*ガンダム00*

□拙いキスで
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「目を閉じて…いいさ、俺を兄さんだと思えばいい」

出来るだけ優しく囁く。
兄さんがどんな風にこいつ…ティエリアに接していたかは知らないが、なんとなく想像はつくさ。

呆れるくらい、ほんと呆れるくらい優しく触れていたんだろうな。



*拙いキスで*



いつまでも兄さんの面影を追うこいつを、少しだけからかってやろうと思ったんだ。
あの…フェルトとか言ったか、ピンクの髪の女みたいに。

死んだ人は還っては来ないんだと、吐き捨ててやろうと思った。その無表情を崩してやりたかった。


「触るな…あなたは…彼じゃない。」

むっとした表情のティエリア。

「俺は、ロックオンだ…ティエリア」

「…っ!」

名前を呼ばれたことで、ぴくりと反応した体。
もう一歩だ。

そっと頬に触れる。
もう抵抗してこなくなったティエリアに満足感を覚える。
彼の顎に手を添え、ゆっくりと近付く。

優しい振りの偽りのキスを、その綺麗な唇に落とす為に。

ふと、小さな体が震えていることに気付いた。

ティエリアの頬を伝う涙。
目を閉じた彼が、声を殺して泣いていた。


はっとした。
何故だかとても、綺麗だと思った。

「……ロックオン…」

小さく呟くティエリアを見て、意図せずどくりと鳴った心臓に戸惑いを覚える。

目を閉じて、名前を呼んでいる。泣きながら、もういない彼を探し求めている。

うまく温もりを思い出せないのだろうか、震える指先がロックオンの頬を、その存在を確かめるようにそっと触れてくる。

あまりにも健気で、あまりにも切ない。

「…ティエリア…」

兄さんがティエリアにとって一体どれだけ大きな存在だったのか思い知らされる。
兄さんを失ってから4年間、心から笑えたことなんて無いのだろう。

そして、これからもきっと…


ああ兄さん…何故死んだんだ。
こんなにも胸を痛めてくれる存在を置いて。

あなたは罪な人だ。
こいつは…あんたがいないとこんなにも脆い。
震える体で、立っているのが精一杯じゃないか。
それでも誰にも縋ることが出来ずに、ボロボロになりながらも一人で立って、歩いている。

こいつは…あんたじゃないと駄目なんだよ、兄さん。

「ロック…オン…っん…」

震える体をそっと抱きしめて、心からのキスを降ろす。
これはきっと、ニールではなくライルとしてのキスだ。

でも…


「あぁ、ここにいる…傍にいるよ…ティエリア」

それでも出来るだけ、兄さんに似せたキスが出来ていればいいと思う。

こんな汚れた拙いキスで、
ティエリアの傷ついた心が少しでも癒えればいいと願った。




*END*
ティエをからかうつもりが、
ティエの健気さに心を打たれてしまうライルのお話です。
拍手ありがとうございました!(*^_^*)

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