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部活の休憩中、風に当たっていた俺の隣に宮城が来た。

「なーにイライラしてんすか、三井サン」
「イライラなんてしてねーよ」
「ま、どーせ春ちゃん絡みっしょ」
「どーせだと?」
宮城がちっこいナリで俺をからかう。
しかもそれが図星ときたもんだから俺は更にイライラを増した。

「で、どーしたんですか」
イライラは誰かに話すことで多少改善したりするわけであって。
つうか誰かに愚痴らねぇとやってらんねーっつーことで、俺はついに重い口を開いた。

「春の無防備さにムカついてる」
「そんなのあんたと付き合う前からそうだったでしょ」
バスケ部のマネージャーを一生懸命していた春に惚れたのは俺だ。
天然というのはここまでひどいものかと驚いたときもあったもんだ。
付き合うのだってアタックしてから半年以上経っていたし(俺があんなに好意を示していたのに、春はまったく気付かなかったという)。


「俺のもんだっつう自覚が足りねえのか、すぐ他の男に懐くわ笑うわ話し掛けるわで、俺はいろいろ溜まっちまってるわけだ」
「つまり欲求不満ってわけっすね」
「ちげーよ!」
べしっと宮城の頭を叩くとイッテー!と睨まれた。
「……まぁ確かに春ちゃんと三井サン見てるとハラハラしますよ」
「あ?何でだよ」
「いつ三井サンが我慢の限界を迎えるかって」
春ちゃんがタオルとかドリンクを他の奴に配るだけで睨み効かせますもんね。


宮城のいうことはいちいち最もでかなりムカついた。
「そーいうもんはまず第一に彼氏に持ってくるもんだろーが!」
「うっわ、亭主関白!嫌われますよー」
チャチャを入れる宮城を無視して話を続ける。
「同じクラスで仲が良いからって花道と回し飲みしやがるし、頭が良いからって赤木には宿題見てもらうし、早く来たからって木暮と仲良く体育館の掃除してやがるし!」
「あとの2つはいいとしても、花道もなかなかやるなぁ……」
「まあそれを聞いた日にシメてやったけどな」
「(ご愁傷さま……)」


春は俺に嫉妬させてる自覚がないから、俺がいくら注意しても全然治らない。
「ま、じっくり教え込むしかないんじゃないっすか?」
「万年ふられ野郎に偉そうに説教されたかねぇ」
「俺は彩ちゃんに一途なんです!」


軽口を叩きながらも、そろそろ休憩も終わるだろうと二人で体育館に戻る。
「あっ!寿先輩っ!」
俺を探していたのだろう、俺の姿を確かめると満面の笑みを向けてこちらに駆け寄ってくる春。
「なんだかんだ言って仲いいじゃないすか」
「たりめーだ……って春!」
春が小さすぎて視界に入らなかったのか、春と流川がドンとぶつかった。
「きゃっ!」
びくともしない流川に跳ねとばされてしりもちをつきそうになった春を、間一髪で流川が抱き留めた。

「……っ」
「み、三井サン。不慮の事故ってやつだから……」
宮城が俺のフォローをしている間にも、春と流川は離れない。
「ごっ、ごめんね楓くん!」
「……前見て歩け」
「ごめんなさーい」
あ、もうすぐ休憩終わるからタオル預かるよ。

俺の元に来ようとしたことなんてさっぱり忘れて、マネージャー業務に戻りかけた春を呼ぶ。


「春!!」
「あっ、はーい!ありがとね、楓くん」
春はてこてことようやく俺の隣に来た。

「お、ま、え、なぁ!なに流川といちゃいちゃしてやがる!」
「へ?してないですよ?」
いーや、あの光景は確かに付き合いたてのカップルみたいだった!
春の鈍感さにキレた俺は、春の頬をつまんだ。

「してんだよ!」
「ひへはいへふっへぇ〜〜」
してないですって、と容疑(?)を否認し続ける春。
「もうぜってぇ俺以外の男に触るな」
「え?どうしてですか?」
「どうしてもだ!ついでに回し飲みも体育館の掃除も禁止!」
「えぇー!掃除はマネージャーの仕事ですよ?」
「あと走って流川にぶつかるな!」
「わざとぶつかってないですってば」

俺の我慢も知らずに、春はニコニコと俺の隣で笑う。
こうして俺の受難は日々つづいていくのか……。

(うちで飼ってる犬のポン太もだめ?)
(だめだ!)
(ポン太は家族なのにぃっ!)
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