*ガンダム00*

□バスルーム
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さっきから心臓の音が五月蝿くて仕方が無い。

遠くから聞こえる水音。
ざあ、と流れるその音に反応して、僕の心臓はとくんとくんと鳴り響く。

ロックオンがバスルームにいる。
シャワーを浴びている。

ただ、それだけのことなのに。

キュ、と蛇口を閉める音を聞いて、またひとつ心臓が鳴った。

本当にどうかしている。
バスルームにいる彼を想像して、一人でどきどきするなんて。


*バスルーム*


久しぶりに地上に降り、地上の偵察をした僕達は近くのホテルに泊まっている。
スメラギ・李・ノリエガに、「4人別々の部屋を取ってくれ」と頼んだはずなのに…

いざチェックインすると、刹那・F・セイエイとアレルヤ・ハプティズム、僕とロックオン・ストラトスという部屋割りで、2部屋しか予約されていなかった。
やられた…。
彼女に予約を頼んでおくんじゃなかった…失態だ。


「ロックオン…」

聞こえるはずも無いけれど、そっと名前を呼んでみる。
きゅ、と目をつぶる。かくかくと震える手は、ぐっと握り締めても止んではくれない。

何を緊張しているんだ…僕は。

僕とロックオン・ストラトスが恋人という関係になったのは、つい二週間ほど前のことだ。
それまで僕にとってはヴェーダが全てで…ヴェーダが存在してさえいればそれで良かった。

そんな僕に優しく接してくれた。僕の強さも弱さも全部含めて「大切だ」と言ってくれる彼にどうしようもなく惹かれた。
救われた、と言った方が正しいかもしれない。

でも…

分からない、分からない。
優しくしてくれることが嬉しい、でも、こんな優しさに接することは初めてで。
こんなにくすぐったいような切ないような…言い表しようの無い気持ちになることも、初めてだから。
ロックオンにどう接すれば良いのか分からない。
自分を持て余し過ぎている。


程なくしてバスルームから出てきたロックオン。
その長い髪からぽたりと落ちる雫に見とれる。
無駄の無い筋肉とスラっとした長身が、とても綺麗で。
恥ずかしくて見ていられなくなり、逃げるようにバスルームに入った。

「はぁ…」

風呂に浸かるのは久しぶりだ。
ゆったりと身を沈めた後、ふうと溜息を吐いた。
先ほどまでぐるぐるしていた心が少し落ち着く。

なのに

「ティエリア〜そこに俺の腕時計無いかぁ?」

「ロック!!…っ」

気を抜いていた分、甲高い声が出てしまった。
慌てて肩までお湯に浸かる。
ばしゃっという音と共に、大げさなくらい湯が跳ねる。

湯の熱さと突然入ってきたその存在とで、真っ赤になる自分を覚える。

「…っと…すまねぇ」

恥ずかしがるティエリアに、罰が悪そうに頭をかく。
すまないという割には、いつまでも出て行こうとしないロックオンに焦れる。

「あ、あの…」

「うん?」

「出て行って…くれません?あなたの時計なら、ここには無いから」

「あ…あぁ、すまない」

すまないすまない、といいながらも、立ち尽くすロックオン。
まじまじとティエリアを見たあと、ぼそりと呟いた。

「…だな」

「え?」

「…綺麗だ」

どこか驚いた様な表情のロックオンと目が合う。視線を逸らした後、少し真剣な表情になった彼が

「ティエリア」

小さく僕の名前を呼び、バスローブを脱ぎ捨てた後バスルームの照明を小さく絞った。

薄暗くなった中を近付いてくる彼にひどく焦燥するも、抗う間も無く手首を掴まれる。

「あ、あの…ロック…っ!?…んっ…」

浴槽の縁に手を沿えたロックオンから、激しいキスが降りてきた。
しっとりとした唇の感触を楽しむかのように、何度も唇を重ねてくる。
鎖骨をつっ、と撫でられて、ぴくんと反応してしまう。

「んっ…ぁ…」

狭い浴槽に入りこんできた彼が、後ろからぐっと抱きしめてきた。その腕の力強さに、くらくらと眩暈がする。
僕の心臓はというと、とうとう破れてしまうのかと思うくらい高鳴っている。
そっと肩を掴まれ、向かい合わせの形になると、また降りてくるキス。
温かい湯の中なのに、僕の体はかくかくと震えていて。恥ずかしさに、ぎゅっと目を瞑る事しか出来ない。

それに気付いたロックオンが、僕の緊張を解すように背中をゆっくりと撫でてくれる。

「恐がらせて悪かった…もう何もしないから、な?」

しばらくゆっくりと抱きしめてくれた後、ふわりと笑う笑顔に緊張が少し解けるのを感じた。
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