復活

□笑顔
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「ねぇ骸君。」

にっこり、と笑って、ボクは骸君に呼び掛ける。


追い詰められた骸君は、随分面白い姿になっている。

自慢の右目を傷付けられて、目論見外れてココから脱出する事も出来なくて。

為す術もなく、ボクにいいようにあしらわれて。


今、ボクの前に跪いている。


とっても面白い。

けど、ちょっぴり物足りない。

無表情、なんだ。



「骸君骸君。」



何の反応もないから、しつこく呼び掛けてみる。


ようやく、きろり、とボクを見た青い左目は濁った冷たい光を帯びている。


わぁ怖い。


最初の余裕たっぷりな嘘臭い笑顔はドコへ行っちゃったんだろうね?


反抗的なのが変わんないのはいい事だけど。


「降参、は…しないよねぇ」


まぁしたところで無意味って奴だけど。

自分の言動の矛盾に、ふふ、と、つい笑みを溢す。


「………。」


骸君は、やはり無言でボクに冷たい視線を送るだけ。


うーん、反応薄いなぁ。


そう言えばさっきから全く喋らなくなっちゃったし。


「ねぇ、何で黙ってるの?」


つまんないじゃん、と言うと、ふいっと顔を逸らされた。あーぁ。


「あ、僕とは口ききたくないって事?」


するとぴくり、と微かに反応した。



ん?




顔をそっと覗き込むと、




「…何笑ってンの、」



骸君は、…これは思い出し笑い、なのかな?笑っている。

しかも、ボクに見せた、あの不敵な笑みなんかじゃなく、


幸せそうな、微笑み。




へぇ…そんな顔、するんだぁ…







 キ モ チ ワ ル イ 。







す、と脚を上げて、若干油断している骸君の横っ面を思いっ切り蹴り飛ばす。

骸君は顔面から壁に激突した。

うわ、いったそー。
右目怪我してるのに。


「ッ!…ぐっ…ぁ…」


「あ、ゴメンゴメン」


へらり、と笑ってみせる。



…巧く笑えなかったな。



まぁいいや、そういう事もある。



 
骸君が、ぎこちなく身を起こす。

押さえている右目辺りから、またボタボタと血が垂れている。
あーぁ、一旦は止まったのに。

骸君は痛みを堪えているせいで息が荒い。

 

そしてボクを睨み付けるその目は怒り狂っていた。





ふふ。




その形相を見て、ボクは嬉しくなった。


「怖いなぁ」


やっぱりさ。


ボクは笑顔なんかより、怒ったり泣いたりしてる顔の方が好きなんだ、面白いから。


相変わらず口はきいてくれないみたいだけど、いいや。



骸君の素敵な表情が見えてきたし。


こっから先は、もう笑ったりしなくていいようにしてあげるから。














(だって君には、)






笑顔なんて似合わないよ!











(笑ってる顔じゃなくて)


(掻き乱された君の顔がみたいの)





















君には笑顔なんて似合わないよ!って言葉を言わせたかっただけです、すみません。


骸が途中でにやけたのはアレです、10年前に雲雀が「君とはもう口をきかない」って言ったのを思い出したんです、キモチワルイですね!





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