短編2[BL]
□hand in hand
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別に、しんのすけの顔が好みと言うわけではない。タイプで言うなら絶対的に(もえP似の)可愛い女の子の方が好みなのだ。
しんのすけだって僕なんかよりも年上で綺麗な(ななこさん似の)お姉さんが理想だろうに。どうして互いに不毛な道を選んでしまったのか。
「いつも、上手に愛してあげられなくて…ごめんね。風間君」
「止せよ。謝るな、よ…お前が謝ったら…僕が謝れなくなるだろ」
「…ごめんね。風間君、悪役になれなくて」
「っやめろ。僕は…お前にそんな顔をさせたいわけじゃ…ないんだ」
僕の言葉に、しんのすけは困ったような表情を浮かべ、けれど離れてしまった距離を詰めようともしなかった。
しんのすけは、いつも浮かべる飄々としたどこかいい加減な表情を消して僕の顔を見つめている
本当は呼吸よりもはやくキスがしたくて呼吸よりもはやく言葉にしたい。愛してるじゃ足りないし好きじゃ役不足。
自分よりも、他人であるしんのすけを想うことは何て自殺行為的なんだろうか。これは恋の中の死によく似ている。
「俺はね、風間君と一緒にいられれば…どんな形でもいいんだぞ」
「そんなこと…分かってる。お前だけがそんな気持ちだって思うなよ」
「じゃ、風間君は俺と手を繋いで外を堂々と歩けるの?無理でしょ」
「そんなこと…最初から決めつけるなよ。今日は…驚いた…だけで」
「…今日が駄目なら明日も無理だぞ。風間君」
「しんのすけ?」
お前は静かに怒るようなタイプではないから…だから、いつもと様子の違うその無表情に少しだけ驚いたのだ。
恐る恐る名前を呼ぶと短い返事だけが返ってくる。こんな僕に愛想が尽きたのだろうか、それとも呆れているのか。
必死になって作った笑みが唇の端で震える。鏡がなくても今、自分の姿がどれだけ間抜けなのか想像くらいはできていた。
(僕みたいな我儘でプライドばかり高い男に飽きてしまったのか?僕だってお前みたいな女好きで誰にでも優しいばかりの八方美人には飽きている)
だけど、好きなのだ。愛されたいと願うよりも、もっと愛してしまう。もしも恋が一瞬で終わるなら僕の恋の終着地点は此処ではない。
「…僕は、もうお前と…ただの友達に戻るつもりはないからな」
「風間君?」
「僕は…お前に嫌われても僕の方法でお前と僕との関係を護っていく」
「…みんなに秘密にするの?そんなこと…ずっとは無理なんだぞ」
「それでも、今…お前を手放すよりは…いい」
お前は、この関係を公言しても構わないと思うのかもしれない。
けれど僕は、しんのすけを傷つけても僕が傷ついても…それでも今を継続させたい。
この恋が終わる、一瞬までも(できれば)傍にいたいと思うからだ。
end.