リク、キリ番etc
□寂しい夜
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ガチャッ。
ドアに鍵を差し込む音がして、野分の帰宅が分かる。
本に夢中になって気付かなかったが、時計を見ると、もう1時になっていた。
待っていられないから、リビングの扉を開けた。
「ヒロさん!!」
リビングの中に入った野分は、俺に抱きついてきた。
仕事で疲れているはずなのに、強い力で抱きしめてくる。
温かいな……。
離れたくないから、野分の服をひっぱる。
「ヒロさん、待っててくれたんですね。寝てても良かったんですよ? 俺、すごく嬉しいです」
腕の力を少し緩めて、野分が言った。
……先に寝ていたら、野分は絶対に起こさない。
朝起きて、朝食と、『行ってきます』と書かれたメモが置いてあるテーブルを眺めるのは、寂しいんだ。
そんな日が何日も続いたから、今日は起きて、野分の帰りを待っていたのだ。
絶対に家には帰っているはずだから、待っていれば会えると思ったから。
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