企画べや!
□マサしん
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「隣のクラスの女の子がね、マサオ君のこと好きなんだって」
「…そうなんだ」
「その女の子ね何日か前に他校の子に絡まれて大変だったって」
「しんちゃんも気をつけてね。目立つんだから」
「その女の子、助けたのマサオ君でしょ?言ってたぞ…かっこいいって。良かったね」
「覚えてないよ」
「…そう言う噂とかいろいろ聞くとさ、昔のマサオ君がちょっとだけ懐かしくなるぞ」
(それは、しんちゃんの後ろに隠れて怯えていたボクのこと?)
確かに今は、しんちゃんよりも喧嘩は強いし気弱って言葉も似合わなくなったけど。でも強くなったのは誰でもない。
「…しんちゃんの為にボクは強くなったんだよ」
「そんなこと言われたら…照れますなぁ。俺を口説こうなんて!」
「茶化さないでよ」
もし人生を階段で例えたならば、ボクは一段一段、数を数えながら上っていくような人間だ。
(けれど君は違う。しんちゃんは何段も一気に飛び越えてしまうだろうし、そんなことが許される存在で。だからこそ)
「ボクはもう、しんちゃんの背中を見ているだけは嫌なんだ」
「…マサオ君?」
「対等でいたいし頼られたい…そろそろ帰ろうか。しんちゃん」
「帰る前にひとつ確認するけど俺の誕生日、今年も一緒に過ごすつもりなの?マサオ君」
「…そうだね。ボクはそのつもりだったけど」
飲み残したコーラを机の上に置き、教科書の入っていない軽い鞄を肩にかけた。
それにつられるように、しんちゃんは重たい瞼をゆっくりとあげる。
「マサオ君の好きな子って誰?プレゼントの代わりに教えて欲しいぞ」
「…そんなの成立しないでしょ。それに、しんちゃんの誕生日は今日じゃないよ」
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