とある魔術/他短編
□瀬々+皆見
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ボクラノキセキ
瀬々稜+皆見晴澄
「やっぱ、皆見って王女なんだなーって思う」
「瀬々…?」
「やー俺、自身が誰なのかは…まだよくわかんねーけどさ」
それでも衝動的に見開いた俺の目は、皆見のことばかりを考えている。
優しさに限度があるならば、それが罪だとしてもその最大で俺は愛してやりたいと思ったんだ。
(前世の俺が、どうだったか知らないけどさ。でも皆見はベロニカだ)
「…皆見、これさぁ。いらねーなら捨ててくれたらいいんだけどさ」
「クローバー?もしかして、瀬々。これ俺に?」
「幸せを運ぶって意味があるしさぁ、そーゆーのもいいかなぁーって」
花一つ、あどけない笑顔で喜ぶ皆見は俺が知っている教科書の中の偉人達よりも一番、美しい人間だと思った。
「俺が誰なのか、まァ…わかんないけど」
「瀬々?」
「けどさ俺。皆見だけは…王女だけは裏切ってないといいなーって思う」
欲を言えば、俺の前世がグレンだったらさぁ。
もし、そうならば高尾には悪いけどさ皆見を奪って逃げるくらいの権利くらいは俺にもあるだろうし…なんて、なァ。
(…いや俺が、グレンなわけがないか)
「瀬々、夕日だ」
「皆見って空とか…光るのが好きなの?」
「うん。きれいな色はホっとする」
机に顔を乗せ微笑んだ皆見は、ずいぶんとかわいらしいことを言う。
(…王女、だけど今、俺の目の前でこうして笑っているのは誰でもなく、皆見だ。でも、やっぱり皆見は、どう足掻いたって…ベロニカだ)
「帰ろう、瀬々」
「ん―…了解、ベロニカちゃん」
俺は、誰でもない。誰でもないのに、王女を想い続ける時間だけが止まらない。
end.