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□労働
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「カワイさーん」
春ちゃんの可愛らしい唇からこぼれたのは、ワグナリアの誰の者でもない名前。
「春ちゃん、カワイさんなんて人、ここには居ないよ?」
種島さんが不思議そうに春ちゃんを見上げると、春ちゃんは人の良さそうな笑顔で、
「ぽぷらちゃん、何言ってるの。居るじゃない、ここには『かわい相馬さん』が」
ねえ、葵ちゃん?と今度は人の悪い笑みで山田さんを見た。
「そうです、相馬さんはかわい相馬さんなんです!」
「だからってカワイさんは酷いなぁ。僕の名前の原型留めてないよ?」
「かわい相馬さんには相馬さんなんて名前よりカワイさんって言う名前がお似合いですよ?」
可愛い顔して平気で毒を吐く春ちゃん。
「どうしてそんなひねくれた子になっちゃったの?前はもっと騙しやすくていい子だったのに」
「どこかのカワイさんに散々いじられて脅されてきたので、神経が丸太くらい太くなっちゃったんです」
「あははー、それってどこのカワイさんかなー?僕わかんなーい」
そんなこと言ったって実はそんなに図太くなってない春ちゃんは、きっとこの間からかった事を怒ってるんだと思う。
「そんな、座高が身長の半分以上だったからって拗ねないでよ」
からかいの種をもう一度あげると、顔を真っ赤にした春ちゃんが、怒って叫びだした。
「もうっ!相馬さんってほんっとうにデリカシーってものがないんですね!そういう配慮できない人って性格悪くて友達もいなくて人生を淋しく生きるんだ絶対!」
「相馬さんひどいよー!春ちゃんが可哀想だよっ!」
「そうです!山田の姉である春さんをいじめないでください!」
種島さんと山田さんが抗議の声をあげる。
「虐めてるわけじゃないんだけどねぇ」
「いや、明らかにいじめでしょ」
「小鳥遊くんまでひどいなぁ。ねぇ春ちゃん、どうすれば機嫌直してくれる?」
「どうなっても直りませんっ」
「佐藤くんのラザニアでも?」
「くっ……佐藤さんの料理で釣ろうったってそうはいきません!」
「じゃあ僕のカルボナー……」
「相馬さんのは結構です」
ははは、即答なんて酷いね。
「ラザニアにパフェもつけるよ?」
「ほんとっ!?」
「うんうん。生クリームとイチゴたっぷりのパフェ」
「わーい!」
さっきの不機嫌さは一転して、もう幸せそうな顔の春ちゃん。
「良かったね、春ちゃん!」
「春さん!妹の山田にもパフェを下さい!」
「えへへ、ありがとね二人とも!もちろんパフェは三人で分けようね!」
きゃあきゃあと喜ぶおチビちゃんたち。
「これで一件落着、かな」
あの笑顔も見れたし、それなりに満足だ。
パタパタと佐藤くんにラザニアを頼みに行く春ちゃんの後ろ姿を見ていると。
「相馬さん!次、ひどいこと言ったら嫌いになっちゃいますからね!」
ベッと行儀悪く舌を出した春ちゃんに、心の中で舌を巻いた。
「そんなこと言われたら、もう虐められないなぁ」
「だから!いじめないで下さいってば!」
君にそんな言葉を突き付けられたら。
「勝てないよ、もう」
(甘い言葉の束縛に完敗だよ)
(今は負けておいてあげる)
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アニメ2期にたぎった。ぽぷらと山田と八千代可愛い佐藤さんたぎるえへへ(相馬さんは?)
相馬さんの「ヘタレめ……」(低音)にはときめいた!