*ガンダム00*
□カーディガンと指先
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スメラギの部屋に入って鍵をかけたあと、彼女が貸してくれたブラジャーを身に着けようとしてその付け方に戸惑う。
(…難しい…)
背中のホックに手が届かず悪戦苦闘していると、後ろからそっとスメラギが止めてくれる。
「あ、すみません…」
「いいのよ、けれど…悔しくなるくらい完璧な体系だわ…」
上半身ブラジャーを着けただけのティエリアの体をまじまじと見ながら、感心したように呟く。
なんだか恥ずかしくて仕方が無い。
「それだけすらりとして、私のブラがぴったりだなんて…」
「ぴったりではありませんよ…少し、大きいです」
ブカブカとまではいかないが、スメラギのブラジャーはティエリアにはほんの少し大きかった。肩紐がずれてしまうから、少し短く調整して貰う。
「これで胸の開いたドレスとか着てくれたら言うことないんだけどなぁ〜」
「…謹んで辞退します」
結局部屋を出る直前まで、スカートを貸してあげるだのドレスを着てみろだの散々言われたが、どれも謹んで辞退することにした。
着てきた自分の寝巻きとカーディガンを再び羽織るけれど、やはり少しだけサイズが大きな寝巻きなので胸の合わせ部分から胸が見える。
ぎゅ、とカーディガンで胸を隠してから、スメラギに礼を言った。
「ありがとうございました、助かりました」
「いいのよ、また色々貸して欲しくなったら来なさい」
色々、という語句を強調して告げられたが、気付かないフリを決め込んでぺこりと頭を下げる。
「初めはみんな戸惑って騒ぐかもしれないけど、堂々としていなさい!それだけ綺麗なんだもの、きっと彼も……」
「…?」
言いかけてやめた言葉に疑問を抱きつつも、ひらひらと手を振る彼女にそれ以上何も聞くことが出来ずに部屋を後にした。
先ほどよりは胸も違和感が無くてなんだかしっくりくる気がする。
やはりスメラギに相談して正解だったなと思いながら、長い廊下を伝って自分の部屋に戻った。
*****
「……うぅ…」
部屋に戻って普段着に着替えるも、やはりシャツの間から豊満な胸が見えてしまう。
「恥ずかしい…」
けれど自分の服を着なければ、スメラギにヒラヒラスカートだのフリフリドレスだのを着せられることになる。
(そうでなくとも彼女の服は胸元の開いたものばかりだし…)
今まではまったくといって気にも留めていなかったが、いざ自分が女になってみたらシャツの間から覗く胸、というのは何だかとても恥かしい。
早くどうにかしないとと思いながら、カーディガンを羽織って前のボタンをしっかりと留めた。
普段着ならまあ上着だけでも誰かの服を借りれば良いが、しかし問題はパイロットスーツ。
部屋の隅に折りたたんで置いてある、確実に合わなくなっているだろうそれを見ながら溜め息を漏らす。
ミッションとなれば男だの女だのと言ってはいられないので、それこそ女物のパイロットスーツを借りるしかないだろう。
「…それも仕方が無い、か…」
こうなったら元に戻るまでは腹をくくって女として生活するしかない。
ティエリアはぎゅっとカーディガンの裾を掴んだ後、意を決して自分の部屋を後にした。