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□WJ
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*大学生設定



午後3時までのバイトが終わり、花道と会う約束をしているのは2時間後の5時。
それまで何をして時間を潰そうかと、ブラブラと街を歩いていると。

「春?」
「あっ、洋平!」
名前を呼ばれて振り向けば、そこには久しぶりに顔を見る洋平。
「久しぶりだねぇ」
「あぁ。元気か?この頃なかなか時間が合わないって花道が言ってたぜ」
「大学も違うしバイトもあるし、なかなかね」
幼なじみカップルついに破局か、なんて冗談めかして言う洋平に、あたしは深く溜め息を吐いた。


「破局ねぇ……」
あたしがあまりにも深刻そうに見えたのか、洋平は少しだけ眉間に皺を寄せた。
「何かあったのか?」
「んー……洋平、いま時間ある?」

頷いた洋平は、近くの喫茶店で話そうとあたしを促した。




あたしと花道は腐れ縁とも幼なじみとも言える関係だ。
小中高と同じ学校で、あたしは花道をただの幼なじみとしてしか見てなかった。
高校に入って花道がバスケを始めて、今まで一緒に遊んでた時間がなくなって、つまらないなと思っていた程度だった。
もちろん花道が試合に出る日はみんなで応援に行ったし、勝ったら嬉しかった。

花道のこと、カッコ良いと思ったことも認める。
試合中に「花道カッコ良いね」だなんて言ってしまったばかりに、その言葉は歪曲に歪曲を重ね、花道に伝わったらしい。

あぁもう有り得ない!と頭を抱えていたら、洋平が一言。
『あいつ、ずっと前からお前のこと好きだったろ。多分、無自覚だろうけどな』

そうだ、花道たちに逆恨みした不良があたしにちょっかい出してきた時も、怒り狂って病院送り一歩手前にしたのも花道。
あんなブチ切れてたのに、あたしが怪我のひとつもないと知ると、いつもより優しい安堵の表情を浮かべていたっけ。


そう考えたらなんだか愛しく思えて、付き合い始めたのが高1の秋。

お互い恋人ができるのは初めてで、しかも幼なじみの方が長かったから、恋人というよりは行き過ぎた友情みたいな感じだった。
裏表の無い花道の良いところも悪いところも知り尽くしている。





「大学入って、友達カップルを見てたらさ、あたしと花道って恋人じゃなくてもいいんじゃないかなー?って」
あたしたちの付き合いたての時だって、友達たちのような甘ったるいものはあまりなかった。
「あたしは花道のどこが好きなんだろうって思って。友達としての好きと恋人としての好きの違いがないの」


倦怠期かなぁなんて、あたしにとってはなかなか深刻な胸の内を告げた。
ていうか、花道の親友にこんなこと話していいんだろうか。
まぁでも洋平はあたしらの保護者みたいなもんだからいいよね。

ちらりと洋平を見ると、ブレンドコーヒーを美味しそうに飲んでいた。

「洋平、聞いてたー?」
あたしはストローをがじがじと噛んで、恨めしげに言う。
「聞いてた聞いてた」
「ほんと?疑わしいんですけど」
「大丈夫だって、ほら時間だろ」

洋平に言われて時計を見ると、約束の15分前だった。
「あ、本当だ。もう行かなくちゃ。洋平はどこ行くの?」
「駅前」
「あ、なら一緒に行こう。あたしも駅前で待ち合わせだから」
そうして二人、喫茶店を出た。





駅に向かう途中で洋平が、
「さっき言いたいこと言って、少しはすっきりしただろ?」
「……まぁね」
「花道はなーんにも変わっちゃいないさ。昔も今も、大事にされてるだろ?」
「えー!デートなんていつもラーメン屋だし、髪切っても気づいてくれないし、あたしの誕生日なのにバスケ最優先だし!」

女の子の扱いを全くわかってない!とむくれると、洋平は笑った。
「バスケは置いといて、花道にそれ以上を求めるのはハードル高いな。それに春はラーメン好きだろ?」
「好きだけどさぁ……デートの時くらいはさ!」


「お前のそれ、ノロケにしか聞こえない」
「えっ、どこが?」
「あ、花道いたぞ」

いつの間にか駅前に着いていて、珍しいことに時間通りに来ていた花道がそわそわしていた。

「……何であんなそわそわしてるの?」
「お前らどの位会ってないんだ?」
「バイトと課題で忙しかったから、2週間くらい?」
「なら、会えるから嬉しいんだろ。かなり珍しいことに遅刻してないし」

大事にされてるな、だなんて洋平はからかう。
「じゃあな。仲良くやれよ」
「あ、うん。またね」
洋平がひらひらと手を振って、歩いていった。



悪趣味を自覚しつつ花道を観察していると、そわそわからキョロキョロになった花道が、あたしを見つけた。

「春っ!」
キラキラと少年みたいな目をして満開の笑顔で、花道はあたしを呼んだ。
この時、胸がズキューン!と撃ち抜かれた。
「(可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い!)」


だってだって、腐れ縁で幼なじみで、嫌になるくらい顔を合わせてるのに、たった2週間会わなかっただけでこんなに嬉しそうな顔するんだもん!
あたしは考える前に花道に突進していた。

「久しぶ、うっ!」
あたしのタックルは予想外だったらしく、花道はもろに喰らってしまった。
「っ、春!何すんだっ」
「花道が悪い!」
「おおおれのせいか!?(って、抱きついて……!か、かわい……っ)」
勝手に花道のせいにして、ぐりぐりと胸板に頭を押し付けた。


「き、今日はずっと……手、繋ごうね」
未だに気恥ずかしいのか、花道はなかなか自分から手を繋いでこない。
「お、おう」
「今日、花道んち泊まる」
「ぅおっ!?……おう」
「部活の先輩から電話来ても出ないで」
「わかった」
「今日は、あたしが花道を独占してもいい?」

花道が真っ赤な顔でこくこくと頷く。
あたしも茹でダコみたいになりながら、久しぶりのデートに期待を膨らませていたことにようやく気づいたのだった。


(何だかんだ、お互い欠かせない存在だったりするんだよね)
(グチだって恋愛のスパイスにして)

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リハビリに書いたらぐだぐだ……(^_^;)
あたしの洋平くん好き加減が表れてますね(笑)
お互いがお互いに可愛いと思ってればいいよ!
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