z

□WJ
4ページ/49ページ

「サンジくん、おはよう!」
「おっはようハルちゅわん!」
朝からハートマークたっぷりのサンジくんからの挨拶に、あたしの顔がほころぶ。
「今日の朝ご飯は何?」
「レディたちには軽めのフレンチトーストのサラダ添えでございます」
「ほんと?美味しそう〜!あたしフレンチトースト大好きっ」

さりげない優しさであたしのココロもふわんとやわらかくなる。
「ベリーがベースのフルーツジュースで、今日も美しさに磨きがかかるぜ!」
茶目っ気たっぷりのコメントにあたしも思わず吹き出した。
「ナミに負けないくらいお肌ツルツルになるかな?」
「ハハハ、ナミさんは毎日ミカン食ってるからなぁ」
ナミは妬けちゃうくらいにべっぴんさんだから、あたしの密かな目標はナミだったりする。
「けどハルちゃんだってお肌つるつるだぜ?」
「もっとなりたいんだも〜ん」
怠けてたりなんかしたら、サンジくんに飽きられちゃうかもしれないしね。

そんなあたしの内心に気付いたのか、サンジくんは目を細めながらあたしの頭を羽を撫でるように撫でてくれた。
「ならこれから、サンジくん特製ビタミンたっぷりお肌つるつる料理を作って差し上げましょうか、レディ?」
手の甲にキスをしながらウィンクするサンジくんに、とびっきりの笑顔でお願いした。
もちろんジュースもご飯も美味しかったし、その後のティータイムではサンジくんの言っていたお肌がつるつるになるらしいジュースをくれた。

「これ、なんて言う飲み物?」
「アセロラっていうやつだ。アセロラはビタミンCが豊富で、レモンの30倍以上って言われてるんだぜ」
サンジくんの説明を聞きながら我慢できずに飲めば、甘酸っぱい爽やかな酸味が広がってとっても美味しかった。
「あんまりすっぱくないのに、レモンの30倍もあるの!?」
すごーい、と目をキラキラ輝かせてしまう。
「ジャムやジュースやゼリーにするのが一般的らしい」
つい先日まで居た夏島でおばさんに勧められて、大量に買ってきていたらしい。

あたしがこんな風に拗ねることもわかってたのかも、と赤くなったけど実際は違かったみたい。
「あいつら肉ばっかでバランス悪いから、ビタミン摂らせねぇとコックとして失格だからな」
しぶしぶといったように見せておきながら、ほんとは心配なだけだってわかる。
「さすがサンジくん。コックさんの鑑だね!」
ちょっと照れたサンジくんをからかいながらも、もう一杯おかわりして楽しいティータイムを過ごした。
サンジくんは朝食からおやつに夕飯までみんなのお世話をしてるから、休まるときがないんじゃないかと思う。

おやつに使った食器を洗う背中は大きくて、あたしはテーブルに顔をつけながらぼーっとその後ろ姿に見とれていた。
「そんなにオレって色男かい?」
「サンジくんってお母さんみたい」
正直な感想にサンジくんは爆笑しながら皿洗いを終えた。
あたしが手伝うと言っても、
「レディの玉のような手を荒れさせるのは忍びない」
とか何とかで手伝わせてくれない。
ならば食器を片付けると言ったって、高いところにあるものや、重いものはサンジくんがササッと片付けてしまう。
だからあたしはグラス類を片付けるだけしか手伝えない。

「オレがお母さんなら、ハルちゃんは何だろうな」
考えに耽っていた頭を覚ますようにサンジくんの言葉がすっと入ってきた。
「世話焼かれてる娘みたいかもね」
くすくすと返しながら、サンジくんが片付け終えたのを見計らって立ち上がる。
サンジくんはせわしない。

後片付けを終えたらナミのミカン畑の手入れが待ってる。
あたしもこの仕事は好きだから手伝わせてもらってる。
潮とミカンの香りとが交ざりあってて清々しい気分になるんだよね。
二人で仲良く水遣りをして手入れをして少し休憩。
「いっぱい働いてるねー、サンジくんは」
「そうかい?もう慣れたけどな」
ふぅっと吐いた煙が風にさらわれて消えた。
「あたしもミカンの世話は好きだな」
気持ちいいもん、と伸びてあくびをした。

「オレもハルちゃんとなら楽しいぜ」
「それはどうも!」
きゅっと握った手を強くすると、サンジくんはもう片方の手であたしの手を包んだ。

「ハルちゃんと好きなことをしてる時間は何でも早く過ぎちまうなァ」
からかう声音じゃなくて、本当にしみじみとそうこぼしたから、あたしはちょっと顔を赤らめながら頷いた。
「あたしも……そう、だよ」
「本当に?」
ブンブンと取れそうなくらいに首を振って、あたしももう片方の手をサンジくんのそれに添えた。
「毎日毎日、サンジくんと一緒に居ておしゃべりするだけで楽しくて気持ちい……」
気持ちいいんだよって言おうとした言葉は、サンジくんのやわらかい唇に吸い込まれちゃったみたい。
少しだけ遊ばれて、くすぐったさにみじろぐ。
「ん、くすぐったいよ……」
くすくすと笑いながらじゃれあって、心も身体もぽかぽかになったあたしは、目をトロンとさせてサンジくんにしがみついた。

「眠いなら寝ていいぜ」
「サンジくんも……」
「オレは……わかった、ちょっとだけ寝るか」
おやすみ、と眠た声で告げると額にやさしいキスをくれた。
やっぱりなんだかお母さんみたいね、だなんて思いながらあたしはストンと眠りに落ちた。



「サンジくんも大変ねぇ、お子様のお守り」
ナミさんが様子を察してタオルケットをハルちゃんにかけてくれた。
「ハハハ。お姫様を守んのはナイトの役目だから大丈夫さ」
くしゃりとふわふわの髪を撫でれば、幸せそうに微笑む。
この役は誰にも譲る気はないから。

「片時も離れずあなたのお側に、ってな」
「離れないのはこの子じゃない」
ヒヨコみたいについて回ってるわよ、とナミさんがひとつ苦笑い。

「いかに離さないようにするかってのも、なかなか楽しかったりするんだよな」
悪いことを言っている自覚はあって、だからナミさんも唖然とした後に呆れた声を出した。
「ほんと、あんたたちお似合いね」
ありがとうございます、と紳士に振る舞って片頬で人の悪い笑顔を作った。
いつまでだって離す気はないから、覚悟はいいかい、レディ?


>>>
With me, with me, with me!より『01. 片時も』

『揺らぎ』様より拝借。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ