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□労働
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・原作orアニメ見てないとわからないネタ。
・主人公の胡桃ちゃんへの評価がかなりひどいです。


黒沼が風早と付き合うことになった後、黒沼は胡桃沢にその事を告げた。
胡桃沢と黒沢がいくつか会話して、胡桃沢が屋上から出ていくとき、胡桃沢はこう言った。
「爽子ちゃんが、ライバルでよかった」


胡桃沢が風早を好きなことなんて中学から知っていた。
高校に入って、黒沼にどんどん惹かれている風早を知って、それを阻もうとしたことも。
胡桃沢がしたことは、正直に言って汚い手段だったと今でも思う。

風早に対して抜け駆け禁止令出したり。
黒沼の悪い噂と同時に黒沼の友だちの在りもしない噂を流したり。
風早に黒沼は真田に惹かれてるとか言ったり。



同性から嫌われる女って、きっとこんな奴なんだろうなってのの代表例。
胡桃沢の両面を知っている俺からすると、よくやるな、くらいだった。
だってもし風早にバレたら確実に嫌われるようなことばっかりやってるんだぞ?
表面だけの可愛い胡桃沢しか知らなくて付き合ってたら、女性恐怖症になるだろこれは。



それでも俺は、胡桃沢の汚い面を知った。
初めは単なる好奇心だった。
会った時からぶりっ子の気配を感じていたけれど、裏の顔を知った時は面白くて仕方がなかった。

いくら好きな奴が取られそうだからって、変な噂を立てた女。
でも、胡桃沢はきちんと風早に告白して、そしてフラれたらしい。
フラれることがわかりきっていても、けじめをつけるためにきちんと自分の言葉を風早にぶつけた。

俺は、胡桃沢が意外にも一途で健気だということを知った。
噂を立てて嫌な女になってまで、風早に振り向いてほしくて精一杯想いをこめて接していた。
少し行き過ぎた気がしなくもないが、それが、その一途さが胡桃沢の等身大の姿なのだと感じられた。





「爽子ちゃんが、ライバルでよかった」
風の吹く屋上で、強がりも虚勢もない声が胸に響いた。
いや、強がっていないわけがない。それでも、凛とした態度を貫いた。


「あたしが男だったら良かったのにね。あたしが男だったら、あんたの汚い所全部わかってやれたのに」
昇降口で黒沼の友だちがそんな男前宣言をして、胡桃沢はそれに泣き崩れもせず、帰っていった。
そして三浦と黒沼の友だちも何やら会話をしながら帰っていったあと、俺は靴箱に寄りかかって胸をかきむしっていた。
どうして?そんなの、もうずっと前からわかりきっていて。

俺は熱くなる目頭を意識しないようにぎゅっと目を瞑って、走り始めた。









探すまでもなく、胡桃沢を見つけることが出来た。
俯いて、それでもしっかりとした歩みで前に進んでいた。

俺は声を掛けようとして、言葉を飲み込んだ。
信号待ちをしている胡桃沢に早歩きで近づいて、頭をぐしゃぐしゃと撫でた。


「ちょっ!何すんのよっ!……って、日高」
「聞ーいちゃった。屋上のも、昇降口のも」
「ケントもあんたも……何よ」
「あの女子、言ってたよな。『あたしが男だったら、あんたの汚い所全部わかってやれたのに』って」
「だったら何?」
「俺は男で、お前の汚い所全部わかってる。包んでやれる」
「は!?」
「だから、包んでやるよ」

赤く腫れた瞼が痛々しい。涙で濡れそぼつ目じりと頬。
俺はそれを少し強引に拭きあげた。

「ちょ、何っ……やめなさいよ!」
バシッ!と手をはたかれた。
「そういうの、いらないから。馬鹿にしないでよ」
「馬鹿になんかしてない。ぶっちゃけ、悪い噂立てるのとかは良くないことじゃないかとは思ったし」
「あんたに何がわかるのよ!?」
「でも、それでも。お前が風早の事を純粋に強く想ってた事も知ってるから。全部わかってるから」
「……っ」
「だから、俺が包む」

俺の肩あたりにある胡桃沢の頭を引き寄せた。
そうして、俺の腕の中に囲う。
「泣けば」
ふるふると震える身体がいとおしいなんて、いつから思うようになったんだろう。
「こういうのは、どうしようもないもんだろ。すぐに整理がつくもんでもないんだから、吐き出しちゃえばいいだろ」
「なんで、あんたなんかに……っ!」
「お前のためってわけでもない。お前が俺に弱い所を見せてほしいっていうただの俺の願望」
嗚咽がひとつ聞こえたかと思ったら、腹に強い衝撃。

「うっ……」
「日高なんかに慰めてもらいたくない!」
「まあ、お前の性格考えてたら長期戦なこと覚悟してるから、今日はこれくらいにしとく」
「意味わかんないから!ついてこないでよ!」
「いや、俺もこっちが帰り道だし」
「っ……!」

胡桃沢は顔をまっかにして走っていった。
俺はそんな胡桃沢を追うように、片頬をあげて踏み出した。




(俺さ、黒沼さんってすごい良い奴だと思う)
(………)
(それでも、黒沼さん嫌いだ)
(………は?何でよ)
(梅を泣かせる奴は嫌いなんだ。だから、風早も大っ嫌い)
(……っ!か、勝手に下の名前で呼ばないで!あんたもブラックリストに入れるわよ!性悪!)
(じゃあ性悪どうし仲良くしようぜ)
(ばっかじゃないの!?)


>>>
胡桃ちゃんです。いや、私、胡桃ちゃん嫌いですけどね。←
アニメ2期見て、胡桃ちゃんって結構ひどいことしてるけど、それって純粋に風早くんを好きなことからきている気がします。
まあ、やりすぎなんでしょうけどね。

実際こんな女の子は嫌ですが、潔く(?)身を引いたり、陰で爽子に文句言ってる子とかにちゃんと牽制してたりして、良くも悪くも「真っ直ぐな子」なんじゃないかと。
その視点からいけば、胡桃ちゃんもなかなかいい子なんじゃないかと思ったので。
あやねちゃんの「あたしが男だったら」発言で、じゃあ胡桃ちゃんにこんな男の子はどうだ!と思って書きました。
風早くんみたいな子もいいけど、やっぱり汚い所を知ってる分少し癖のある感じの男の子にしたかったので、その雰囲気は一番最後の会話にこめてみました。


風早くんと結婚したい!
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