短編2[BL]
□郷剛太郎
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「…複雑かな。しんのすけ君に好かれている、アクション仮面に嫉妬するくらいには」
「アクション仮面も郷さんでしょ?嫉妬なんて無意味だぞ」
時間になったのか、リモコンを片手に再び戻ってきた、しんのすけ君は少年らしく瞳を輝かせ私の隣に座った。
どうやら、ここが定位置らしい。テレビ画面には、アクション仮面が正義のヒーローらしく悪い敵と戦っている最中だ。
(あの画面の向こうの英雄は本当に私だろうか)
「…しんのすけ君」
「ほいほい?」
「今、キミの目の前にいるのは…誰だい?」
「どしたの?いつもの郷さんと違うぞ」
「いつも?…しんのすけ君の言う、いつもの私は…誰のことなんだ」
しんのすけ君は私が好きなのか、それともアクション仮面である私が好きなのか。テレビ画面にはキミの好きな英雄で今も、いっぱいだ。
自問自答で答えはでない。当たり前か。こんなこと本人にしか分からないだろうに。いや、きっと訊いたとして、その答えに満足なんてしない。
「郷さ…ん?」
「…違うよ。しんのすけ君、愛してるって…言えばいいんだ」
「な、に…っあ。いた…い、郷…っ郷さん!」
後ろから覆い被さるようにしてキミの太陽に焼けたような健康的な背中を噛んだり舐めたりしながら喉から笑い声がでた
こんな子供に、こんなことをして喜ぶ男のどこがヒーローなのか。英雄なのか。正義のアクション仮面なのか。
しんのすけ君はソファにつよく顔を押し付けたまま首を横に振った。テレビの向こうからは英雄の笑い声がする。
「郷さんが…アクション、仮面だぞ?」
「…しんのすけ君」
(キミに愛されたい…でも、その愛は私だけで独占したい。アクション仮面である私ではなく、今の私が所有したい)
だからこそ、もっと愛されたい。…もっと、キミに嫌われたい。
英雄が愛を見失前に
end.