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*幼なじみ・お隣さん
部活が終わり、学校から帰ってきて夕飯とお風呂も済まして、自室でぼんやりと微睡んでいた。
そろそろかな、とぼんやり考えていると案の定、コンコンと控え目に窓をたたく音。
意識がふっと浮いて、カラリ、窓が開く。
「宗ちゃん……」
「春」
俺と春の部屋は隣接していて、お互いの部屋の窓から50センチほどしか距離がない。
幼い頃からこうして春の部屋の窓から、俺の部屋にたびたびやってくる。
小学校を卒業するまでは俺も春の部屋に簡単に訪れていたけれど、さすがに今は無理だ。
窓から顔を出して話すこともあれば、俺の部屋に来ることもある。
今日は後者だったのかもしれない。
いや、パジャマを着ているから……。
「眠れない?」
「うん……」
俺は心の中でこっそりとため息を吐いた。
これは滅多にないパターンの方。
高校が違う俺たちは、中学を卒業してから一緒に居る時間が極端に減った。
それを寂しがってか、春は幼い頃にしかしなかった……いわゆる添い寝というものを強請るようになった。
まずいのは男女だからというわけだけじゃない。
中学から……いやずっとずっと前から俺は春が好きなんだ。
幼なじみ以上の情は、自我が芽生えるころにはもう自覚していたと思う。
「……だめ、かな」
春は、俺たちがもう高校生で、立派な男と女だということもきちんと理解してるんだろうか?
春が持つ昔からの俺のイメージとしては、ただの幼なじみで、男だという認識すら薄いらしい。
まさか同じ布団で密着して寝て、ただの幼なじみに襲われる可能性なんか、小指の先ほどもないと思っているんだろう。
その壁を壊したい。
壊したいのに、春が怯える顔も悲しむ顔も見たくないから、俺は必死に自分を抑えこむ。
「……おいで」
俺はできる限り優しい笑顔で(春のいう、天使の笑顔ってやつだ)、春を布団に招いた。
「宗ちゃん、お風呂入ったばっかり?あったかいね」
「春が冷たすぎるんだよ。冷え症なんだから気をつけなきゃ」
「いいよ、宗ちゃんの体温奪うから」
キュッと春の滑らかな足が俺のそれを捕らえた。
この体温が風呂で温まっただけじゃないだなんて想像もつかない春。
「電気消すよ」
「うん、おやすみ〜」
眠れないなんて言っておきながら、俺の隣ですやすやと可愛らしい寝顔を見せる。
「……もう限界だよ、春」
ギュッと愛しい子の無防備な身体を包んで、ため息を吐いた。
「ねぇ、俺、言っていいかな?」
(あぁ、早く夜が明ければいい)
(あぁ、このまま時間が止まればいい)
すうすうと安らかな寝息をたてる少女を、我慢できずに胸に掻き抱いた。
(きみに伝えたい言葉)
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もうちょっと甘くするつもりが……!
理性と情の間で揺れる神さんを書きたかったのです。