*ガンダム00*
□バスルーム
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目の前に、ロックオンの胸板。
そこにまた増えた傷を見つけて胸がずきんと痛んだ。しっとりと濡れた胸板に…まだ乾ききっていない傷跡に、恐る恐る触れる。
分厚いそれがぴくりと反応した。
「…っすみません。痛かったですか?」
「いや、大丈夫だ。…続けてくれないか」
催促するように、ゆっくり頭を撫でてくれる。時折ロックオンの唇から吐き出される吐息に腰の辺りが疼くのを感じる。
切ないような、泣きたくなるような。どうしようもない感情が渦巻く。
「また、無茶したんですね…」
「あぁ…まぁ大したこたないさ。それに…傷付いたらこうやって癒してくれるんだろ?」
ウインクなんかしながら茶化す様に言ってくる。きっとこれは、心配させまいとするロックオンの優しさ。
「もう、金輪際やりません。…だから…」
だから怪我なんてしないで。
と、続く言葉は上手く舌に乗せることが出来ただろうか。痛々しい傷跡を見て、意図せずじわっと溢れる涙を誤魔化すように俯いた。
すると、顎を優しく掴まれ上を向かされた後、親指の腹で涙をそっと拭われた。
「ん…」
「ティエリア…泣くな…」
あやす様に何度も頬を撫でてくれる。
いつもそうだ。弱さを隠そうとしても、いつも悟られてしまう。そうして優しさで包み込んで、大丈夫だよ、と言ってくれる。
あぁ敵わない、と思った。
こんなにも溺れる自分を、
それでも仕方ないと納得させるくらい。
僕は、彼に溺れている。
昔の僕が見たら呆れるだろうか。いや、きっと……祝福してくれるだろう。何故かそう確信できた。
ロックオンがいてくれて、良かった。
そう放とうとした言葉は、溢れる涙で叶う事はなかったけれど。
「…っん」
見つめ合った後に僕が自ら重ねた唇は、ロックオンの綺麗なそれに重ねることに成功した。
目の前の少し驚いた顔に満足した後、やはりとても恥ずかしかったので
「…あなたが、そんなに近いから」
狭いバスルームだから。目の前にロックオンの唇があったから。
だからキスした、という理由にしておいて。
「ティエリア…」
続いて降りてきたロックオンからの優しいキスに、大人しく溺れてしまうことにした。
*END*
雪様企画、【泡沫-UTAKATA-】
に参加させていただいた小説です。
お題は「バスルーム」
このお題を聞いて、初めに思ったことは『バスルームといえば、狭い浴槽で、後ろからぎゅ、でしょう』でした。
ああ楽しかった…
素敵な企画に参加させていただけたことを光栄に思います。
ありがとうございました!
企画からいらっしゃった方は、こちらからお戻りください(*^_^*)