企画べや!

□マサしん
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「当日になっても結局、教えてくれないでしょ?だったら今がいい」

「…我儘だね。どうしてしんちゃんは、ボクの気持ちを考えないの?」

「だったら、マサオ君は俺の気持ち少しでも考えたことあるの?」

ボクはちょっと鼻白んで、しんちゃんを睨んだ。しんちゃんのマイペースで強引なところが時々、嫌になる。

ボクがしんちゃんを好きだと自覚してから数年。言えば笑って許してくれるのは分かっていたが、それでも死ぬまで隠し通すつもりでいたのだ。

(ボクが君を好きだと言って一番、困るのはしんちゃんなのに。どうしてそれを言わせようとするのだろうか。悪魔だ)


「マサオ君が何も言わないならそれでもいいぞ」

「しんちゃん?」

「だけど今年の誕生日は…マサオ君とは一緒にいたくない」

「…誰と過ごすの?」

「俺のことを好きだって言ってくれる人なら…誰でもいいぞ」


しんのすけの言葉に驚いてマサオは閉じていた両目を開けてしまった。

見上げた先には夕日が陰ったせいでよく見えない、しんちゃんの顔。きっとボクの顔もぼやけて見えるのかもしれない。

(まるで夢の世界だ。悪夢だ。白昼夢でもなければ現実だけれど)


「…誰でもとか、言わないでよ。しんちゃん」

「だったらマサオ君の好きな人は…誰なの」

しんちゃんが、ボクよりも小さな手のひらでボクの両手を包み込みながら、そう尋ねた。

皮膚の上に触れたしんちゃんの体温は、泣いてしまうくらい温かい。


「マイペースで、強引で身勝手で…でもさ。好きなんだよ。しんちゃんが…好きなんだ」

「…知ってるぞ」

「知っててこんなことするなんて…やっぱり酷いよ。しんちゃん」

「でも好きでしょ?俺も、マサオ君のそんなところが…好きなんだぞ」

「…しんちゃん」

鞄を持って教室から出ようとしたところでマサオが背後から声を掛ける。

夕日も落ちた室内は少しだけ暗くて、しんのすけの表情は見えないけれど。それでいい。


「好きだよ。しんちゃん…なにか食べて帰る?」

「マサオ君の奢りで牛丼!…俺も大好きだぞ」

「…っうん」

壁に掛かった時計が、ゆっくりと時を刻み。あと数日もすれば君の誕生日。愛しい、君の。

そうして、ボクはしんちゃんの生まれた日に感謝するのだ。


「誕生日おめでとう、しんちゃん。大好きだよ」


end.
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