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あぁ、オレはこの世で一番のクソ野郎だ!
どんなに不安だったからって、その気持ちを押しつけるようにぶつけるのは間違ってた。
『ハルちゃんに嫌われてると思っていた』
だなんて、紳士ならばまず言わない言葉。
君はキョトンとしてから、
『そんなことないよ、サンジくんのこと大好きだよ』
屈託のない笑顔でそうフォローしてくれた。
そしてオレは後悔のドン底に居る。
恋人でもないやつに、あんな台詞言われたくもないだろう。
面倒くさいやつだと思われただろう。
あの後の夕食どきにも、ハルちゃんはいつもと変わりなかった。
大丈夫だろうか。
ハルちゃんとの楽しい関係を壊したくはないんだ。
そうして悶々したまま、明くる日を迎えた。
みんなが起きてくる前の朝食の準備に追われて、忙しなく動いていたから変なことは考えなかった。
いつもより数十分早く、ダイニングの扉が開いた。
盛り付けをしながら視線を注ぐと、そこにはオレの意中の女のコ。
「サンジくん」
「おはようハルちゃん。よく眠れたかい?」
昨日の雰囲気を出さないように、オレは努めて明るく声を掛けた。
「ううん」
「寝不足はお肌の大敵だぜ?」
鹿爪らしい口調で言ったら、ハルちゃんはぽつんと言葉わ洩らした。
「昨日のことが気になって。あたしは1回も嫌いだなんて思ったことないのに、どうしてサンジくんはそう思ったのかなぁって、気になって眠れなかった」
ほとんど息吐く間もなく告げられ、圧倒されたオレは沈黙を保った。
しばらく二人とも黙って、それからヘラリと微笑みあった。
「気に病ませちゃってごめん」
「ううん。あたしが単に伝えたかっただけだから」
言葉にしないまま勘違いされて、仲違いするのはイヤだから。ちゃんと言葉にしたかっただけだから。
「それって……」
「?」
行き着いた答えを問おうとしても、君は気付いていないらしい。
「いや、何でもない。伝わったから、ありがとな」
くしゃりと癖のない髪を手櫛で梳くと、手がジンと痺れた。
今さら初恋をしているようで、恥ずかしくなった。
今はまだこのままで良いか、と気付いた答えにそっと蓋をした。
そう遠くない未来のおもはゆさに、オレははにかみを堪えることができなかったが。
(君自身が気付いてくれたら、最高なんだけど)
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友人に「嫌われてると思ってた」と言われたので、そんなことないよと言う半実話(´∀`;)
ちゃんと言えば良かったと思って、主人公ちゃんに代わりに言ってもらいました。
題:確かに恋だった