z

□うたぷり
9ページ/20ページ

・荒川アンダーザブリッジ(映画)パロ第二弾
・なっちゃんが金星人設定


「あー、つまんないっ」
校庭のベンチで春ちゃんが手足をジタバタさせている。
「まあそう言うな。あとは一十木が来るのを待つだけだろう」
「音也くんもきっと頑張ってレコーディングしていますよ。応援しましょう?」
「だってもうかれこれ2時間は経ってるよっ。見学もダメなんて、ケチなんだから」
「まあ、日高は最初の俺たち二人分から待ちぼうけていたからな」
「お疲れさまです」

「ねえねえ、何か楽しいことしない?」
先ほどまでつまらなさそうな顔をしていたのに、一瞬で瞳がキラキラしだした。
僕は春ちゃんのこういう所が素敵で可愛らしいなって思います。

「楽しいこと、とは?」
「そこは、マサやんと那月が考えてよ」
「あ、そうだ。じゃあピヨちゃんごっこはいかがでしょう?」
「ぴ、ピヨちゃんごっこ?」
「はい。ピヨちゃんが普段どう生活してるかを想像して演じるんです」
春ちゃんの顔が少し引きつってるような気がしますが、どうかしたんでしょうか?

「四ノ宮……。それはこの年代の男がするにはハードルが高いぞ」
「ま、マサやんがひよこの着ぐるみ着て「ぴよ」って言ってるの想像するとウケる!!やばい!!」
「お前も想像するな!」
苦しそうに笑っている春ちゃんと、恥ずかしそうに顔を染めて春ちゃんを叱る真斗くん。

「だめですかねぇ?」
「ぷくくっ、い、いいんじゃないのっ、ほら早く、二人とも!」
「するか馬鹿者!四ノ宮、俺はやらんぞ」
「そうですか?残念です」
「えー!何でよ!じゃあマサやんいいの出して!」

あ、また春ちゃんがぷりぷり怒り出しちゃいました。
うん、この表情も素敵でかわいいです。


「仮にも今は授業の時間だ。来週のテスト勉強でもしたらどうだ、日高。俺はもう教えんぞ」
「一夜漬けっていう素敵な習慣が日本にはあるんだよ!テストの醍醐味は一夜漬けにあるでしょ!」
「だから毎度赤点ギリギリなんだ、お前は」
「赤点じゃないんだからいいでしょ?どうせ一週間前から勉強したって点数上がらないんだから。あたしは無駄な努力はしない主義なの」
「全く……」
ぶつぶつとお説教モードに入ってしまった真人くんの言葉を右から左に受け流して、ベンチの背もたれに寄りかかる春ちゃん。
頭を背もたれからはみ出させて、ベンチの向こう側に視線を投げた。
首は痛くないんでしょうか。



「あっ!」
嬉しそうに声をあげた春ちゃんに、僕ら二人とも首をかしげた。
「花が逆さまに咲いてるみたいだ!」
ドクンっ、と心臓が一気に身体じゅうに血を流し始めた。

「ほらほら、マサやんと那月もあたしの真似して見てみて!」
春ちゃんの真似をして見ている真斗くんも、楽しそうに笑った。

僕は、春ちゃんから目が離せない。
いま彼女は、何と言ったのだろう。
いや、僕の聞き間違いでなければ……。

頭を反対に下げているために、見せつけているような白い喉にクラリとした。
ああ、今すぐ触れてしまいたい。


「那月?どうしたの?」
「………」
「なーつきー?おーい?」
手を目の前で振られてようやく我に返る。
「視界がさかさまで気持ち悪くなっちゃった?」
「い、いえ……」
僕も春ちゃんの真似をしてそうなったのだと思ったのだろう。心配そうにひそめられた眉に後ろめたくなってしまった。

「あ、の……。さっきの言葉、もう一度言ってくれませんか?」
「気持ち悪くなっちゃった?」
「いえ、真似をしてみて、と言う前です」
「えっと……花が逆さまに咲いてるみたいだ?」

合ってる?とでも言いたげに小首を傾げる春ちゃんに、僕は我慢できなくなってしまった。
きゃっ、という春ちゃんの声が耳に届いた時には、僕は春ちゃんを抱きしめてしまっていた。

「春ちゃん、春ちゃん!」
「な、なつき?」
まさか、という思いが頭をぐるぐるしている。
いや、春ちゃんはただ見たままを言っただけなのだろうとはわかっていますが。
それでも、好きな女の子に言われたら期待してしまうでしょう?



僕は深呼吸すると、息を吐き出すのと同時に告げた。
「花が逆さまに咲いてるみたいだ」

ドキドキしながら春ちゃんを見ると、ちょっと困ったように笑っていて。
「うん。あたしもそう思ったよ」

ほら、そうやって僕が舞い上がることばかり言ってくれる。
ねえ、春ちゃん。
春ちゃんも僕のことを好きでいてくれるって、そう思ってもいいですか?
その言葉の違う意味をあなたが知らないとしても、いつかはきちんと意味を知って言ってくれると思っても、いいですか?

僕はそう願いを込めて、もう一度春ちゃんを抱きしめた。



(お待たせー……って、どうして春と那月が抱き合ってるの?)
(い、いや俺にもわからないのだが……)
(あ、音也遅いよ!待ちくたびれたぁ)
(っていうか、那月に対してのコメント無し!?)

>>>
なっちゃんって金星人っぽいですよね!っていうことで、パロ。
「花が逆さまに咲いてるみたいだ」は「僕はあなたを愛しています」と言う意味です。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ