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□WJ
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子狐がまた来ると言った約束の日、俺は街を走り回っていた。
理由はもちろん子狐を探しているからだ。


1時間ほど探しているけれど、まだ見つからない。
迷子になっているんじゃないかと思ったとたん、心配になって、気付いたら駆け出していた。
先生は相変わらず非協力的だったから放っておいた。


「まだ来てないだけなのかな……」
公園を覗いてみても親子連れしか見えない。
家に一旦帰って待ってみようと踵を返す。



「転んじゃったの?大丈夫?」
心配そうな声音が優しく耳に届いた。
「夏目……夏目が」
「ナツメ?」
「夏目が待ってるんだ、行かなきゃ」
そして聞き覚えのある声と、自分の名前。
声のするほうに向かうと、女の人と子狐が居た。

「うん、もしかしたらその人は君を心配してるかもね。けれどね、君が怪我をしていたら、その人はもっと君のこと心配すると思うなぁ」
しゃがんで子狐と視線を合わせて、優しく諭すように言った。
「だからね、手当てくらいはしていかない?迷ってるなら私も手伝うから」
まるで母親のようなそれに、子狐はこくりと頷いてその人に手を引かれ、近くの民家に入っていった。

そんなに長くはかからないだろうから、家の前で待つことにした。
十数分後、二人が玄関から出てきた。

「あの……」
「夏目!」
声を掛けた俺を見た子狐の嬉しそうな声と、走ってきた身体を抱きとめる。
「夏目……さん?」
「……はい、まぁ」
俺たちがどんな関係か訝しがるかと思ったけれど、その人はすぐに柔らかな笑みを子狐に向けた。
「よかったね、君のお友達と会えて」
「うん!」
「ありがとうございました」
「さようなら」


手を振るその人が、こんな温かい人が子狐を見つけてくれてよかった。
「良かったな、優しい人で」
「うん!でも夏目も……夏目も、やさしいよ」
「……そうか」
「うん、そうだよ」

あの人にもアヤカシが見えたのならば、なんて期待をした。
決して悪いばかりではないアヤカシを、あの優しさで包み込んでくれたらいい。
そう思って、ばかなことだと嗤った。

「夏目?どうしたの?」
「いや、なんでもない。消毒、痛くなかったか?」
「男子たるもの泣いてはいけないのだ!」
「えらいな」
くしゃりと頭をなでると、くすぐったそうにじゃれた。
「それに、なんだか母さまみたいだった……また会いたいな」
「会えるさ」
「本当?」
「ほんとう」


(きみにもみえるか、このぬくもりが)


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一応は、主人公さんも見える設定です。
子狐かわいいですよね!
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