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□WJ
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あたしは今とっても不安なんです。
ずっと好きだった花道に告白して、真っ赤な顔でOKをもらって幸せ絶頂期なはずなのに。


花道が高校で最初に好きになった子……晴子ちゃん。
花道は未だに晴子ちゃんと話すときは心底嬉しそうに話す。
もう失恋したのに、まだ晴子ちゃんが好きなの?
あたしが居るのに、まだ晴子ちゃんが好きなの?

晴子ちゃんは流川くんが好きなのに、花道は諦めてないのかな。


そう考え始めたら悲しくなってきて、2人が仲良く話してるのも見たくなくなった。

晴子ちゃん、花道の心を動かさないでよ。
花道、あたしの方見てよ。
おねがい!


泣きそうになりながら心の中で叫ぶと、花道は晴子ちゃんに手を振ってバイバイしていた。
けど花道はそのままあたしの方に来ちゃって、あたしは慌ててしまった。
こんな醜い気持ちのまま、花道の純粋な笑顔を見たくない。


「春ー!」
ブンブンと手を振る花道を無視して、あたしは駆け出した。
「春っ?」
追いかけてこられないように、全速力で駆け抜けようと地面を思い切り蹴ると、ずるっと転んでしまった。

廊下にはビタンッ!とかなり痛そうな音が響く。
というか実際かなり痛くて、思わず泪が出た。
「いったぁーい!」
「大丈夫か、春!」
あたしが叫ぶと、あたしに追い付いた花道があたしの膝にできた傷に、ふーふーと息をかけてきた。


「やだっ!」
せっかく心配してくれたのに、あたしはそんな花道に背を向けた。
「春……?」
「花道は晴子ちゃんにもそうしてた!あたしは晴子ちゃんじゃないんだよ……?」

春なんだよ。
そう口にしたらついに泪がぽろぽろこぼれた。

傷口が痛いの、だから泣いてるの。
胸が苦しいのは気のせいなんだ、だってあたしは花道の彼女で、晴子ちゃんに嫉妬しなくたっていいんだもん。

いいんだよ、ね?


うるうるとぼやける視界に花道を捉えた。
花道は訳もわからないまま混乱の表情をしている。

「春は晴子さんなのか?春は春だろ」
「そうだよ……あたしが花道の彼女なのに、花道は晴子ちゃんばっかり……!」

ぐいぐいと花道の胸に泣き顔を押しつける。
「あたしだけ見てよっ……」
晴子ちゃんじゃなくて、あたしと話して嬉しくなってよ。


そんなワガママをこぼすと、花道はさっきの何倍も顔を真っ赤にした。
「春!オ……オレは、オレの彼女は春だしっ、ずずずっと春だけ見てるぞっ!」


ガバッと強く抱き締められて、その頬の熱さを肌で感じる。


「これからもずっと、アイしてルッ!」
変なイントネーションでの告白も、身体中が熱くなるくらい嬉しかった。


(廊下で繰り広げられた愛の告白の後、たくさんの拍手で我に返った)
(湘北史上初の告白劇は、ずっと語り継がれたらしい)

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彼女ちゃんに嫉妬させたくて、花道にふーふーさせたかっただけです(笑)
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