*ガンダム00*

□絡まる指を解くのは
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「ティエリア、水だよ…立てるかい?」


程なくして戻ってきたアレルヤの手には、飲み物の入ったボトルが握られていた。
その小さな入れ物と、アレルヤの綺麗な指先を一瞥してからまたゆっくりと目を閉じる。
もう起き上がりたくは無いと口にする代わりに微かに首を振って問いに答える。


するとアレルヤがベッドに近付き、ゆっくりとその端に腰掛けた。


「…飲ませて欲しい?」


からかうでもなく、呆れているのでもない。
只気遣うだけのその声に、訳も無く目の奥が熱くなるのを感じた。

小さく目を開けて視線を合す。


「アレルヤ…」

疲れているとき、僕はしてしまうことがある。



「飲ませて」


それは、この熱い掌が自分を甘やかすのを、黙って受け入れること。





「…んっ…ぁ…」


アレルヤの唇越しに冷たい水が流れ込んで口内を優しく潤す。続いて入ってきた熱い舌を抗うことなく受け入れた。



「ん…っ…ふぁ…あれ、るや…」



こくんと飲み込んだ水はとうに体内へと流れたのに、それでも止まない口付けに頭がクラクラして溶けてしまいそう。


「…ティエリア」


呼ばれてきゅうと心臓が疼いた。目を開けると、悲しそうな瞳と目が合って困惑する。


悲しくて、寂しい。
そんな顔だった。


「な、んで…っぁ」


どうしてそんなに悲しそうなのかと問う前に、首筋にキスをされて声が出る。
ティエリアを組み敷いてパイロットスーツを脱ぐアレルヤ。その体には、無数の傷が付いていて痛々しい。

ぐっと眉を顰めたティエリアに気付いたアレルヤが、やっぱり泣き笑いみたいな顔をして呟いた。


「ねえ、何も考えられなくしてあげるから…そんなに悲しい顔をしないで」


「っ…悲しい顔をしているのは、あなただ」


微かに触れるだけの愛撫はもどかしくてくすぐったい。お互いがお互いのパイロットスーツを脱がせながら肌に触れる。
触れた指先から悲しみが流れ込んでくるようで胸が締め付けられる。


「…っ…や…」


まるでここにいることを、確かめ合うみたいな愛撫。気持ち良さよりももっと深い、心の奥を埋めあうような交わり。

馬鹿げているのかもしれない。
寂しいだけかもしれない。

でも、それでも触れ合っていたいのはきっと…


「結局そうやって君はいつも…平気な顔をしながら心を痛めるんだね」


「っ…あれ、るや…」


「だから僕はせめて、君がゆっくり眠ることが出来るように」


「っぁ!!」



「優しく激しく、抱いてあげる」



そんなことを言いながら微笑むこの体がどうしようもなく愛おしい。
結局はきっと、僕達は似たもの同士なのだと思う。優しく入ってくる彼に泣きそうになりながら、全身で彼を感じて腰が震える。


「んっ…ん…ぁ…」


小さく漏れる声に気を良くしたのか、アレルヤが小さく笑った。

くっ、と少し眉を顰める仕草が色っぽくて、色の違う両の目がとても綺麗。


優しく絡まる指をそっと解いて見つめる。
解いたのは自分なのに、もう寂しく思えるのだから困る。



空になった両の手が待つのは、安心と言う名のぬくもり。


「あれ、るや…」


絡まる指を解くのは


「好きだよ、ティエリア」



また、絡めてほしいから。



*END*
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