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□西
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※学パロ


後輩で恋人のハルはかなりの天然ちゅーか、ぽやんとした奴。
この前なんかフランシスとぶつかって助けられてるわ、他の男どもと仲良くするわで俺の気苦労は絶えないわけなんやけど。

嫉妬したって、ハルは無自覚だから何を言ってもあんまり意味ないのが困りもんやねん。
「そんなことしてませんよ?」のひとことで終わってまう。


せやからって、ハルが他の奴といちゃついてんのを見過ごせるほど、俺は人間できてへんし。
「どないしよ……」
嫉妬丸出しっちゅーのもカッコ悪いし、何より束縛してハルに嫌われたら元も子もないしな。


良い案はないか?とシワのない脳みそを捻る。
「せんぱーい!」
「ハル!」
昼休み、俺とハルは昼飯を一緒に食う。
校舎裏の日当たりのいい所が俺らの定位置や。

「あっ、トーニョ先輩またコロッケパン買ってる」
「一口食うか?」
「わーい!じゃあ、あたしの肉巻きレンコンあげますね」
肉!と思わぬ収穫に機嫌が良くなった。

「いただきます!」
「おー、食べ食べ」
「もう、先輩も言わなきゃですよ」
母親みたく俺をたしなめながら、お弁当を開けるハルの口に、コロッケパンを突っ込んだ。
「んぐっ」
驚いたハルは、少しもごもごしてたけど、すぐにパンをかじった。

「おいひいれふ」
幸せそうに言うハルは、ほんま可愛え。
なんやこの子!ってくらい可愛え。
「はい、先輩」
ハルが肉巻きレンコンを俺の口元に持ってきたから、俺も口を開けて食った。

うまっ!

いや、ウマいんやけど、さり気に「あーん」やったよな今の……。
つかハルは、いま自分が「あーん」したことに1ミリも気づいてへん。
普段はちょっとしたことで顔を真っ赤にして恥ずかしがるくせに、何でこんな時だけ天然のぼけぼけなんやねん、この子は。

ハルには一生勝てない気がするわ、と溜め息をつく。
「トーニョ先輩、美味しくなかったですか?」
「へ?」
「今日は自分でお弁当作ったから、もしかしたら美味しくなかったかもしれません……」
「いや、美味かったで?」
「ほんとですか?」
「ほんまほんま!嘘なんかつかへんって」
「………へへ」

どないしたんやろ?俺が溜め息ついたから、マズいのかと思ったんかなぁ?

……ったく、フランシスとかギルには無自覚で天然丸出しで接するくせに、こんな些細なことで敏感にならへんでもええのに。
何だかんだ、俺って愛されてんのかな?

そう自覚すれば、地味に照れくさくなる。
「おりゃー」
「わっ、なんれふか!」
ぐりぐりと拳でハルの頬をいじった。
「鉄拳や」
「てっけん?」
「そや。愛の、な」
「愛のてっけん、ですか?」
愛の鉄拳とか、こっぱずかしいにもほどがあるな。
キャラにないことしたな……。
いささか気まずさを覚え、黙ってパンを食う。


「鉄拳は痛いのに、トーニョ先輩の愛の鉄拳は、やさしくて嬉しいです」
ほんとに嬉しそうにそう言うもんやから、照れ隠しに頭を撫でて髪をぐちゃぐちゃにしてやった。


(これも鉄拳ですかっ?これはヤダーっ)
(愛情表現やって)
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