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「あぁ〜〜っ!」
「うわっ、な、何スか春さん」
「それ冬季限定のポッキー!」

ボリボリと晴子さんに貰った菓子を食べていたら、春さんが俺に詰めよってきた。
「そ、そうなんスか?」
俺はトーキだかなんだか知らないまま、貰って食べているだけだ。
「ちょうだい!」
無邪気な顔で手を伸ばす春さんにドキッとした。


「……桜木くん?」
コーチョクしてる俺を不思議に思ったのか、春さんが首を傾げながら俺を見つめた。
(やばい!上目遣いはやばい!)
「くれないの?」
「い、いやいやそんなことは!ももももちろんあげます!」
震える手で袋の中を探る。
「……あ、あれ?」
目当てのものはなく、俺は袋を覗き込む。
「むっ!無いっ!」
「え〜〜っ、本当に!?」
見せて!と袋を持っていた手を引き寄せられて、俺はまたコーチョクした。
(春さんの手が!おおおれの手をっ!)


「ほんとだぁ……ざんねーん」
しゅんとしてしまった春さんに俺は慌ててしまう。
「すっ、すみません!せっかく楽しみにしてたものを……!」
俺が謝ると、春さんはびっくりした後に思いっきり笑った。

「あはは、いいんだよ!もともと桜木くんのだし、学校帰りにでも買えばいいんだから」
「そうかその手があった!」
「え?桜木くん?」
無いなら買えばいいんだ!
この天才がそんな簡単なこと気付かないなんてな!


俺は急いでポケットの中から小銭を取り出す。
「32円……」
「どうかしたの?」
心配そうに聞かれて、俺は必死になって春さんに訊ねた。
「春さん、32円でこの菓子は買えますか!?」
「さ、さすがに32円じゃあ買えないかな……」
「よーへー!キンキューだ!金貸してくれ!」
ぽかーんとする春さん。
俺たちの会話を聞いていた洋平が、爆笑しながら500円かしてくれた。
「サンキュー!それでは春さん、超特急で買ってくるので待っててください!」
「桜木くん!そんなのいいのに!……って、行っちゃった」
春さんにポッキーを食べてもらうために駆け出していた俺は、全く春さんの話を聞いていなかった。

「あっはは、あいつあーいうとこ単細胞だからな。飽きないだろ?」
「ふふ、ほんといい人だね」
「春ちゃんだからだろうけどな」
「へ?あたしだからってどういう意味?」
「(天然同士は大変だなぁ……)」
「え?え?水戸くん?」

(お菓子で君が喜んでくれるなら!)
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