novel。tears

□線香花火
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「屋上遠いよぅ…」





『…』




「ゆぅちゃん…?」





ゆぅちゃんが黙り込んだ。




「どうしたの…?
…先輩…?」




『いち。俺さ,
地方の大学を受験するんだ。』





「ぇ…。」



手に持っていた花火を


あたしは屋上に

散らかした。





何もいってくれなかった…



なんで…?









「そっか…。ゆぅちゃんが決めたならね、
がんばってね!」






そっか…


あたしは彼女じゃない。




だから、なにも


教えてもらう事も


ない。




『市菜…。俺…。』




「だめだょ,そんな顔して。なんでゆぅちゃんが
泣きそうなの?」





笑いかけた。



あたしが泣きたい。



離れていくあなたに


なにもワガママも言えないから。



“そばにいて。
一緒にいたい…”って



言えないから…




「ゆぅちゃん…,
花火しよぅ?」





8月の終わりに

マンションの屋上で


小さな花火が煌めく。




最後の線香花火に


あたしは


“好きだったょ。”


と言葉を込めた。




火の玉が落ちたとき



あたしはゆぅちゃんに


さよならを言った。






“ゆぅちゃん,好きだったょ。”





あなたに会えて


幸せでした。



線香花火みないな

熱い雫が


頬を流れた。








end

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