企画べや!

□マサしん
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マサしん



昔から階段を上っていると、どうしてもその数を数えてしまうボクの癖。

けれど、しんちゃんは飛ぶようにしてボクをいつも追い越していくのだ

You are always in my thoughts.



「マサオ君って好きな人とかいるの?」

「…いきなりだね。しんちゃんは」

誰もいなくなった放課後の教室にグラウンドから聞こえる野球部の声。

ボクは自販機で買ったコーラをふたつ持って、しんちゃんの教室に訪れた。すると、いきなりこの質問だ。


「…マサオ君って恋愛関係の話題、いつも避けてるでしょ」

「そんなこと………あるね。でも、しんちゃんには秘密だよ」

「ほほう。そう言われると気になりますなぁ。どんな女の子なの?」

「だから秘密だって…聞いてないね。人の話し」

何十年もこっちは頑張って必死に抑えこんでいるというのに。しんちゃんは呆れるほど鈍感で悲しいほどに残酷だ。

マイペースで無神経。人の話を聞いているんだか、いないんだかわからない強引なところは、たまにイラつく。

(…恋愛の話題を避けていると言うよりは、しんちゃんとだけはそんな会話できないってだけの話しなんだけど)

教えてよ、なんて陽気に笑うしんのすけを見てマサオはグッと拳を固く握り締めた。


「…どうして、気になるの?しんちゃんには関係ないよね」

「マサオ君がどんな人を好きになるのか俺としては気になるんだぞ」

「昔は興味がなかったくせに。しんちゃんには言うつもりないよ」

「マサオ君、珍しく怒ってる?」

「そんなことないよ。しんちゃんにだけは敵わないって知ってるでしょ」

言えば彼はボクの中では永遠のヒーローと呼ぶべき存在である。

昔のボクは優しく素直な性格で気が弱く泣き虫な上に極度の怖がりだったから、しんちゃんに助けてもらうことばかりだったけど。

しかし時々、ふっとしたきっかけで気弱な性格が一転して変貌したり口調が変わることがあったのを今も覚えている。


多分その頃の名残なのだろう。たまに暴走しそうな感情をこうして抱いてしまうのは。

(けど…しんちゃんにだけは手をあげない。しんちゃんにだけは優しくするって決めたのに。恋愛の話題だけは駄目だ)

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