*ガンダム00*

□溺れる人魚姫
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地上に降り、久しぶりに湯船に浸かる。いつも宇宙ではシャワーですませるが、湯に浸かるのは嫌いではない。

とろんと眠くなり、そのまま浴槽に沈む。とぷんと静かに沈んだ後は、ただ闇と静寂。
目を閉じ、宇宙の無重力に少し似たそれを楽しむ。
小さな溜め息は泡となって地上へ上がり、消えていく。
僕の体も泡になってこのまま消えてしまえばいいのに。

そんな話を読んだことがある。泡になって消える、人魚の話。
どう足掻いても、人魚になんてなれない僕だけど。

ふと、水面にゆらゆらと揺れる人影。
水音も立てずに伸びてきた腕によって、そっと水上へ引き上げられる。

まるで生まれたての赤子が、湯から救い上げられる様に。



*溺れる人魚姫*



「…何やってんだ、びっくりするだろ」

溺れたらどうする、と。
僕が溺れないことくらい、知ってるくせに。

「……ロックオン…」

腕を伸ばして彼を抱きしめた。
彼の体温を感じると急に愛しさが込み上げてきて、形の良い唇にキスを落とす。
甘いキスに溺れる。いっそ、二人でひとつの固体であれば良かった。
そうすれば離れていく体温に涙することも、会えない寂しさに震えることも無かった。


…こんな感情を、持て余すことさえ。

「ティエリア…」

「…もっと、呼んで」

「ティエリア」

「もっと…」

「愛してる」

「…っぁ」
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