z

□うたぷり
5ページ/20ページ

--------------------------------------------------------------------------------
・卒業後、同居設定

頭蓋骨が軋みそうな痛みと、くらくらする視界に頭を抱えながら、私はベッドから降りた。
昨日は散々だったな、なんて思いながら顔を洗う。

先週発売されたST☆RISHのニューシングルが、なんとミリオンセラーとなった。
このシングルのためにみんなプロモーション活動を精力的に行っていたし、何と言っても、それは私が作曲したものだったから、喜びも一入だった。

メンバーと近しい関係者たちで、お祝いも兼ねて飲み会が開かれたのが昨日だった。
みんなミリオンセラーという好業績に興奮していたせいもあって、いつもよりハイペースでどんちゃん騒ぎになってしまったけれど、誰もそれを咎めることはなかった。
無礼講と言わんばかりにはしゃいで、あの聖川くんの新たな一面が見れたことは、色んな意味で収穫だった。


まあ、その代償がこの割れんばかりの頭痛なわけだけど。


「ん〜、春……?」
「おはよ、音也」
「おはよぉ」
自然にキスをして、朝の挨拶を済ませる。

「具合、大丈夫?」
「ん〜、あったま痛い」
「あはは、私も」
今日はお互い夕方から打ち合わせが入っているくらいだから、まあ二日酔いでも大丈夫だろう。

「味噌汁のみたーい」
「インスタントでもいい?」
さすがに二日酔いでご飯を食べる元気もない私たち。味噌汁を作る元気もないよ。
「んー、いい」
私が電気ケトルに二人分の水を入れてセットしていると、音也がお椀を出して材料を入れてくれた。

「あー、味噌汁飲んだらまた寝たい」
「お昼過ぎまでなら平気じゃない?」
「春も一緒」
「うーん、魅力的だけど、洗濯と掃除しないと」
「じゃあ、一緒に昼前まで寝て、一緒に洗濯と掃除しよ」

にこ、と甘い誘惑で私を唆す。
「ね?」
「ありがと」
こちらもニコリと笑って、沸いたお湯をお椀に注いだ。
音也がすぐにかき混ぜてくれた。


「いただきまーす」
音也はすぐに味噌汁に手を着けた。私は猫舌だから、もう少し冷めるのを待つ。
ほっこりとした顔でごちそうさま、と言う音也に、こういうのって良いなぁと、こっちまでふわふわな気持ちになった。

「あっ、春」
「ん?」
「見てみて、ハートになってる」
ほら、と指された先を見ると、私のお椀の中のお麩が、いびつだけれどハートマークみたいに浮かんでいた。
「はは、ほんとだ」
「なんか可愛いね」
「そうだね」

音也はこんな些細な幸せや良いことを見つけるのが得意だ。

「音也の隣にいると、私まで幸せになれるよ」
「ほんとっ!?」
嬉しそうに身を乗り出す音也の頭を撫でて、可愛いなあと顔を綻ばせる。

「へへ、春、だーいすき」
「ふふ、私も」

好きだよと耳元でささやくと、音也にベッドまで運ばれてしまった。
ベッドの上で甘い口づけを何度も交わして、私たちはまた微睡みにたゆたった。


(幸せの欠片をひとつずつ拾って)

>>>
音也マジ天使!
味噌汁のお麩はハートに見えますよね!って思ったので。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ