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□菅原
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日高千晴は、菅原孝支が好きである。
それは烏野高校バレー部において周知の事実であった。
千晴の片想いの相手の菅原もその事実をしばらくは認めてはいなかったけれども、あまりにもわかりやすい千晴の態度に認めざるを得なかった。
そして遂に菅原が千晴の分かりやすすぎる好意に降参したのが先日のことだった。


千晴は、とてもわかりやすい性格をしている。
嬉しい時は際限なく花を撒き散らして喜ぶし、悲しい時は大きな瞳に涙を浮かべる。
悩んでいる時はこの世の終わりが明日に迫ったような暗い顔で思いつめるし、その悩みが解決された時は浮き足立つという言葉をこれほどまでに体現する人物はいないだろうというほどに普段からゆるゆるの頬をさらに緩ませてこの世に春が来たと言わんばかりに幸せそうな顔をする。
………これら全て、千晴が菅原を想っての行動であるのは、バレー部員は痛いほど身に染みている。

そして先ほどの言葉通り、千晴は遂に菅原と恋仲に至った。
そろそろ年の瀬ですねというこの頃に、新緑が目にも鮮やかな春が千晴の周りにだけ飛び交っている。
もう菅原先輩のこと諦めた方が良いのかなと完全に色の失せた表情で予備動作なしに大量の涙をこぼしていたはずが、一転してキラキラしたお花畑状態になったのだから、バレー部員も
混乱極まれりといったところだった。
しかし朝練時に菅原の姿を見かけるや否や、いつの時代の少女漫画のヒロインだと言わんばかりに真っ赤に頬を染めて、目を潤ませた。
そして菅原が千晴に気付き、「はよ!」と挨拶してくればわたわたと慌てて近くの長身である月島の影に隠れ、走り去りながら「おおおおはようございますぅぅぅ」という新しい形の挨拶をしてみせた。
その直後、バレー部全員に「やっと付き合ったのか(んですか)」と断定口調で言われれば、さすがの菅原も「やっぱバレバレだよなぁ……」と頬を掻いた。


それからはもう大変だった。
ただでさえ菅原にめろめろだった千晴は「彼氏になった菅原先輩」に余計熱を上げ、今までより『菅原病』をこじらせてしまった。
タオルを渡す時も指が重なれば顔を真っ赤にして慌てるし、汗を拭く菅原を盗み見ては胸をぎゅうっと掴んで何かを堪えているし、スポーツドリンクを飲む喉の動きにぼやんと見とれて
ばかりいる。
甘酸っぱい青春をこんなに至近距離で披露されては部員のメンタルも追いつかなくなる。(主に田中と西谷が、である)
そこで、手っ取り早く仲を進行させて千晴の「らぶらぶめろめろオーラ」を収束させてしまおうという計画が立ち上がった。
「ただ単に欲求不満でむらむらしてるだけデショ」とは月島の言葉である。
オブラートに包めよと説教したくもなるが、月島を説教するくらいならばその不埒なオーラをしまえと千晴に言いたくなる気持ちの方が強かったのでやめておいた。


「だから、手を握んだよ」
「うぇぇっ!?て、手でひゅか!?」

驚きのあまり噛み噛みの千晴のウブさ加減にいい加減苛つくわ―と思いながら田中は頷く。
「おう!恋人つったら、まずは手をつなぐ!んでキスする!そしたら最後はアレだろ!?めくるめくやつ!!」
「めっ、めくる……!?」
「こら、田中」
「うごっ!?」
脳天に澤村のゲンコツを喰らった田中がごろごろと床を転がりまわる。
「最後のは忘れろ。でもま、最初のはあながち間違ってないんじゃないか。好きな奴の手を握りたいって思うだろ」
「えぇっ、で、でも僕、汗っかきだし、す、すすすがわらせんぱいの、あんなかっこいい手に触られたら、ぼくぜったいしんじゃいます」
妄想しただけで首まで真っ赤に染める千晴に澤村は嘆息する。

「俺たちもお前らの恋に横槍を入れたいわけじゃないんだけどさ、菅原に見とれて時間図り忘れてたり、スポドリの希釈間違えたり、ボールにつまづいて転んだりされるとちょっと困る
んだ。このままじゃお前らが気になって、正直練習どころじゃない。この状態が続けば、日高のスガ病が収まるまで部活来るの禁止にするぞ」
「う……ごめんなさい、皆さんに迷惑を掛けて………。わ、わかりました!僕、頑張って菅原先輩に慣れます!」
真っ赤な顔で決意表明をしてみせる千晴にニヤリと人の悪い笑みを見せた澤村と田中が、「それじゃあ慣れてもらいましょうか」とどこで待機させておいたのか菅原を連れてきた。

「っ、ひゃぁぁっ!?す、すすが、き、きいて……!?」
「あー、うん。まあ……悪い」
「あ、ちなみに今日の放課後と明日の休みは部活ないから、それまでに存分にくっつきまくって慣れろよ」
じゃあな、と達成感を漂わせて二人は去っていった。


「うーん……。とりあえず、帰ろっか」
「は……はい」
カチコチに固まったまま千晴が菅原の後をついていく。
「えっと、俺んち来る?」
「ひぇっ!?そ、そんな、せんぱいのおうちにおじゃまするなんて、」
「確かに俺んちはちょっとハードル高いよな、千晴的にも……」
「あっ、あ!あの、うち、来ませんか?その、今日は親も居ないし、せ、先輩もゆっくりできると思いますしっ」
「えっ?」
「えっ?あ、いえ、その、僕の家なんかより自分のお家の方がいいですよね、ごめんなさ……」
「いや、そういうんじゃないんだけど」

親が居ないなんて言われると、そういうことが100%ないとわかっていても身構えてしまうのは何故だろう。
しかも千晴はそのことに気付いていないなんて羞恥のダブルパンチだ。
これだから天然は……!と菅原は少し悔しさを覚える。
「千晴ん家行ってもいいなら、お邪魔したいな、俺」
「っ!はっ、はい!ぜひどうぞ!!」
きらきらと眩しい笑顔で言われれば菅原も嫌な気分にはならない。
澤村にもいい加減あのオーラ消させろと脅された手前、何もしないわけにはいかないだろうと菅原も思っていたところだ。
この1日半を使って少しでも自身に慣れて欲しいのは菅原の本心でもあったから、今回の企画はちょうど良かった。


「き、きたないんですけど、どうぞ……」
男子高校生らしく、読み捨てたであろう雑誌と今日の朝の抜け殻であろうパジャマのある適度に乱雑な部屋に菅原もどことなく安心した。
千晴がお茶を持ってくる間にパジャマを畳んでベッドの上に置き、雑誌も本が積み重なっているところの一番上に置いておいた。
暖房を入れた部屋で冷たい麦茶を飲むのは贅沢だなぁなんて思いつつ、菅原はさっさとミッションをこなすかと心を決めた。
実際、菅原もたいして彼女やら好きな子が居た経験などないが、相手がここまでテンパッていると自分が落ち着かなくてはという一種の使命感のようなものに駆られる。
もちろん千晴のことが好きで付き合っているのだからそれなりに緊張はするけれど。

「………手、繋いでいい?」
「っ!?ごほっ、ごほっ!!!」
「あ、悪い!大丈夫かっ?」
麦茶を飲んだタイミングで話しかけてしまい、千晴は驚いて噎せてしまった。
背中をやさしく擦ってやり、涙目になった千晴に心臓を突き破られそうになりながらも菅原は耐えた。
「えっと、気を取り直して……手、繋ごう」
「っ、は、はい……」
緊張に震える指先は驚くほど冷たくて、菅原はついさすって温めるように千晴の手を握った。
「あは、そんなに緊張するなよ。まあ、俺も緊張してんだけどさ」
「え……?菅原先輩も……?」
「そりゃするベ。好きな子の手ぇ握ってんだもん」
「す、すきな、子………」
ぶわわっと千晴がゆでだこになるのも構わず菅原は話を続けた。
「言っただろ?同情とかなじゃなくて、ちゃんと千晴が好きだって。だからさ、俺に見とれてくれたりすんの、ほんとは嬉しい」
「……?」
「えーと、何て言えばいいのかわかんないんだけどさ。千晴の顔見てると俺のこと本当に好きでいてくれるんだなってわかるんだ。だからもうちょっとこんな風にお互いドキドキできる時間も大切にしたいんだけど……。部活に支障をきたすわけにもいかないし」
「……っ、す、すみません!僕がきちんとマネージャー業務をしないせいで菅原先輩にまで迷惑を掛けてしまって……」
「だから、俺は嬉しいんだって!でも千晴が転んだりして怪我するのは危ないからさ、俺の顔を見慣れるくらいには免疫つけて欲しいなって」
ぐい、と顔を近づける菅原に千晴は握っていないもう片方の手で顔を隠す。
「あ、どうして隠すんだよー。付き合う前なんて全然そんなことなかったのに、どうしていきなり顔が見られなくなったんだ?」
「だ、だって……!前は100%かっこ良かったけど今はなんていうか、200%かっこ良く見えて、僕の好きな人も僕のこと好きなんだって思ったらどうしようもなくて……!!」
かっこいいだなんて言われてこんなに恥ずかしがられて舞い上がらないわけがない。
本当に千晴は俺のことが好きだよな、なんて勘違いなどでは決してない事実に頬が緩んで仕方がない。
「んじゃ、ショック療法な」
「え……?」

いきなり千晴の身体が拘束され、首筋に当たる髪がくすぐったく、耳もとで聞こえる菅原の声に軽いパニックに陥る。
「これで慣れて」
耳元で囁かれてはただでさえキャパシティオーバーの脳みそが更にヒートアップして情報処理速度が大幅にダウンする。
一瞬、本当に自分の身に何が起こったのか理解できなかった千晴は、理解した途端に気絶したいと思うくらいの羞恥に見舞われた。
「ははっ、バクバクいってる」
「っ〜〜〜〜………!!」
本当に、もう許して下さいと言いたいのに胸が詰まって何も言えない。
呼吸をするのも一苦労で、息を吸ったら吸ったで菅原の匂いや体温が感じられてしまうからいっそもう一息に殺してくれと千晴は誰かに祈る。

「ほら、な?」
千晴の手を取り、自分の胸に当てた菅原も顔を赤くしながら笑っている。
「せ、ぱ………」
「ん?」
「じ、自分の指までドキドキしてるから、せんぱいのしんぞうのおと、わかんない……」
もうこの爪の先まで細胞全てが熱を帯びて、菅原に焦がれて、苦しいと叫び声をあげている。
自分の指なのにまるで感覚がなく、耳元でドンドンと何かが鳴らされているような音ばかりが耳につく。

「…………っ!その、不意打ちヤメロ……」
「、え?」
「あーもー、可愛すぎ」
「ええっ!?」
「てかとりあえず、やばい。恥ずかしい。でも離したくない」
自分の何が菅原の琴線に触れたのかが全く理解できなくて、でも菅原は熱の篭った息を吐くものだから更に千晴の心臓を熱く煮えたぎらせる。
「と、とにかく俺たちのドキドキが治まっ
て照れなくなるまで、こうしてよう」
首肯すると菅原も安心したように笑ったから、取りあえず目を瞑って心音に耳を傾けることにした。
まだまだ全然自分の心音しか聞こえないけれど、もう少しすれば菅原の心音を聞き取れるだろうかと考える。
この心臓の音が治まったら菅原が今度は顔を見つめようと思っていて、それにまた馬鹿みたいに心臓を鳴らす未来はあと1時間後。


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スガさんが大好きすぎてやばいです!!!!スガさんこんな性格じゃないよ知ってるよでも私がこの話を通して言いたいのはスガさんありえないほど男前で天使でくっそもう心臓止まるぜこの野郎どうにかしてくれこのパッション!!!!ってことなので生温かい目でみてくださいってことです。
最初に書いたスガさん夢を読み直してみたらありえないほど暗くて救いのない話で、「一番最初に書いた話がそのキャラの本質だと思っている部分?」というのを昔聞いたことがあって
、えっ私スガさんちゃんとプラスの意味で好きだよね?と心配になったのであほみたいに明るくてスガさん一途な主人公を書こうとしたらこうなった!!キスもしないいちゃっぷる話な
んて久しぶりに書いた気がします。
薄暗い話は書きなおそうかくしゃくしゃに捨てようか迷い中……。


以下は気持ち悪いスガさん愛吐き出し。
一年大好きスガさんも大地さんと天然夫婦なスガさんもみんなのオカン的存在の母性溢れるスガさんもめちゃくちゃ愛おしくて仕方がない。これもアニメ2クール目のスガさん祭のせいだよ大地さんと田中さんと旭さんとツッキーとノヤさんに愛のムチ(?)をするスガさんのシーンをあほみたいにリピート再生していました。
というかしぶでスガさん関連のタグをありえないほど探しまくってたらいつのまにかアニメも終わっちゃってほんとに咽び泣いた。何度このアニメで泣いたことか……。
というか、HQ夢にそんなに食指が動かないのはみんなちゃんとほんとに高校生らしくバレーに一生懸命でキラキラしててこんな汚れた大人が彼らの青春を穢していいのだろうかという罪
悪感に見舞われるのもある気がしてなかなかネタが思いつきません!!!(号泣)いや、妄想してめっちゃ書くつもりだけど!!!
潔子さんクラスタでもあるせいで、しぶ巡回が
途中からスガさん→烏野三年→烏野+潔→菅潔からの及潔からの岩潔という謎の流れに持って行かれて潔子さんに悶えていました。及潔!!やばい!!いやでも菅潔の微笑ましさまじプライスレス!!!ってなってもうお前ら早く結婚しろぉぉぉぉぉぉぉとパソコンの前で死んでました。
ていうか潔子さんじゃがりこ好きなの私も好きだよ一緒にじゃがりこ食べようよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!
あれ?結局最後は潔子さんの話………。

潔子さんの弟くん(捏造)と誰かを絡ませたいんですが誰が良いでしょうか(適当すぎる投げかけ)。
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