*ガンダム00*
□カーディガンと指先
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ティエリアを追ってコックピットに向かったロックオンは、想像した通りの光景が繰り広げられているのを見て小さくため息を吐いた。
「ティエリア、ほんと綺麗ね〜!」
「体は大丈夫か?無理すんなよ」
クルーの皆がティエリアを囲んでわいわいと話している。その中心でティエリアが、少し困ったような顔で皆に応対していた。
「こらこら、みんなそんなに詰め寄っちゃティエリアが困っちゃうじゃないの」
ミススメラギにそう言われてハッとするクルー達。ふと、その片隅にいたアレルヤに目をやる。するとほんのりと顔を赤く染めながら戸惑った様子で…それでもじっとティエリアを見ているから。
(おいおい…アレルヤ何赤くなってんだ…)
何故だか分からない焦りが込み上げて戸惑う。アレルヤがこちらの視線に気づいた様子で、目が合ってさらに顔を赤くした。
(まさか…ティエリア♀に惚れたとか言うなよ…)
キッと、意図せず睨んでしまうけれど仕方が無いだろう。
ロックオンとアレルヤの間には、何とも言い難い負のオーラが立ち込めていた。
「い、異常が無いのであれば…僕は部屋に戻ります」
みなの視線に耐えかねたのか、そう言って罰が悪そうにコックピットを後にするティエリアを慌てて追う。
「ティエリア!」
やはりしんどいのだろう、おぼつかない足取りで部屋に向かうティエリアに胸が痛くなる。
「……ロックオン…っ!!」
呼び止められた声に気付き振り返ろうとしたティエリアが、ロックオンより数歩先…ティエリアの足元を転がっていたハロを蹴飛ばしてしまってよろめく。
「危ない!」
「…っ!!」
とっさにティエリアの体を支えて抱き止めるけれど、その体のあまりの細さに驚く。
(…こいつ、こんなに細かったっけ…)
折れそうなくらい細くて、けれども柔らかくて。日に焼けないその体は真っ白で綺麗澄で、少しだけ長くなった紫色の髪からはふわりとシャンプーの香りがした。
目眩がしそう。
「だ…大丈夫か?」
うろたえてしまって少し声が擦れる。大丈夫です、と答えるティエリアは、けれども小さく震えていた。
「ご、ごめんなさい…ありがとう」
顔を上げずにそう言って、きゅ、とロックオンの服を掴む動作に心臓が鳴った。
大丈夫なんて言いながら、きっと本当はひどく不安なのだろう。あれこれと色々なことを考え過ぎた頭はすでに疲れ果てているはずだ。
「ティエリア…」
ティエリアの柔らかいカーディガン越しに、同じくらい柔らかいであろう肩をそろりと撫でる。
「…っ…」
するとぴくんと反応する体はさらに震えだすから、もう堪らずぎゅうと抱きしめた。
いつも体温が低いその体は、やはり熱くなっていた。布越しに響くティエリアの心音はとても早くて、思わずつられそうになる。
「ろ、ロック…」
「黙って」
「…っん…」
広い廊下の隅、潤んだ瞳で見上げてくるティエリアに、引き寄せられるみたいにそっと口付けた。
「…っ…は、…ぁっ」
細められた大きな瞳からは今にも涙が零れ落ちそう。はふ、と熱い吐息を漏らす仕草までどうしようもなく胸を熱くさせる。
指先を絡め言葉も交わさないまま、角度を変えて何度も何度もキスをした。