*涼宮ハルヒ*
□とあるクリスマス前のこと
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「は?おま…何言って…」
真っ赤になった俺の横で、古泉は
「やれやれ…仕方ありませんね」
なんて言いながら困った顔をしている。
おいおいイエスマンも大概にしろよ。そんな恥ずかしいこと出来るわけ…
「ではキョン君…」
「おぃ…古泉嘘だろ?冗談だよな?…こいずっんうっ!!…っふぁ…」
目の前には古泉のドアップ。
視界の隅には満足そうな顔で写真を撮るハルヒ、顔を赤く染めた朝比奈さん、無表情で凝視する長門…。
ああ恥ずかしくて死にそうだ、穴があったら今すぐ入りたかった。
その後しばらく俺の機嫌が悪かったことは言うまでもないだろう。
まあ、カクカクシカジカそういうワケで、俺達は付き合いだしたその日からSOS団公認カップルになったわけだ。
ああ思い出すだけで悶絶するくらい恥ずかしい。
それからは別段何事も無くいたって平和な日常だ、実に喜ばしいことだ。
…でも少し、ほんの少しだけ物足りない気がするのは俺の我侭だろうか。
あれ以来古泉は、何もしてこない。
何もしてこないということは、愛情が無いということとイコールでは無いのだろうか。
ちくりと痛んだ心を誤魔化す様に、少し強めに擦り合わせた手を乱暴にポケットに突っ込んで家路を急ぐ。
ポケットの中には、先ほど悩みに悩んだ末購入したアクセサリーが、大切な人に開けて貰う日を待つかのように静かに存在している。
銀色の包装紙にくるまれた小さな箱の存在は、触れるだけで自然と俺を幸せな気持ちにしてくれる。
喜んでくれるといいな…。