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□西
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※ちびロマいます



「ただいまー!今日もぎょうさんトマトが穫れたでー!」
「おかえり、アントーニョ」
つばの大きな麦わら帽子を被ったアントーニョが、これまた大きな籠にたくさんのトマトを積んで帰ってきた。

「ロヴィーノも、おかえり」
「暑いぞちくしょー!」
ちっちゃな身体でアントーニョのお手伝いをしたのだろう、いつもはサラサラの髪が束になって顔にひっついていた。

「とびっきり冷えたレモネードがあるから、手を洗ってきて」
「レモネード!」
ロヴィーノは大好きなそれがあると知ると、洗面所にあっという間に駆けていった。

「あはは、素直な子」
「ハルー」
てこてことあたしの前に来たアントーニョの頬におかえりのキスをすると、彼も満足そうな顔で洗面所へと向かった。



「ロヴィ、おやつ食べたらシエスタしよかー?」
そんなアントーニョを無視して、ロヴィーノはレモネードを飲むことに集中していた。
ぷはっ、とグラスを離すことなく一気に飲み干したロヴィーノに、唇がつり上がる。


「おかわりいる?」
こんどはおやつのパンケーキを頬張りながら、ぶんぶんと頭を振る。
「あはは、そんなに急がなくても取らないから大丈夫だよ」
「親分がロヴィの取ったるでー」
「!?ほんはほのはほー!」
恐らく、取んなコノヤロー!と言ったんだろう。
お皿ごと避難するロヴィーノを怪獣みたいな動きで追いかけるアントーニョは、親分というより弟をからかうお兄ちゃんみたい。
「こら、アントーニョ!ロヴィーノをいじめないの」
そしたらあたしは二人のお母さんってとこかな。

「あっちいけー!ばかやろー!」
「冗談やんかー、そんな怒んなやぁ」
「ロヴィーノに嫌われたね」
「ハルまでそないなこと言うん!?親分泣いちゃうでー」


あたしが座っていたソファに、よじよじと登ってきたロヴィーノは、あたしの膝に座った。

「あら」
ロヴィーノがこんな風に素直に甘えることはあまりなくて、驚いたけれど嬉しい。
「ロヴィーノ!ハルは俺のやでー!ハルの膝も俺のや!」
もぐもぐと残りのパンケーキを咀嚼するロヴィーノは、「うるへー!」とだけ言って、きれいにそれを食べ終えた。

「美味しかった?」
「まっ、まあまあだっ」
「ふふ、ありがとう」
「俺を無視するとはええ度胸や!二人にはギュウギュウの刑やぁー」

アントーニョはこちらに来て、ロヴィーノを抱きしめているあたしごと、後ろから力強くぎゅうっと抱きしめた。
楽しそうな声音に、あたしもキャーと乗る。
「そんで、ちゅーの刑や!」

あたしとロヴィーノは、アントーニョに顔中さんざんちゅーされた。
ロヴィーノなんてぎゃーぎゃー騒ぎながら抵抗していて、涙目になってはアントーニョに「かわええー!」って言われてた。



そんな時間が過ぎて、すやすやと眠るロヴィーノの髪を指ですきながら、アントーニョとソファに腰掛けていた。
「ふわぁ……」
「眠い?今日ずっとトマト穫ってたもんね」
「ハルも今日は掃除に洗濯とかしてくれたんやろ?」
「うん。明日はシーツをハーブ畑の上に干すから、手伝ってね」
「もちろんやで!あれ気持ちえぇよなぁ」
シーツをハーブ畑の上に干すと、お日さまの匂いとハーブがずっと香って、胸がすっきりするんだ。


こてんと頭をアントーニョの肩に預けると、アントーニョはあたしの髪にやさしくキスをした。
「ふふっ」
「どないしたん?」
「さっきあんなにしたのに、まだキスしたりない?」
「足らへん!ハルとならずっとキスしてたいわ」


今度は唇にそれを重ねられ、口元がゆるむ。
「だーいすき」
「俺も大好きやで」
くすくす二人で笑いあって、何度も啄むようにキスをした。


「なんや、ロヴィーノが俺らの息子みたいやな」
「さっき、あたしは二人のお母さんみたいって思ったけどね」
「おかんは息子とキスせぇへんやろ」
「うん、今はアントーニョの奥さんみたい」
「せやろ!」


ニコニコ笑うアントーニョは、あたしの発言には驚かず。
そんな鈍感なところもどうしようもなく好きだなぁと思ったら、また唇が降ってきた。




(キスの数だけ、愛をたくさんこめて)


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