか……」
私はアルフレッドにがっちりと後から拘束されている。
かれこれ20分以上はこの状態だ。

そして、ただいま12時58分。
あと2分で午後の授業が始まっちまう時間です。
けれど、私は屋上に居た。アルフレッドも屋上に居る。
そして私たちのクラスは、どんなに速く走っても屋上から5分はかかってしまう端っこだ。


つまり?
タイムオーバーですよ、アルフレッドさん!
しかも、次の授業は私の好きな世界史!


「私、今日、日直なんだけど」
「そういえばそうだったね」
「日直は始業の号令係でもあります」
「大丈夫さ!何のために日直が二人居ると思うんだい?一人欠けても大丈夫なようにだろう?」
「もう一人は今日風邪で休みだから既に欠けてるの!つまり、号令する人はクラスに一人も居ないの!お分かり!?」
「もう遅刻決定だから、始業の合図は必要ないんだぞ!」


ああ言えばこう言うアルフレッドに若干イラついたけれど、ひとつ嘆息してサボタージュを決意した。
「わかった。もうサボるから、いい加減放して」
何でこんなにがっちりと抱きしめられてんの。
背中に汗掻いてきたじゃんか!

「嫌だぞ」
「あーもう!さっきのバカフランシスのことはきれいさっぱり忘れなさい!」

そうだ。アルフレッドの意味不明な行動の発端はフランシスの爆弾発言だ。
その発言は、ほんの30分前に遡る。
私とアルフレッドとフランシスと菊ちゃんとでお昼を食べていたんだけどね。


「なーんかお二人さん、ピンクオーラ足りなくないか?」
「「は?」」
私とアルフレッドは同時にフランシスを見やる。

「いや、付き合い始めてまだそんなに経ってないのに、もう熟年夫婦みたいっつーか、冷めてるっつーの?」
「オレとハルは、いつもラブラブだぞっ!」
「いやいや、付き合い始めもなにも、私たち昔からずっと一緒に居たから、そんな甘い蜜月なんてこれっぽっちも無いよ」
そう。幼なじみのアルフレッドは、いつも私を振り回していた。
だから、少し前にアルフレッドの気持ちを知って恋人になっても、昔からの態度なんて変わるはずもなく。

「ま、告白が告白だしな」
「『ハルはオレのヒロインなんだぞ!君のヒロインじゃないから、他をあたりなよ』でしたよね、そういえば」
「菊ちゃん、よく覚えてるねぇ」
アルフレッドは告白されている私の所に来て、そう言うやいなや、相手の男の子に見せつけるようにキスをしてきやがったのだ。


「それから暫くはずっとハルの後つけて回って、気づけば全校認定のカップルになってたよなぁ」
「うん、なんかもう逃げられないなーって思ったよ。クラスの子にはからかわれるし」
「逃げられないって、オレから逃げるつもりだったのかい?ハル!」
「逃げる暇も与えずにストークしてたくせに何言ってるの」
ハンバーガーを食べながら反論してきたアルフレッドに、シェイクを無理やり飲ませると大人しくなった。

「青春を謳歌していて、微笑ましい限りです」
「そうかなぁ?なんか成り行きで付き合ってる感じだけどね……。菊ちゃんが期待してるような青春は小指の先ほどもないよ」
あはは、と軽く笑うと、フランシスはいきなり真面目な顔でこう言った。


「あれ以来お二人さんがキスしてるのとか見たこと無いし、さっきもハルは成り行きとか言ってたけど、実際ハルはアルのこと好きって訳じゃないのか?」
「何言ってるんですかフランシスさん。ハルさんはー……」
菊がフォローを入れてくれようとしたのに、アルフレッドは見事にそれをぶった切って叫びだした。

「そうだぞハル!君、オレに好きって言ってくれたことないだろう!?」
「えー?」
「キスする時に『嫌かい?』って聞いたら『嫌じゃないけど……』って言ったきりじゃないか!オレのことどう思ってるんだい!?」

「好きか嫌いかって言われたら、嫌いじゃないけど……」
「なーんか、嫌々感がハンパないんだぞ……」
「付き合ってんのに片思いなんて器用なことするなー、アル。ていうか、フられた?」
「ちょっと、フランシス!余計なこと言わない……でっ!?」


いきなりガシッと音がしそうなほど強い衝撃が来て、背中に体温を感じた。
「ハルがオレのことを好きって言うまで、絶対放さないんだぞ!!」
膨れっ面であろうアルフレッドが、私の身体に絡みつきながらバクバクとハンバーガーをまた食べ始めた。


「もう……」
子供みたいなことして……と言ったらまた面倒なことになると思って、開いた口を閉じた。
アルフレッドからのスキンシップは多いから、もう抱きしめられるくらいじゃ驚かなくなった。

「そういうスキンシップも、私のいう『青春』なんですよ、ハルさん」
くすくすと笑うと、お弁当を片付けた菊ちゃんが帰り支度を始めて、すぐに教室に帰ってしまった。
そしてフランシスも居なくなって、冒頭に戻る訳なんですが。



「はーなーしーてーよぉー」
「いーやーだーぞー」
「真似しないで」
「どうせこの授業が終わるまで暇だろう?」
「拘束されながらの残り時間と、自由な時間の流れは全く速度が違うの」
「意味分からないから却下だぞ!」
「汗掻いてきた、暑いー!」

ジタバタする私に、アルフレッドの拘束する力が増す。


私の肩口に額を乗せて、アルフレッドは低い声で呟いた。
「ハルがオレを好きじゃないなら、好きになるまで放さない。一生、絶対に」
いままでの軽かった雰囲気はガラリと変わり、真摯な言葉に胸が詰まった。

「そんな声で言わないでよ……」
「なら、おちゃらければいいのかい?」
「違うっ」
「さっきはあんな風に冗談みたく言ったけど、ずっと思ってたんだ。キスは嫌がらないのに、どうして好きって言ってくれないんだろうって」
「え……?」
「いつもオレがハルを振り回して、ハルが『しょうがないなぁ』って顔をするのが当たり前で。今回もそうだっただろ?オレがあんな告白して学校でからかわれても、ハルは『しょうがないなぁ』って、自分の気持ちなんかひとつも言わずにさ」
「ア、ル……」
「成り行きでもよかった。本当は成り行きなんて死ぬほど嫌だけど、ハルを隣に居させるためなら、成り行きでも強引にキスをしてでも良かったんだ」


苦しそうに絞り出される弱い言葉。
私を必死に抱き込む指が震えていることに気がつけば、私の胸も締め付けられたように痛んだ。


私は……アルフレッドのこと、
「ごめんね、アルフレッド」
「嫌だ!絶対に……オレを嫌いになるなんて絶対に許さないんだぞ」
私の「ごめんね」に危機感を覚えたのか、アルフレッドはそうやって私の言葉を遮った。

「違うの。ちゃんと聞いて?私、アルフレッドの気持ち、ちゃんと解ってあげられてなかったんだね」
震えている指先にそっと触れる。
「アルフレッドが私にあんな告白まがいなことをしたのって、ただの独占欲だと思ってたの」
「『告白まがい』じゃなくて、『告白』さ」
「うん、やっと解ったよ。でも今まで、アルフレッドが私に執着するのは、子どもじみた独占欲なんだって思ってた。例えば、子どもが自分のオモチャを他の子に貸さない、みたいな」
「違うよ!」

「だから、あんな風に私が誰かに取られそうになったから焦ってキスしただけで、私のことを恋愛感情で好きだなんて思いもしなかった」
「………」
「だから好きって言われても信じられなかった。信じちゃダメだって思った。その言葉を信じて、アルフレッドを好きになってキスをしても、いつかアルフレッドが本当の恋をした時に私は捨てられるから。そうやって傷つきたくなかったから」
「……ハル、オレは」
「でも、アルフレッドは私にしがみついてくれた。本当の気持ちを伝えてくれた。『絶対に放さない』って……ねぇ、これって、恋愛の独占欲だよね?」

「子どもの独占欲がこんなにドロドロで、みっともないわけないだろう?ハルが好きなんだ……信じてくれよ」
切なく身体に響く声に、胸がきゅんと鳴った。


「……信じる、よ」
ハッと息を呑む声が耳元で響く。
「ずっと信じたかったの。ううん、きっと心の中ではもう信じてたんだと思う」
私を拘束する腕を何度も何度も撫でる。
信じるという気持ちを信じてもらために。

「……っ、ハル」
顔を後ろに向けると、潤んでキラキラした瞳があった。
「泣きそう?」
私がからかうような声音で言うと、アルフレッドは眉をひそめた。
「君のせいじゃないか!……じゃなくて、ヒーローは泣かないんだぞ!」
「泣いたっていいのに」
「泣いたらカッコ悪いじゃないか!」
「アルフレッドの泣き顔見たい!……んむっ」

私が調子に乗ったら、ただでさえ至近距離にあった唇が触れ合った。

「うるさい口は塞ぐぞ!」
「もう塞いだくせに、何言ってるの」
「細かいことは気にしないっ!」
私たちの雰囲気って、やっぱりそう簡単には変わらないらしい。
居心地のいい空間だからいっか、なんてアルフレッドみたいに楽観的になってみた。

「アルフレッド」
「ん?」
「ちゃんと、大好きだから……ね?」
私がそう告げると、アルフレッドは顔をくしゃくしゃにして、笑った。
そして顔中にキスの雨。
しばらくそうやって恋人の空気を堪能した。



トントン、とアルフレッドの腕を叩く。
「好きって言ったら、放してくれるんだったよね?」
「言ったけど……」
まだ放したくないと言いたげで、不服そうな顔に内心笑って、

「でも、このまま一生放さないでね?」
「!!」
私は大好きなアルフレッドに、親愛のキスをした。



(なら、次の授業もここでイチャイチャするぞー!)
(えっ、そういう意味の『放さないで』じゃないから!はーなーしーてぇーー!)
(ヒロインはヒーローの胸の中にいるのがお約束じゃないか!)




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真夜中のテンションで一気に書き上げたので、意味不明ですね……
最近、アルにたぎってます!
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