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□凛
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・自分で書いててよく分からなくなったギャグ→シリアス→仲直り
・まこはる、宗凛要素あり


携帯が着信を知らせて騒ぐ。
凛が相手を確認することもなく電話に出ると、『凛ちゃんサイテーだよっ!!』とよく通る渚の高い声が鼓膜に突き刺さる。

「はぁ?なんだいきなり」
謗られる覚えはないぞと眉をしかめる凛。
『千晴ちゃんから聞いたんだからね!凛ちゃん三股かけてたなんて見損なったよ!』
「はぁぁぁ!?」
全く身に覚えがない。三股どころか凛は幼馴染み兼年下の恋人に溺愛三昧だというのに。

『とにかくっ!今すぐハルちゃんちに集合!』
ぶちっと通話終了の音がする。
渚の「今すぐハルちゃんちに集合」はたいてい些末なことなので行かないことも多いが、話題が千晴のこととなれば話は別だ。
この誤解を解くのは大変そうだ。長くかかりそうだと凛は念のため外泊届けを出して寮から飛び出した。



七瀬家の居間に上がると、真琴の肩に顔を押し付けている千晴がいた。ご丁寧に怜までいる。

「あっ!凛ちゃん!」
「……来たぜ」

凛の声に反応した千晴は顔をあげて凛を見やると、予備動作もなくぼろぼろと大粒の涙をこぼした。
「お、おい、千晴っ?」
「りんのうわきものおおおぉ!!!」
うぇーん、と小学生みたいに大きな声をあげて千晴は畳に突っ伏す。
こんなになりふり構わず泣く千晴を数年ぶりに見て、凛は慌てた。

「お、落ち着け。な?浮気なんてしてねえから」
「う、うそだっ!おれを置いてきぼりにしてハルくんとオーストラリア行ったくせに!」
「いや、置いてきぼりにしたつもりは……。くさってるハルをどうにかしたかっただけで、」
「同じベッドで寝たくせに!」
「おい、ハル!千晴には言うなって言っただろ!」
「………」
遙お得意の無言に凛は苛立つ。

「部屋に入ってからベッドひとつって知ったんだよ!もちろんフロントに抗議した。けど、満室だし文句あるならキャンセル料払って他行けとか言われるしよ……。金もないし、仕方なくだ」

自ら望んでそうなったわけじゃないと力説しても真琴と渚という高すぎる壁に遮られて、千晴に触れることすらできない。
因みに怜は凛と千晴が付き合っていることを知らなかったために硬直している。


「オーストラリアのホームステイ先とか、よく行ったプールとか公園とか、美味しいハンバーガーショップとか連れてってくれるって言ったのに……全部ハルくんと行ったっていうし……」
渚に抱きついてさめざめと泣く千晴の頭をよしよしと撫でて、渚は凛をねめつける。

「完全に浮気デートだよそれは!」
「ちっげぇよ!!」
「ハル、ハンバーガー美味しかった?」
「あぁ」
「そっか、良かったね」
「お前ら、いちゃついてんじゃねえ!」
凛のわだかまった怒りをばかっぷるにぶつけても、二人はマイペースにのほほんとしていて更に苛立ちが増す。



「寮の人とも浮気してるし……」
「寮の人ぉ?」
全く検討のつかない凛は天井を見上げて鮫柄の親しい奴らの顔を思い浮かべる。
「凛のこと溺愛してる似鳥くんだって怪しいなって思ってたのに……。だから寮なんてだめだって言ったのに凛は勝手に決めるし」
だんだん拗ね始めた千晴は、散々凛を詰ったネタをまた持ち出してきた。

「だから、愛は違うって言ってんだろ。俺の泳ぎが好きって言ってくれてるだけだ」
真琴と渚の壁をかいくぐって凛が千晴の肩に手を置く。


「似鳥くんとのことはちゃんとわかってる。でも……宗介くんだよ!」
「宗介?」
ようやく泣き止んでいたのに、千晴はまた目尻にたっぷりと涙を溜めて、
「宗介くんとしょっちゅうえっちしてるって言ったんだろ!!寮の同室だっていうからおれずっと凛のこと心配してたのに!!うわきものおおおぉ!!」
うわぁん、とまた真琴に抱きつく千晴。

「………は?」
宗介と?した?そんなこと言った覚えは微塵もない。
恋人がいるのにそんなことするわけがない。
そもそも宗介は友達だし、宗介と……と考えただけで鳥肌が立つレベルなのに、セックスなんでするわけないだろう。
しかも、しょっちゅう?

「何かの勘違いだろ、それ。誰が言ったんだ?」
「ハルくんが……」
「言ってただろう、オーストラリアの海で」
「言ってねえよっっ!!」
「『俺なんかしょっちゅう宗介としてるぜ』」
棒読みの再現に、凛は猛スピードで過去の記憶に検索をかける。
しょっちゅう宗介としてること……。オーストラリアの海……。

「喧嘩のことだ!!お前だって、真琴とは初めてとか言ってただろ!」
「………そうだ。初めて、だった」
ぽっと顔を赤らめる遙と真琴はあからさまなピンクオーラを放ち、もじもじとお互いを盗み見あっている。
「まこちゃんとハルちゃんの初えっちの話は今はいいの!それについてはまた明日緊急集会するから!」
「遙先輩と真琴先輩が……」

ようやく口を開いたと思ったら怜はまたもや予想外の事実を知って硬直している。


「宗介くんとしょっちゅうしてるんだ……おれなんて学校違うからなかなか会えないのに、同室の手近なオトコとえっちしてるんだ……」
千晴から出た衝撃的な言葉にむせる凛など誰も気に掛けず、可愛い可愛い幼馴染みを慰めるのに皆必死だ。

「だから、してねぇって!なんなら宗介に聞けばいいだろ」
身の潔白の証明など簡単だ。
いくら腹を探られても弱味がなければ痛くも痒くもない。


「……ほんと?」
泣き腫らした目で見つめられた。
甘やかす時と同じ仕草で、千晴の髪をかきあげる。
「俺が千晴に嘘ついたことあんのか」
ふるふると首を振る千晴に微笑んで手を頬まで下げると甘えるように擦り寄る動きがたまらなく愛しい。

親指で目尻の涙を拭ってやれば、腫れてひきつるのかきゅっと目を閉じたので、唇をそっと触れさせた。
「ぱんぱんに腫れてんじゃねえか。どんだけ泣いたんだ?」
「……凛のせい、だもん」
「はは、すげーぶさいく」
「凛のせいだ!!」

馬鹿!と千晴が凛の胸を叩くと、その腕ごと引っ張られて千晴はそのまま凛の腕に抱え込まれる。
「そうやって、一番に俺に怒れよ」
こんな風に、凛が知らないところで泣かれるのはごめんだ。
「俺が悪かったら謝るし、誤解だったらちゃんと千晴が納得するまで説明する。だから、俺じゃない男の前で泣くな」


真琴に身体を預けて頼っている千晴を見て、悔しかった。
どうしたって住む場所が違う自分は幼馴染みたちより早く千晴のもとに駆けつけることはできないのだ。
こうやって悩んでいる千晴の様子すら、渚に知らされるのは正直いただけない。


「どんなに下らないことでも良いから、すぐ電話なりメールなりしろ」
彼氏らしくかっこつけさせろ、と千晴の鼻を噛むと千晴は痛いよなんて言いながら頬をゆるめた。

「どんなに下らないことでも?」
「おう」
「そんなこと言ったら、携帯手放せなくなるぞ」
「それで千晴が喜ぶならいいんじゃね」
「意味ない変なメールしてやる」
「それは無視する」
「…………」
「嘘だから睨むなって」


ジト目で凛を睨む千晴の額をつつく。
「キスしてくれたら、信じる」
何度もキスしてるしそれ以上に色っぽいことだってしてるのに、千晴はいつでも凛からの口付けにドキドキしている。
無意識にかぺろりと湿らせた唇がいやらしくて、凛は軽口など言う間もなく唇に噛みついた。

実はこれがオーストラリアから帰ってきてから初めての逢瀬で、久しぶりのキスに凛も舞い上がっていた。
千晴が喜ぶ場所を舐めて食んで吸い付く。
うっとりとその甘さに酔う千晴に当てられて、ここが遙の家でなければ襲っていたのにと内心で舌打ちをした。

空気を読んでいつのまにか退室していた幼馴染みたちに感謝する。(まあ、渚あたりは聞き耳を立てているんだろうが、そんなことより目の前の可愛い恋人のが大事だ)



渚にも聞こえないように千晴の耳元で囁くと、千晴は破顔して凛に擦り寄った。



>>>
初凛ちゃん話が、11話ネタになるとは思いもよりませんでした……。
あんなにキワドイこという凛ちゃんが悪い!
しょっちゅうなんですか!!!
そしてハルちゃんは初めてなんですか!!!
腐ィルターって恐いですね……。

11話見てすぐ書いたんですが、あげ忘れているうちにアニメ終わっちゃいました……。
 

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