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□翔
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・なっちゃんが出張ってます


「那月、キスしたことある?」
「はい!両親とエリザベス、それに猫ちゃんにうさちゃ、」
「いや、そういうんじゃなくて。愛する人にするやつ」
「愛する人……ですか?ありません」
「まじ!?」
「はい。本当ですよ」
「よし!俺たちは仲間だ!じゃあ、もちろんキスマークを付けたこともないよな?」
「ないですねぇ」

漢の友情を確かめるべく一方的に那月と抱きしめ合う。
まあ、俺のがちっちゃいから抱きついてるようなもんだけど。


「まあ、那月がないなら翔もないよな!」
「なんだそのにっこりスマイルで失礼な断言!バカにすんなよ!」
「え、もしかしてあるの?」
「だからその有り得ないんだけどみたいな驚き方やめろ!」
「白状しろよ。ないんだろ?」
俺が翔の肩に手をかけると、鬱陶しいことこの上ないと言いたげな翔が胡乱な目を向けてくる。

「ないけど別に恥ずかしくなんかねぇぞ。早ければいいってもんでもないだろうし」
「そうだよな、翔はどちらかというとされる方っていうか」
「はぁっ!?」

「ということで!那月!キスマークの練習しようぜ!翔で!!」
「はぁぁぁぁぁぁ!?」
「いいんですか!?」
「いや、良くねぇし!意味わかんねぇから!やるならお前らで勝手にやれよ!俺を巻き込むな!」

語気荒く翔が反論するけど、そんなの無視無視。
「翔……キスマークの練習台になるのとキスの練習台になるのどっちがいい?」
今までで一番意味がわからねぇと言いたそうな翔は、開いた口が塞がらないという言葉がまさしくこの状況のために存在していると思わせんばかりにあんぐりと口を開けている。

「キスマークの練習台を拒めばもれなくキスの練習台として唇を奪われることになります」
鹿爪らしく敬語を使うと殴られた。
「あいだっ!」
「馬鹿かお前は!?」

「けちぃー!なぁ那月?翔ちゃんの白くてすべすべな首にキスマークつけたいよな?翔ちゃんにキスマークつけたら、もっとずーっと可愛い翔ちゃんになること間違いなし!」
「本当ですか!?」
「乗せられてんじゃねぇぇぇ!」

脱兎のごとく逃げを打つ翔だけど、そんなもん俺には効果はない!
「那月っ!」
「らじゃ〜!翔ちゃ〜ん、捕まえたぁ」
「やーめーろぉぉ!はーなーせぇー!」


じたばたしても鋼鉄の身体を持つ那月には敵わないのだよ、翔クン。
「翔。いい加減黙らないと……」
「な、なんなだよ」
「有無をいわさず唇コース突入だよ?」

両手で頬を押さえて吐息が唇に掛かるほど近くで囁いて、人の悪い笑みを作る。
翔はきゅっと目をつむった。

翔のキス待ち顔ゲットー。
でも言ったらまた暴れそうだから黙っておこう。


「ということで!那月、まずは俺からやってみるな!」
「はい!頑張ってくださいね!」

首筋に顔を近づけると髪が当たったのか、びくっとおののく翔。
思わずくすっとすると、翔は真っ赤な顔で俺を睨んだ。

「いくよー」
少し唇を開いて翔のハリのある肌に吸い付いた。
少し強めに吸えばいいんだよな、確か。

数秒だけそうして、パッと離す。
「あっ!ついた!」
「本当ですか?わぁ、くっきり残ってますね」
「初めてにしては上出来だと思う!」
「自画自賛すんな、あほ……」
「翔!どんな感じだった?痛かった?気持ちよかった?」
「気持ちいいわけあるかっ!ちょっとちくっとしただけだ」


気持ち良くなかったのか、ちょっと残念だな。
「はい、じゃあ那月の番!」
「はーい。行きますよぉ」

ガバッと翔に抱きついて、吸い付いているであろう那月。
「いでででででで!いってぇよ、離せ馬鹿!」

翔が那月の肩と頭をバシバシ叩いて暴れた。
さすがに頭は痛かったのか、那月もすぐ離した。

「い、痛かった?ごめんね翔ちゃん」
「ふっざけんな!彼女にこんなことしたら確実に嫌われるぞ!ド下手!」
相当痛かったんだろう、翔はどんどん言葉を投げつけてくる。


「鏡、鏡っと……うげっ」
「これはキスマークに見えないな。ぶつけたみたいだ」
「翔ちゃん、ごめんね……?」
悲しそうに目を伏せる那月を見てさすがに言い過ぎだと思ったらしく、翔も言葉を濁らせた。

「反省してんならいいけど。とにかく、本番はもっと優しく吸えよ!」
「うんっ!頑張ります!」
「でも俺にはもう絶対すんな!」
「えぇっ?でも練習しなくちゃ本番にうまく出来ないよ?」

きょとんとする那月に呆れる翔は、いきなりの衝撃に情けない声を出した。
「ひぇっ……な、何だよ千晴」
「那月の方がなんか所有印っぽい!ずるい!俺ももう一回やる」
「ばっ、やんなこら!って、おいちょっ、ひっ、ななな舐めるなっ」
れろれろと舌先で舐めあげて、また強く痕を残す。

「んっ」
「よーし、俺の方がキスマークっぽくて綺麗!」
「本当ですね。翔ちゃんの白くて綺麗な首筋にぴったりです」
「だろ?じゃあ翔、もう俺以外にキスマーク付けられちゃダメだからな!」
「だから、意味わかんねえっつうの!音也にでもつけてろばか」
何故だか悔しそうに歯噛みする翔。
「翔にしかしないよそんなん」
「はっ!?」
「好きな奴にしかするわけないじゃん!」
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

俺の大胆発言に翔は今日一番の茹で上がった顔を見せた。
「れ、れれれんしゅうとか言ってただろっ!本番のためのただの練習なんだろ!?」
「うん。練習だけど、本番も翔のつもりだけど」
「い、いみわかんねぇし!」
「え?翔、マジで?……那月、俺の告白伝わらなかった?」

「千晴くんって一途なんですねぇ。翔ちゃんがだぁいすきなんだなって思いましたよぉ」
「だよなっ。ってことで、那月はもう翔に抱きつくの禁止な!俺が嫉妬の炎でメラメラしちゃうから」
「えぇっ、でも翔ちゃんをぎゅーってするのはとーっても気持ちいいんですよ?」
「どーしてもって言うんなら、俺に抱き着けばいいよ」
「わあ、いいんですか?嬉しいなぁ」
えへへーとお花ちゃんコントをやっていると、天性のツッコミの才能の持ち主である翔が本領発揮してくれた。

「って、全然話逸れてるだろうがっ」
「え?だって、好きな人が違う奴に抱きしめられてるなんて嫌じゃない?」
「そ、そんなんだったら、千晴が那月に抱きしめられてるの見て、俺が何とも思わないわけ……っ、」
がばっと翔が手のひらで口を覆う。

「それって、もしかして、翔も俺のこと……好きなの?」
「ば、ばーかちげぇし!」
「わーい!那月、俺、両想いだったよ!」
「良かったですねぇ」

那月とハイタッチして喜びあって、翔に抱き着いた。
「わわっ!?な、何どさくさにまぎれて……」
「翔。じゃあ、キスの練習してもいい?まあ、これも本番は翔とする予定なんだけど」
俺の胸元で俯く翔のつむじすら可愛いと感じる。うーん、末期だな。





「……練習じゃないなら、してもいいぜ」
「ん?ごめん、聞こえなかった」
「お、お、お前なっ!」
バッと俺を見た翔との顔の距離が近くて、思わず見つめてしまった。
……キスしたいかも。

俺のそんな思いが伝播したのか、翔は少しだけ目を泳がせて迷った素振りをしたけれど、意を決したように背伸びをした。
さっと掠める程度の熱が唇に触れて、俺は何が起こったのかわからずに呆然とした。
「本番なら、してやってもいい」
プイっとそっぽを向いてしまった翔の赤い頬と、首筋の痕がとてつもなく色っぽくて。


「翔、かわいい……もう一個キスマークつけてもいい?」
「もう、いいだろって……んっ」
翔の声に色気が増したような気がして、思春期真っ盛りの俺は止まれそうになかった。
「翔、翔……っ」


がっつきそうになった俺を止めるかのように、那月が突進してきた。
「翔ちゃんも千晴くんもとーーっても可愛いですっ!ぎゅーーーっ」
「いででででっ!だーきーつーくーなぁーっ!!」
「僕、決めました!二人がやきもちを妬いちゃわないように、二人ともいっぺんに抱き着きますね!」

良い表情の那月に毒気を抜かれてしまい、俺と翔は顔を見合わせて苦笑したのだった。




(つうかさ、那月が俺に抱き着くのすら嫉妬するとか言ってたくせに、どうして一緒にキスマークつけようとか誘ったんだよ)
(だって、いきなり俺がキスマークつけたいとか言ったら明らかに不審な目で見られるじゃん!そうしたら振られそうだろ?)
(いや、実際あんなこといきなりされた方が失敗する確率高いだろ……まあ、結果オーライみたいなもんだけど)
(そうだよな!翔も俺の事好きだもんな)
(そうやって恥ずかしいこと言うなよ、ばか!)



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どうしてもギャグっぽくなってしまうよ……。
キスマークネタ第二弾。翔ちゃんえろい!
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