短編2[BL]

□時川ショウ
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「オレ、もう誰とも喧嘩しねぇ。お前との勝負が楽しかったから」

「……ショウくん?」

「やっと思い出したか。まぁ忘れても仕方ねぇけど…久しぶりだな。しんのすけ」

ショウが地面を見つめながら呟くと、しんのすけはまだ信じられない顔をしている。

最後に会ったのが互いに5歳の頃だ。あれから11年は経過しているだろう、そりゃあ驚いて当然かもしれない。

「おい、オレと勝負だ。どっちがケンカ強いか…って覚えてるか。お前」

「覚えてるぞ」

「お前、強いとか弱いとかどうでもいいって、あんなこと言われたの初めてだった」


転勤の多い父親に子供だったオレは友達も作れない毎日だった。気がついたときには、喧嘩ばかり繰り返し。

(そんなときオレを笑わせてくれたのが、お前だったんだぜ。しんのすけ)


「先公のつけ睫毛をとってくる勝負もしたよな」

「おお!まつざか先生ですなぁ。結局、引き分けだったけどね」

「…おう。やっぱり、お前以外との勝負は退屈だったぜ」

「俺もショウ君が傍にいなくて寂しかったぞ」


再会して数分。こんな殺し文句みたいな台詞を耳にするとは思わなかった

あまりに直球すぎてしんのすけの性格を考えれば本気なんだろうが、いや。やはり冗談のようにも聞こえる。



「おお、そうだ。時間あるなら久しぶりに幼稚園行ってみる?」

「オレはいいけど。お前、学校に行く途中なんじゃねぇのか」

「いいのいいの。どうせ遅刻だし…まぁ、ネネちゃんが明日、怖いけど」

遅刻や無意味なサボりをしたときのネネちゃんは機嫌が悪くなるんだぞって、そりゃあ愛されてる証拠じゃねぇのか。

ショウは聞くべきか、そのまま知らなかったフリをするべきか悩み。結局は誤魔化したつもりが確信に触れていた。


「…そいつと付き合ってるのか、お前」

「ネネちゃん?はは、違うぞ。可愛い可愛い俺の幼馴染だぞ」

「幼馴染、か」

オレの周りは嘘吐きな大人や嘘で塗り固めたような友情が多かったが、しんのすけだけはソレを隠そうとはしない。

こいつだけは多分。今も昔も真実しか口にしないような気がした。

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