短編2[BL]

□Who do you I like?
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「美味しいぞ」

「…普通だろ」

「そんなことないぞ。毎日でも食べたいなぁ」

「…お前、女の子にも…今みたいに同じことを言うのか?」

「風間くん?」

しんのすけの眼差しを浴びながらも僕はそんなことを考えつつ、キツネ色のトーストに低カロリーのバターを塗った。

朝から何を言っているのか。慌てて訂正しょうとした僕にしんのすけの携帯が無情にもふたりだけの空間に鳴り響いた。

しんのすけは一瞬、出るのを迷っていたが着信が途切れることはなかったので観念したように椅子から立ち上がる。


「しんちゃん?ごめんね、こんなに朝早くから」

「…どしたの?ななこおねいさん。また旦那さんと喧嘩でもしたの?」

電話越しに聞こえてきた女性の甘い声には聴き覚えがあった。

忘れたくても離れない、その声の主は…しんのすけが今も大切にしている初恋の人で。5年前しんのすけを傷つけた人だ。

(…いや、傷つけたと言っても彼女にそんな自覚はないのかもしれない)

でなければ人妻になった後もこうして、わざわざしんのすけに連絡をとったりするだろうか。

5年前。ななこさんの花嫁姿に、しんのすけは泣くことはしなかった。ただ黙って微笑む彼女を見つめていたのを今も鮮明に覚えている。

結婚式当日には花嫁を連れ去って逃げてしまうのではないかと、僕もネネちゃん達もそんな不安を感じていた程だ。

(…けれど。でも、そうしなかったのは誰よりも彼女を愛していたからしんのすけにはその幸せを壊す勇気も奪うこともできなかったんだろう)


「ううん、違うの。昨日、お菓子を作りすぎてね。しんちゃん食べないかなって思って」

「ななこさんの手作りなら嬉しいぞ。今日の夕方、家にお邪魔しても大丈夫なの?」

「…うん。沢山、用意して待ってるわね」

それから数分。電話が終わっても、どこか気まずい空気が流れた。

しんのすけは再び「いただきます」と、お決まりの挨拶をして目の前の朝食に手をつける。

僕は何も言葉にしなかったけれど黙って齧ったトーストは、なんだか少しだけ苦い味がした。


「今日、お前…ななこさんの家に行くのか?」

「うん。そうだ、風間君も一緒にどう?」

「…いい。今更、ななこさんに会ってどうするつもりなんだよ」

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