*ガンダム00*

□光へと飛ぶ蝶は【作成中】
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心をくれなくてもいいから
せめて体だけ、頂戴


ああでもあなたは

そのどっちもくれないひと




*光へと飛ぶ蝶は*





「…っく…んぁ…」


仄暗い部屋の中で、快感に慣れきった体が小さく声をあげる。
夜の帳が降りると共にシルクのベッドに体を沈める蝶は、
毎夜違う男の腕の中で眠る。


「あっ、いい…もっと、ください」


客の求める形の愛を上手に作ってそれを売る。
一時の夢を見て、朝には明るい場所へと戻っていく男達。


見送る僕は、どこまでも暗い。


「綺麗だよ、ティエリア」

僕を組み敷いて荒い息を吐きながら綺麗だと呟く客を、どこか他人事のようにぼうっと眺める。

それこそ自分が綺麗だなんて思ったことは一度も無い。
夜ごと男の欲を吐き出され、疲れきって眠りに付く。
夜に起き出して、また客に抱かれる。
そんな日々を、もう何年も繰り返していた。

そんな僕が綺麗な訳が無い。


中には優しい人もいた。
好きだと言ってくれた人も、一緒に逃げようと言ってくれたこともあった。


「愛してるよ、ティエリア」

「あっ…ぁ…ぼくも……いっ、いく…っぁ!!!」



ああごめんなさい。
僕は人を愛したことなんて一度も無い。




「また来るよ」

そう言って夜も明けないうちに去っていく客に、お待ちしていますなんて嘯いて微笑んだ。

つい先程まで裸で抱き合っていた男が、今はきっちりとスーツを着こなしている。
綺麗な世界に、戻る為に。

「…寒い…」

くしゃみを一つしてから、薄着のまま外に出てしまったことを少し後悔した。
早く店に戻らなくてはと思い足早に店に入ろうとするが、ふと道の傍に止まっている車を見つけて眉を顰める。

車自体は別に珍しくも無いけれど、こんな夜遅くに(今の時間ならば朝早く、と言ったほうが正しいかもしれない)しかもこんな夜の街に車で来る人はめったにいない。

皆酒を飲み、酔った気持ち良さにまかせてそのままベッドに入る人が多いから。


(中、誰かいる…寝ている?)


恐る恐る傍に行って確かめる。
これは、単なる好奇心。

運転席の窓ガラスにそろりと手を添えて中を覗くと、運転席のシートを倒して気持ち良さそうに寝ている男がいた。

すらりとした体格に、ふんわりとしたクセのある茶色の髪。整った顔立ちは男らしいという言葉が似合いすぎていて。

誰かを抱いた後に、疲れて寝てしまったのだろうか。どんな人と?

そんなことを考えて、しばらくぼうっとその男の顔を眺めていた。
すると冷たい風が頬を撫で、またくしゃみをしてふるりと小さく震えた。


「…ん…」


そのくしゃみを聞いて、男がゆっくりと目を開く。

まずい、離れなければ、変な人と思われる。
そう頭でぐるぐると考えるけれど、金縛りに合ったみたいに動けない。
髪の色に良く合った綺麗な緑色の瞳がゆっくり開かれる様を、まるで卵から雛が孵るのを見守るみたいに息を飲んで見つめた。


(…きれい)


まだ夢現の瞳がゆっくりこちらを振り向く。

目が合って、少し驚いた顔をした男が、その後ゆるりと微笑んだ。


やっぱり、きれいだと思った。
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