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□英
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※紅茶を淹れてるだけの話です


画期的な紅茶の淹れ方を発見しました!


電話口でそう話すハルに、それでは披露していただこうと、さっそくハルの家を訪れた。

「まず初めに、ティーバッグを用意します」
この時点で、紅茶通の俺としてはストップを掛けたいが。
まあ、俺んとこの国民と違って毎日紅茶を飲むわけではないし、最近では自国民でさえ簡単なティーバッグに逃げているのだから、まあ目をつむろう。
チラリと確認され、俺はこくりと頷いて先を促す。

なんだかイヤな予感がするが、画期的な方法というのだから、とりあえず最後まで見守ることを決めた。

「あ、因みに茶葉はアッサムです」
茶葉の種類は合格だな。(インスタントにクオリティは求めないさ)
これでダージリンと言われたら余計に眉間にシワが増える。

「カップにティーバッグを入れて、次に水をお好みの量入れます」
まさかこれでアイスティーの完成ですとか言い出すのだろうか。
「そうしたら、電子レンジで40秒ほど温めます」
電子……レンジ。

ピーッという音がして、カップを取り出す。
「牛乳をお好みの量入れて、また40秒ほど温めます。私は牛乳多めがオススメです。熱いのがお好きでしたら加熱時間は長めでもいいと思います」

また、ピーッという無機質な音がして、ハルはにこりと笑った。

「完成です!僅か2分足らずで出来るんですよ。忙しい朝にはぴったりです」
いい方法でしょう?と満足げなハルに、俺は味見を申し出た。

「………」
「あの、アーサーさん?」
「不味くはない」
インスタントだと味は期待出来なかったが、予想よりひどいものではなかった。
イギリスで買ったらしいティーバッグは、他の国のそれよりクオリティは高く保たれているようだった。


「だけど、これだと茶葉の旨味があまり出ないから、俺には少し物足りないな」
紅茶を楽しむために飲む場合には、これは情状酌量の余地がないほど不合格だろう。
「まあ、朝食の時、パンと一緒に飲むだけなら、この品質でも問題ないんじゃないか」
出来ればやめてほしいけれど、と喉まで出掛かった本音は無理やり飲み込んだ。
ハルが満足ならばそれでいいんだろう。あまり細かいことを言って嫌われるのも……アレだしな。

「日本人は本当に時間を節約するのが好きだな。良い物は時間をかけないと出来ないぞ」
「……はい」
しゅんとしてしまったハルを励ますため(自分が落ち込ませているのだが)、とっておきの紅茶を淹れてやろう。

「俺が今から美味い紅茶を淹れてやるよ。普段はそっちの簡単紅茶でいいから、俺が居るときは俺が紅茶を淹れてやるからな」
「はい、ありがとうございます」
今日持って来たのはアールグレイだ。
アッサムやニルギリの方がよりミルクティーに向いているけれど、アールグレイも悪くはない。
ずっと美味い紅茶を飲んでいれば、そのうち舌も肥えてあの(変な)紅茶も飲まなくなるだろう。
ハルがもっと紅茶に興味を持ったら一緒にいろいろ話したい。
そんなことを思いながら、俺は張り切って支度を始めた。


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実は主人公さんの方法は私がオススメする方法だったり。美味しいと思いますよ!
でもイギリス人には邪道なんだろうなーと思って書いてみました。
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